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格差社会のセカンドチャンスを探して

東大社研パネル調査にみる人生挽回の可能性

編:石田 浩
編:石田 賢示

紙版

内容紹介

人生のセカンドチャンスはどれほど開かれているか。パネル調査から教育・キャリア・メンタルヘルスの格差と挽回可能性を検証する。

若年者・壮年者を長期追跡した「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」から、人生の歩みの過程で抱える不利を挽回・回復する機会をライフコースにおける「セカンドチャンス」として捉えた上で、日本社会でセカンドチャンスはどの程度存在し、誰がセカンドチャンスを得られるのか、格差の連鎖・継続の実像を明らかにする。

目次

序章 セカンドチャンスを探して[石田 浩・石田賢示]
 1.格差の連鎖は断ち切れるのか
 2.セカンドチャンスという概念
 3.現代日本のライフコースにおけるセカンドチャンスに関する問い
 4.本書で用いる調査データ
 5.本書の方針と構成

第1部 ライフコース初期の不利とセカンドチャンスの可能性

第1章 初発の不利は乗り越えられるのか──出身家庭・背景にみられる不利とその後のライフコース[石田 浩]
 1.人生における初発の不利
 2.初発の不利とその後の成人期ライフコースにおけるアウトカム
 3.データ,変数の定義,分析方法
 4.初発の不利によるライフコースのアウトカムの違い
 5.初発の不利とライフコースの流れ
 6.ライフイベントによる不利からの脱出
 7.初発の不利は乗り越えられるのか

第2章 日本社会における高等教育機関夜間部の社会的意義[菅澤貴之]
 1.「見過ごされた存在」としての高等教育機関夜間部
 2.学校基本調査からみた夜間部の動向
 3.課題の設定・データ・分析対象の選定
 4.夜間部進学に対する規定要因
 5.職業達成に対する夜間部の効果
 6.まとめと日本社会における夜間部の社会的意義

第3章 大学等中退者のキャッチアップ可能性[下瀬川 陽]
 1.大学等中退者にとっての「セカンドチャンス」
 2.データと方法
 3.大学等中退者はどのような人びとなのか
 4.個人収入でみるキャッチアップ可能性
 5.まとめ

第2部 キャリアと経済的生活におけるセカンドチャンス

第4章 仕事探しは報われるのか──社会ネットワークによる無業者の再就職過程の格差[石田賢示]
 1.キャリアのなかで高まる無業リスク
 2.求職行動を左右する機会の問題
 3.分析に用いるデータと方法
 4.求職行動・社会ネットワーク・再就職の関連
 5.再就職過程のフェーズにより異なる社会ネットワーク効果

第5章 自営業者にとってのセカンドチャンス──収入・資産・仕事の特性に着目して[仲 修平]
 1.問題の所在──自営業者の「その後」を追う
 2.自営業層からの退出に関わる先行研究
 3.方 法
 4.分析結果──就業形態の変化/非変化と収入・資産・仕事の特性との関連
 5.考 察──自営業者にとってのセカンドチャンス

第6章 貧困の経験とセカンドチャンスとしての貧困からの脱出[林 雄亮]
 1.日本社会の貧困の現状と本章の目的
 2.パネル調査を用いた貧困経験の類型化
 3.貧困からの脱出というセカンドチャンス
 4.セカンドチャンスは開かれているか

第3部 メンタルヘルスからみた立ち直り

第7章  日常的な幼少期逆境体験がもたらすライフコース初期のメンタルヘルス不調の保護要因[百瀬由璃絵]
 1.こども家庭庁の新設置と子どもを取り巻く環境の深刻性
 2.子ども期の複合的な逆境体験
 3.データと変数
 4.分析結果
 5.社会関係の重要性

第8章  失業とメンタルヘルスに関わるSense of Coherence(SOC)と他者からのサポートの働き──男性を対象にして[池田めぐみ]
 1.失業とメンタルヘルス
 2.失業がメンタルヘルスに与える負の影響を緩和する要因
 3.データと分析方法
 4.失業とSOC・他者からのサポートの関係
 5.失業時におけるSOCと他者からのサポートの働き

第9章 親との死別経験からの立ち直り[俣野美咲]
 1.はじめに
 2.先行研究の知見と本章における検討課題
 3.親との死別経験がメンタルヘルスに及ぼす影響
 4.親との死別経験によるメンタルヘルスの悪化と回復
 5.死別経験からの立ち直りに向けて

終章 人生挽回の可能性──明らかになったことと今後の課題[石田賢示・石田 浩]
 1.各章の知見のまとめ
 2.セカンドチャンスはどの程度存在するのか
 3.「これまでの人生経験に関する調査」にみる困難な経験と乗り越え方
 4.誰がセカンドチャンスを得られるのか
 5.格差社会の構造に制約されたセカンドチャンスと今後の課題

あとがき
索引

著者略歴

編:石田 浩
石田 浩(いしだ ひろし)

1954年生まれ.ハーバード大学大学院博士課程修了.Ph. D.(社会学).現在:東京大学社会科学研究所特別教授.主著:『人生の歩みを追跡する──東大社研パネル調査でみる現代日本社会』(2020,勁草書房,共編著)『少子高齢社会の階層構造1 人生初期の階層構造』(2021,東京大学出版会,共編著).
編:石田 賢示
石田賢示(いしだ けんじ)

1985年生まれ.東北大学大学院教育学研究科博士課程後期修了.博士(教育学).現在:東京大学社会科学研究所准教授.主著:『デジタル化時代の「人間の条件」──ディストピアをいかに回避するか?』(2021,筑摩書房,共著)『少子高齢社会の階層構造2 人生中期の階層構造』(2021,東京大学出版会,分担執筆).

ISBN:9784326603671
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:256ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2024年02月
発売日:2024年02月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB