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電気機器学の基礎理論

著:藤本 康孝
著:赤津 観

紙版

内容紹介

多くの電気機器はパワーエレクトロニクス技術を用い,電圧や電流を制御することで駆動される。本書ではその制御に用いられるモデルの導出を行うことを一つの目標に,機器の特性を理解する上で有用な等価回路による説明も掲載した。

◆「電気機器学」をこれから学ぶ方へ◆
電気機器学は,電磁気学から派生した実用学問の一つで,電気エネルギーの発生から利用まで,発電機や変圧器、モータなどの機器として広く利用されています。初学者にとって電磁気は目に見えないため直感的に理解がしづらいですが,モータや発電機で利用される,鉄心,空気ギャップ,巻線などから構成される磁気回路や,磁束,起磁力といった概念は比較的理解が容易です。基礎となる電磁気学の基礎法則から出発して,各種機器の原理を丁寧に説明し,初学者でも電気機器学の基礎理論が学べるように構成しました。

◆「電気機器学」の教科書をご検討中の方へ◆
本書は,カリキュラムにおいて「電気機器学」が半期の授業として組まれている場合を想定して構成されています。磁気回路から出発して,電気-機械エネルギー変換の基礎を説明し,その後,回転機の共通モデルを用いて,直流機,同期機,誘導機等を体系立てて説明しています。学習者が躓くことのないよう,なるべく丁寧にモデルを展開しています。また,パワーエレクトロニクスで制御することを前提としたモデルまで演繹的に導出しています。

◆本教科書の特徴◆
「電気機器学」の既存教科書の多くは,各種電気機器の動作原理や構造,諸得性の説明に終始しています。そこで本書では視点を変え,電気機器を現代的な側面から体系立ててまとめることとしました。ポイントとしてつぎの点を意識しました。

・現代の多くの電気機器はパワーエレクトロニクスの技術を用いて電圧や電流を制御することで駆動されています。本書では,この制御に用いられるモデルの導出を行うことを目標の一つとしました。
・はじめに基本的な回転機の理論的モデルを導出し,これを積み上げて段階的に各種モータや発電機の原理を学べる構成としました。
・種々の機器の特性を理解するうえで有用な等価回路による説明を行いました。

◆書籍構成・流れ◆
①「電気機器の歴史」を振り返った後,基本となる「電磁気学」と「磁気回路」について学ぶ。
②磁気回路の応用機器の一つである「変圧器」の特性について,等価回路を用いて学ぶ。
③固定部と回転部から構成される電気機器の「回転機」を学ぶ。回転型のモータや発電機といった「回転機の基本モデル」となるものを磁気回路に基づいて導出する。
④基本モデルを基礎として,「直流機」,「同期機」,「誘導機」の方程式を導出し,それをもとに等価回路を求め,各種モータや発電機の原理を学ぶ。また,同期機であるが回転子に巻線も永久磁石も用いないリラクタンス機についても学ぶ。


Web資料を公開予定。詳しい情報はコロナ社ホームページをご覧ください。

目次

1.電気機器の歴史

2.電磁気学の基礎
2.1 アンペールの法則
 2.1.1 直線導体の作る磁界
 2.1.2 2本の直線導体の作る磁界
 2.1.3 (無限長)ソレノイドコイルの作る磁界
2.2 磁界と磁束密度の関係
2.3 磁束密度の定義とクーロン力
2.4 磁束密度に関するガウスの法則
 2.4.1 ガウスの法則
 2.4.2 ベクトルポテンシャル
2.5 運動系でのファラデーの法則
2.6 静止系でのファラデーの法則
2.7 回転機における速度起電力(EMF)
2.8 実際の巻線
 2.8.1 コイルエンド
 2.8.2 表皮効果と近接効果
2.9 磁性体に関する法則
 2.9.1 磁化と磁化電流
 2.9.2 磁性体中の磁界の強さ
 2.9.3 強磁性体の磁化と透磁率
 2.9.4 ヒステリシス特性(交流磁化特性)
 2.9.5 ヒステリシス損失
 2.9.6 渦電流損失
 2.9.7 二周波分離法
 2.9.8 硬磁性,軟磁性(永久磁石と電磁鋼板)
 2.9.9 硬磁性材料の特性(永久磁石の動作点計算)
章末問題

