構築された仏教思想
龍樹―あるように見えても「空」という―
著:石飛 道子
内容紹介
ゴータマ・ブッダが説いた「縁起」の思想を、「空」という概念でもって再定義した龍樹(ナーガールジュナ)。
本書では、その生涯や主要著作を紹介するとともに、龍樹がブッダの教えを正しく継承しながら、「菩薩」として衆生の救済のために独自の論理と法――「中道」と「空」を提唱したことを詳述する。
龍樹の思想的独創性が掴める一冊。
目次
まえがき
第一章 龍樹伝説と龍樹の主要作品
1 謎の人物龍樹
2 『大般涅槃経』は道しるべ
3 龍樹の誕生・龍樹の出家
4 龍樹の悟り
5 龍樹の活躍とその死
6 龍樹の主著『中論頌』
7 仏教論師の仕事
8 大乗菩薩の仕事
第二章 ブッダの縁起と龍樹の中道
1 論理と法の地で
2 縁起と無我
3 中道と空
4 有無二辺の中道は菩薩の道?
5 「有る」という極端と「無い」という極端
6 想いやことばの世界――戯論
7 虚無論者か詭弁論者か
8 ブッダは何も説かなかった?
第三章 中道の論理と空の世界(聖者の世界へ)
1 後のものを先にしてはならない
2 あるがままに観察すると
3 想いを想うと
4 存在(バーヴァ)と自性(スヴァバーヴァ)
5 自性があるとき他性がある
6 中道というものの見方
7 空・無相・無作の三解脱門
8 聖者の境地――無生法忍
第四章 仮設と四句分別の論理(凡夫の世界へ)
1 縁起と空性と仮設
2 『般若心経』も空性を説く
3 執って仮設すること
4 観世音菩薩は空性を語る
5 沙門の道と菩薩の道
6 人々の利益のために
7 一切の見解を捨て去ること
8 去る者と去らざる者
9 去る者は去らない
10 四句分別
第五章 無諍の立場と菩薩行
1 思想の花咲く龍樹の時代
2 ほんとうに論争はあったのか
3 龍樹の好敵手チャラカとニヤーヤ学派(無諍の立場)
4 「自性」のもとに整えられた哲学説(一切智者の視点)
5 菩薩行と願
6 菩薩は涅槃の証をとらず
7 龍樹以後、仏法を伝えた人々
8 中国、日本への影響――八宗の祖師
9 親鸞と易行道
あとがき