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IEC61850を適用した電力ネットワーク

スマートグリッドを支える変電所自動化システム

編著:天雨 徹
著:田中 立二
著:大谷 哲夫

紙版

内容紹介

【特徴】
情報通信技術を活用したスマートグリッドの中核を担う変電所自動化システムのための国際標準IEC 61850についての解説書。電力会社,メーカ,研究者の視座から,国内で使用されている技術との対応についても配慮しつつ,体系立ててIEC 61850の仕様と特徴を詳述。単なる解説書に留まらず,国際標準の世界を知り,具体的な設計方法を習得することで,IEC 61850に基づく変電所自動化システムを実現する技術者必携の一冊である。

【各章について】
第1章は,電力ネットワークを取り巻く環境の変化として,太陽光発電の大量導入,スマートグリッド,国際標準,電力ネットワークの現状と課題について述べる。
第2章は,変電所保護制御システムの国際標準であるIEC 61850 の目的・対象・適用範囲などの概要,および論理ノード・通信サービス・エンジニアリングツール・試験仕様などの規格体系について解説。また,変電所保護制御に必要な装置・機器の情報をモデル化したIEC 61850 の論理ノードと,それを用いた変電所保護制御システムの構成について解説。
第3章は,変電所の計測・監視・制御・保護に必要とされるIEC 61850 の通信サービスについて解説。また,CT/VT 瞬時値・遮断器トリップ指令の高速伝送のためのプロセスバス,および送電線電流差動保護・シンクロフェーザ適用系統観測・変電所―制御所間通信などの広域通信のためのIEC 61850 拡張標準と,これらに関係した電力システムのセキュリティ標準IEC 62351 について解説。
第4章は,保護制御ユニットの構成を,ハードウェア,実装される保護制御機能,ソフトウェアの三つの側面から解説。あわせて,IED の設定作業を行う際に利用するエンジニアリングツールについても説明する。
第5章は,IEC 61850 のクライアントとなるSCADA について述べる。SCADA は,変電所監視制御システムにおいても適用される。具体的には,一般的なSCADA の機能と構成について述べた後,変電所監視制御システムに適用するSCADA について説明する。
第6章は, 配電用変電所が有する保護制御機能(抜粋)を対象に,IEC 61850 を適用した場合のケーススタディを述べる。ケーススタディでは,主回路構成・保護制御機能・対応する論理ノード・IEDの仕様を想定した上で,システムの設計・試験・メンテナンスの具体例を示す。
第7章は,電力ネットワークに関する保護制御システムの今後を,IEC 61850 に関連する観点から考察。具体的には,汎用性を確保するためのアプローチ,分散型電源・配電自動化・風力発電といった広域性の確保,エンジニアリングツールの標準化など標準化範囲の拡大に着目する。また,電力会社とメーカの役割分担やデータ活用についても考察。

【著者より】
本書が変電所自動化システム設計者のみならず,これら電力ネットワークについて関心をもっておられる方々にとって,少しでも役に立つものとなれば望外の喜びです。

目次

1. 序章
1.1 概要
1.2 電力ネットワークと変電所保護制御システムに関する環境変化と課題
 1.2.1 電力ネットワークを取り巻く環境の変化
 1.2.2 変電所保護制御システムの現状
 1.2.3 変電所保護制御システムにおける課題
1.3 本書の目的と内容
引用・参考文献

2. 変電所保護制御システム標準 IEC 61850 ①―概要と論理ノード
2.1 概要
2.2 標準体系
2.3 IEC 61850に基づいたシステム開発手順
2.4 論理ノードの構成
 2.4.1 論理ノード(LN:logicalnode)
 2.4.2 共通データクラス(CDC:common data class)
 2.4.3 共通データクラスのデータ属性
引用・参考文献

3. 変電所保護制御システム標準 IEC 61850 ② ―通信サービスとセキュリティ
3.1 通信サービス IEC 61850-7-2
 3.1.1 GenServerクラス
 3.1.2 Associationモデル
 3.1.3 GetDataValues/SetDataValues ―データ読出/書込
 3.1.4 Report ―計測,イベント伝送
 3.1.5 Log ―記録・検索
 3.1.6 Control ―直接制御・選択制御
 3.1.7 Setting ―設定・整定
 3.1.8 Filetransfer ―ファイル転送
 3.1.9 GOOSE ―高速高信頼イベント伝送
 3.1.10 Sampled Value ―瞬時値伝送
 3.1.11 時刻同期
3.2 変電所構内および広域通信ネットワーク
 3.2.1 プロセスバスの適用 IEC 61850-90-4
 3.2.2 通信の冗長化構成(RSTP,PRP,HSR) IEC 61850-90-4
 3.2.3 変電所間通信(送電線電流差動保護など) IEC 61850-90-1
 3.2.4 給電・制御所-変電所間通信(テレコン) IEC 61850-90-2
 3.2.5 シンクロフェーザ(系統観測,安定化システム) IEC 61850-90-5,IEC 62361-102
3.3 セキュリティ IEC 62351
引用・参考文献

4. 保護制御ユニット(IED)とエンジニアリングツール
4.1 ハードウェア
 4.1.1 CPUとメモリ
 4.1.2 電源
 4.1.3 通信インタフェース
 4.1.4 入出力部
 4.1.5 耐環境性能
4.2 IEDに実装される保護制御機能
4.3 ソフトウェア
 4.3.1 保護制御プログラム
 4.3.2 通信用ミドルウェア
 4.3.3 オペレーティングシステム
4.4 エンジニアリングツール
 4.4.1 システムコンフィグレータ
 4.4.2 IEDコンフィグレータ
引用・参考文献

5. SCADA
5.1 SCADAと関連する装置
 5.1.1 SCADAの構成形態
 5.1.2 SCADAソフトウェアの機能
 5.1.3 SCADAソフトウェアの構成
 5.1.4 OPCについて
5.2 変電所SCADA
 5.2.1 系統監視機能
 5.2.2 機器制御機能
 5.2.3 切替スイッチ制御機能
 5.2.4 計測機能
 5.2.5 状態表示機能
 5.2.6 故障表示機能
引用・参考文献

6. IEC 61850適用保護制御システム構築のケーススタディ
6.1 適用対象の変電所および保護制御機能
 6.1.1 変電所の主回路構成
 6.1.2 保護制御機能
 6.1.3 論理ノードの選定とその役割設定
 6.1.4 IEDの仕様
6.2 システムの設計
6.3 システムのテストとメンテナンス

7. 電力ネットワークにおける保護制御システムの今後
7.1 汎用性の確保のためのアプローチ
 7.1.1 BAPを使ったシステム構築
 7.1.2 国内における機能仕様の活用
 7.1.3 論理ノードの実装方法の改良
7.2 広域性
 7.2.1 分散型電源などの監視制御
 7.2.2 配電自動化システム
 7.2.3 風力発電の監視制御
7.3 標準化範囲の拡大
 7.3.1 エンジニアリングツールの標準化
 7.3.2 標準化を充実させるための置換性の可能性
 7.3.3 システム管理
7.4 電力会社,メーカの役割分担
7.5 データ活用
引用・参考文献

付録
 付表1 IEC 61850-7-4論理ノード一覧
 付表2 IEC 61850-7-3共通データクラス
 付表3 IEC 61850-7-420分散電源論理ノード,共通データクラス
索引

ISBN:9784339009323
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:198ページ
定価:2900円(本体)
発行年月日:2020年06月
発売日:2020年06月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:THY