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音響テクノロジーシリーズ 27

物理と心理から見る音楽の音響

編:日本音響学会
編著:大田 健紘
他著:若槻 尚斗

紙版

内容紹介

【読者対象】
・楽器製作者
・楽器の設計・評価に携わる技術者
・楽器の音響の研究者および学習者
・音楽の演奏の研究者および学習者
・音楽情報の研究者および学習者

【書籍の特徴】
本書は以下の6章で構成されており、各章において基礎的な内容から具体的な応用事例までを紹介しています。
第1章では弦、棒、気柱、膜そして板の振動といった楽器の発音に関わる物理現象について数式を用いて記述しています。応用事例として、数値計算手法によりシミュレーションを行った例を紹介しています。さらには、振動現象をさまざまなセンサにより計測した研究事例を紹介しています。
第2章では楽器から発生する音の物理的側面の理解に必要な演奏音の周波数分析法を説明しています。さらには、音を特徴づける物理量である音圧レベルや基本周波数の計測について説明しています。応用事例として、演奏音からヴィブラートを測定する事例について紹介しています。
第3章では演奏音から受ける心理的側面の解明に必要となる音の代表的な物理量と心理量との対応関係について説明しています。応用事例として演奏音とその熟達度に関する研究を紹介しています。
第4章では音楽の構造的側面の理解に必要となる和声理論の基礎について説明しています。応用事例として、音響学をはじめ音楽知覚認知や脳科学にいたる幅広い分野の研究を紹介しています。
第5章では演奏者の超絶技巧とも呼べる卓越した技術を研究する手法について説明しています。応用事例として、音響学と情報学を軸に広く音楽を調査研究する手法および応用システムについて紹介しています。
第6章ではこれまで音響学をはじめとする科学技術が音楽に果した役割について録音技術やホール音響、空間音響再生技術などを中心に概観し、今後の音楽音響学の課題について考察しています。

【著者からのメッセージ】
音楽の研究と聞くとみなさんは何を想像するでしょうか?音楽歴史に関する研究でしょうか?それとも、楽譜に並ぶ音符の構造に関する研究、様々な楽器の発音原理を解明する研究、楽器音の合成に関する研究もしくはホールにおける音楽の響きに関する研究でしょうか?音響や楽器、演奏音など、音楽に関係する研究は非常に多岐にわたり、これらの研究に関係する学問分野も音楽学、音響学、心理学、情報工学、脳科学など多岐にわたっています。そのため、同じように音楽の研究をしているにもかかわらず専門とする分野が違うことでお互いに話がすれ違うこともあります。また、音楽の研究を始めようとする初学者にとっては、何から手をつければよいのかわからず研究を始める一歩を踏み出せないこともあるかと思います。本書では多岐にわたる学問分野について、基礎理論とその応用例を横断的に解説することで、既に専門分野を一つ確立されている方が自分の専門分野以外の分野について概観できることや、これから音楽の研究を始めようという大学生が専門とする分野を見つけられることを期待して執筆しています。

目次

1. 楽器の物理
1.1 楽器の発音機構
 1.1.1 楽器の分類
 1.1.2 1自由度の質点の振動
 1.1.3 連成振動系
 1.1.4 弦の振動
 1.1.5 棒の振動
 1.1.6 気柱の振動
 1.1.7 膜の振動
 1.1.8 板の振動
1.2 楽器の計測
 1.2.1 レーザ干渉法による面振動の計測
 1.2.2 振動面近傍の音圧分布による面振動の可視化
 1.2.3 近距離場音響ホログラフィ法による面振動の計測
 1.2.4 弦振動の計測
 1.2.5 人工吹鳴装置を用いる気鳴楽器の計測
引用・参考文献
2. 演奏音の物理
2.1 音の基礎
2.2 演奏音の周波数分析
 2.2.1 離散フーリエ変換
 2.2.2 短時間フーリエ変換による演奏音の分析
 2.2.3 定Q変換による演奏音の分析
2.3 音圧レベルの測定
 2.3.1 音圧レベルとは
 2.3.2 サウンドレベルメータ(騒音計)による音圧レベルの測定
 2.3.3 サウンドレベルメータの校正
2.4 基本周波数の推定
 2.4.1 時間領域での推定
 2.4.2 周波数領域での推定
 2.4.3 基本周波数の推定精度
2.5 解析信号による音楽音響信号の分析
2.6 ヴィブラートの測定
 2.6.1 ヴィブラートのパラメータ
 2.6.2 各倍音のヴィブラート測定
引用・参考文献
3. 演奏に関わる心理
3.1 心理音響の基礎
 3.1.1 音の大きさに関する心理量:ラウドネス
 3.1.2 音の鋭さに関する心理量:シャープネス
 3.1.3 音の変動の大きさに関する心理量:変動強度
 3.1.4 音の粗さに関する心理量:ラフネス
3.2 心理音響の楽器演奏評価への適用
 3.2.1 楽器演奏における特徴と熟達度の関係
 3.2.2 変動強度を用いた応用研究
引用・参考文献
4. 音楽理論の仕組み
4.1 和声理論の基礎
 4.1.1 音名,音度,階名
 4.1.2 音程
 4.1.3 音階
 4.1.4 調
 4.1.5 和音とそれぞれの和声的機能
 4.1.6 和音の機能的連結
 4.1.7 終止形(ドミナント・モーション)による調性の確立
 4.1.8 テンションおよびテンション・ヴォイシング
 4.1.9 属七和音におけるテンション
 4.1.10 古典とポピュラーにおけるテンションの違い
4.2 和音の感覚的協和・不協和
 4.2.1 二つの純音に対する感覚的協和・不協和
 4.2.2 高調波成分の干渉を考慮した感覚的協和・不協和
 4.2.3 任意の複合音に対する感覚的協和度の定量化
 4.2.4 和音に対する高次な印象に対する協和・不協和
 4.2.5 和音に対する心理的印象空間の調査と物理量との関係
4.3 聴取実験に基づく音楽理論の妥当性
4.4 生理調査に基づく音楽理論の妥当性
引用・参考文献
5. 演奏科学と音楽音響情報学
5.1 MIDI
 5.1.1 MIDIのおもな特徴
 5.1.2 MIDIのデータベース
 5.1.3 MIDIの問題点
5.2 演奏科学
5.3 音響信号から取得する音響パラメータ
 5.3.1 心理音響指標
 5.3.2 音楽情報処理におけるパラメータ
5.4 音楽情報処理応用システムの例
 5.4.1 単旋律譜に対するタブ譜面自動生成システムS2T
 5.4.2 ギターコード演奏における最適押弦位置決定システムYG
 5.4.3 年代推定システム
 5.4.4 サビメドレーシステム
引用・参考文献
6. 音楽音響学から芸術へ
6.1 音楽音響学と芸術の接点
6.2 先端芸術に用いられる技術
 6.2.1 録音技術の誕生と音楽制作に果たした役割
 6.2.2 ディジタル技術が果たした役割
 6.2.3 音楽と空間
 6.2.4 立体音響とステレオ収音技術
 6.2.5 立体音響と音楽
6.3 音楽音響の研究とこれからの課題
 6.3.1 音響学における音楽の研究
 6.3.2 音場再現と音楽のアーカイブ
 6.3.3 深層学習と人工知能
 6.3.4 音楽における音響学が果たす役割
引用・参考文献
索引

ISBN:9784339011661
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:190ページ
定価:3100円(本体)
発行年月日:2024年01月
発売日:2024年01月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AVA