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教師の社会学

フランスにみる教職の現在とジェンダー

監:園山 大祐
監:田川 千尋
他編:京免 徹雄

紙版

内容紹介

フランスや日本の教師教育では、いま何が課題となっているのか。フランスの教職の事例を検証し、日本の教育施策への示唆を見い出す。

日本の学校教育には課題が多くあげられている。すなわち、教師の質保証(=専門職化)、教師の社会的地位の向上、管理職のジェンダーバランス、長時間労働や教師不足に対し教師を支える環境整備等などである。同じ課題を抱えるフランスの先行事例研究を検討することにより、日本の教師/教師教育の改善の手がかりを得ることができる。

目次

はしがき

序 章 フランスの教師と教師養成の課題[園山大祐]
 1.はじめに
 2.学校教育制度の拡充と教師養成の歴史
 3.給与,昇進と人事異動
 4.教師の現況
 5.おわりに

第Ⅰ部 教職の変遷と現在

第1章 フランスの教師と教師養成の課題─初等教育と中等教育の差異についての考察─[ジェラルディンヌ・ファルジュ/秋葉みなみ・渡辺一敏 訳]
 1.はじめに
 2.教職の価値についての教師の意見は,教職の変化と各人の人生とが交わる場所で生まれる
 3.経歴に準じて変化する,教職に見出す価値
 4.教師が感じる教職の価値を説明するいくつかの要素
 5.職業専門化(professionnalisation)の試練における教職の価値への曖昧な態度

第2章 教師集団の形態と社会心理[アンドレ・D・ロベール,フランソワーズ・カロー/秋葉みなみ・渡辺一敏 訳]
 1.はじめに
 2.性別と世代
 3.父方の祖先と配偶者の選択
 4.教師の職および組織との関係

第3章 教職の変遷─どのような職業アイデンティティーなのか?─[ピエール・ペリエ/田川千尋 訳]
 1.はじめに
 2.不確かな職業専門化(Professionnalisation)
 3.教師のアイデンティティーのダイナミクス
 4.おわりに

第4章 アグレガシオンと教授能力─歴史的論争─[イヴ・ヴェルヌイユ/小畑理香 訳]
 1.はじめに
 2.アグレジェの教授能力育成の欠如──古くからある批判
 3.非アグレジェの批判と教育の民主化の要請のはざまで(20~21世紀)
 4.おわりに

第5章 学校教育で有益となる文化資本の伝達─教師の親たちの家庭教育実践の特徴─[アニー・ラン/荒井文雄 訳]
 1.はじめに
 2.教師の親による教育実践の特殊性の解明を目的とした二つの調査
 3.教師の親による教育実践の弁別特徴
 4.おわりに

第6章  親の社会的地位の違いから見た中・高等教育における「教師の親効果」[ジェラルディンヌ・ファルジュ/荒井文雄 訳]
 1.はじめに
 2.学校教育資本の構築から社会的地位の獲得まで──教師の子どもの教育行程はどのようなものか
 3.方法論
 4.少なくとも父親・母親のどちらかが教師である夫婦の子ども──両親の職業と子どもの学業経歴
 5.教師の母親,教師の父親それぞれに固有の効果を明らかにする
 6.おわりに

第Ⅱ部 教師とジェンダー

第7章 1950年から1980年における中等教師の女性比率の問題─教育行政側の安堵と逡巡─[マルレーヌ・カクオー=ビトー/園山大祐 訳]
 1.はじめに
 2.女性比率──その増大と持続化
 3.男女間における格差
 4.主要教科と副次教科:いたる所に女性?
 5.女性志願者数の増大と国民教育省責任者のジレンマ

第8章 女子校から男女共学への変遷にみる中等教育機関の管理職─女性の昇進とジェンダー格差─[M.カクオー=ビトー/秋葉みなみ・渡辺一敏 訳]
 1.はじめに
 2.女性校長,あるいは差異のなかの不平等
 3.中等教育における教師職の女性化と管理職の男性化:1960~90年
 4.2000年代における学校機関の管理職:女性化とガラスの天井
 5.おわりに

第9章 教師養成にみる「女子と男子」の平等教育[クリスティンヌ・モラン=メサベル,セヴリンヌ・フェリエール,ミュリエル・サル/園山大祐 訳]
 1.はじめに
 2.研究
 3.方法論
 4.結果
 5.考察および展望
 6.理論研究から実践的研修へ
 7.おわりに

第10章 教師の実践はどのようにして性別間不平等を作り出すか?[ニコル・モスコニ/田川千尋 訳]
 1.はじめに
 2.生徒の性別によって異なる対応という点から見た教師の実践
 3.男性教師・女性教師の知識との関係性への影響は生徒の性別によって異なるのだろうか?

第11章 教育社会学と教師─女性教師はどのように研究されてきたか?─[M.カクオー=ビトー/田川千尋 訳]
 1.はじめに
 2.1960年代から1990年代までの女性初等教師
 3.中等教育の女性教師──良くも悪くも管理職の配偶者である人たち
 4.女性中等教師の置かれた状況とキャリア──職業,家庭での責任,個人の活動の複雑な連関の仕方
 5.おわりに

第12章 仏日のジェンダーと教育研究からみた課題[木村涼子]
 1.はじめに
 2.教師構成におけるジェンダー関係
 3.教師と児童・生徒の相互作用──学校における「隠れたカリキュラム」
 4.教師養成とジェンダー平等
 5.教師と政治性 女性教師はどこに向かうのか

第Ⅲ部 教師の労働環境

第13章 「校外」における教師の不可視な労働[ジュリ・ジャルティ/園山大祐 訳]
 1.はじめに
 2.中等教師の職務と活動
 3.教師の活動を限定することの難しさ
 4.「校外」における教師の労働:交渉による弾力化
 5.「校外」の仕事の組み立てにおけるジェンダー
 6.おわりに

第14章 教師の精神的消耗と挫折感[フランソワーズ・ラントーム,クリストフ・エルー/秋葉みなみ・渡辺一敏 訳]
 1.はじめに
 2.教職の緊張:批判の介入
 3.消耗,疲労,自己投入

第15章 教えることのリスク─教職のクリニック─[クローディンヌ・ブランシャール=ラヴィル/秋葉みなみ・渡辺一敏 訳]
 1.はじめに
 2.現在の社会的状況
 3.困難の否認の様々な形
 4.教師の日常における苦痛の源
 5.集団臨床支援
 6.おわりに

第16章 教師の離職─初等教育における教職の変化が明らかにするもの─[マガリ・ダネル,ジェラルディンヌ・ファルジュ,エロイーズ・フラドキヌ,サンドリンヌ・ガルシア/秋葉みなみ・渡辺一敏 訳]
 1.はじめに
 2.学校を去る教師を数値化する
 3.告発される労働条件
 4.三つの形態に振り分けられる離職
 5.おわりに

第17章 初等教師への道─教師への転職者に対する制度的問題とそのモチベーション─[フレデリック・シャルル,M.カクオー=ビトー,フロランス・ルジャンドル/園山大祐 訳]
 1.はじめに
 2.初等教師の成り手の確保に重要な役割を果たす母集団
 3.初等教師への転職の基盤となるモチベーション
 4.おわりに

第18章 教師を支える多様な専門職の役割とアイデンティティー[京免徹雄]
 1.はじめに
 2.初等教育に介入する支援スタッフ
 3.中等教育に介入する支援スタッフ
 4.生徒指導専門職の役割とアイデンティティー
 5.進路指導専門職の役割とアイデンティティー
 6.おわりに

終 章 日仏比較からみえる教職の未来[京免徹雄]
 1.本書のまとめ
 2.日本への示唆

参考文献
あとがき
略語・訳語一覧
人名索引
事項索引

著者略歴

監:園山 大祐
園山 大祐(そのやま だいすけ) 大阪大学人間科学研究科教授,博士(教育学).専門:比較教育社会学,比較教育制度学.主著:『学校を離れる若者たち──ヨーロッパの教育政策にみる早期離学と進路保障』(編著,ナカニシヤ出版,2021).『フランスの高等教育改革と進路選択──学歴社会の「勝敗」はどのように生まれるか』(編著,明石書店,2021).『コロナ禍に世界の学校はどう向き合ったのか──子ども・保護者・学校・教育行政に迫る』(共編,東洋館出版社,2022).
監:田川 千尋
田川 千尋(たがわ ちひろ) 大阪大学国際共創大学院学位プログラム推進機構准教授,研究深化学位博士1年課程(DEA)教育学.専門:比較教育社会学,大学教育学.主著:「高校から高等教育への進路システム」園山大祐編著『フランスの高等教育改革と進路選択』(明石書店,2021).
他編:京免 徹雄
京免 徹雄(きょうめん てつお) 筑波大学人間系助教,博士(教育学).専門:特別活動学・キャリア教育.主著:『フランスの学校教育におけるキャリア教育の成立と展開』(風間書房,2015).『現代キャリア教育システムの日仏比較研究──学校・教師の役割とそれを支えるメカニズム』(風間書房,2021).

ISBN:9784326603541
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:448ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2022年09月
発売日:2022年09月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JND