3.磁気回路
3.1 磁気回路のオームの法則
 3.1.1 起磁力(アンペールの法則から)
 3.1.2 磁気抵抗
 3.1.3 鎖交磁束数
3.2 インダクタンスと鎖交磁束数
 3.2.1 インダクタンスの定義
 3.2.2 インダクタンスの空間変化
 3.2.3 インダクタンスの飽和と微分インダクタンス
3.3 磁気エネルギーと磁気随伴エネルギー
3.4 磁気回路に働く力
 3.4.1 誘導起電力
 3.4.2 磁気回路に働く力
 3.4.3 回転機のトルク
3.5 複数巻線の磁気回路
 3.5.1 インダクタンス(自己,相互,漏れ)
 3.5.2 磁気エネルギーと磁気随伴エネルギー
 3.5.3 磁気回路に発生する力
3.6 回転子に巻線のある磁気回路
 3.6.1 電圧方程式
 3.6.2 電気-機械パワー変換
3.7 鉄損
章末問題

4.変圧器
4.1 変圧器の構成
4.2 変圧器の特性
 4.2.1 一般的等価回路
 4.2.2 理想変圧器
 4.2.3 等価回路
4.3 変圧器の試験(等価回路定数の測定)
 4.3.1 無負荷試験
 4.3.2 短絡試験
4.4 パーセントインピーダンス
4.5 変圧器のベクトル図
4.6 電圧変動率
4.7 変圧器の効率
4.8 三相変圧器
章末問題

5.回転機
5.1 固定子巻線が作る磁界による磁束密度分布
 5.1.1 単相巻線が作る磁束密度分布
 5.1.2 二相巻線に交流を流したときの磁束密度分布
 5.1.3 三相巻線に交流を流したときの磁束密度分布
 5.1.4 二相交流と三相交流の相互変換
 5.1.5 多極回転機,極対数,機械角と電気角
5.2 巻線のインダクタンス
 5.2.1 集中巻の巻線のインダクタンス
 5.2.2 分布巻の巻線のインダクタンス
5.3 電圧方程式とトルク方程式
5.4 回転機の分類
章末問題

6.直流機
6.1 直流機の基本構造
6.2 直流機の電圧方程式とトルク方程式
 6.2.1 固定子巻線1組,回転子巻線1組の場合
 6.2.2 固定子巻線1組,回転子巻線2組の場合
 6.2.3 固定子巻線1組,回転子巻線n組の場合
 6.2.4 座標変換による説明
6.3 直流機の特性
 6.3.1 電機子反作用
 6.3.2 励磁方式
 6.3.3 永久磁石直流電動機の基本特性
章末問題

7.同期機
7.1 同期機の基本構造
7.2 同期機の電圧方程式とトルク方程式
 7.2.1 回転子巻線の鎖交磁束
 7.2.2 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 7.2.3 回転子に生じるトルク
7.3 d-q軸モデル
 7.3.1 突極性のない同期機
 7.3.2 突極性のある同期機
7.4 同期機の特性
 7.4.1 等価回路と定常特性
 7.4.2 電機子反作用
章末問題

8.誘導機
8.1 誘導機の基本構造
8.2 誘導機の電圧方程式とトルク方程式
 8.2.1 回転子巻線の鎖交磁束
 8.2.2 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 8.2.3 回転子に生じるトルク
8.3 α-β軸モデル
8.4 誘導機の特性
 8.4.1 等価回路と定常特性
 8.4.2 誘導機の試験(等価回路定数の測定)
章末問題

9.リラクタンス機
9.1 リラクタンス機の基本構造
9.2 シンクロナスリラクタンスモータ
 9.2.1 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 9.2.2 回転子に生じるトルク
9.3 スイッチトリラクタンスモータ
 9.3.1 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 9.3.2 回転子に生じるトルク

付録
A.1 ローレンツ変換について
A.2 分布巻の巻線インダクタンス

引用・参考文献
章末問題略解
索引

ISBN:9784339009361
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:242ページ
定価:3300円(本体)
発行年月日:2020年08月
発売日:2020年07月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:THRM