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ナショナリズムとマスメディア

連帯と排除の相克

著:津田 正太郎

紙版

内容紹介

生活保護バッシングにみられるように「同じ国民だから」という理由によって互いを支え合う国民的連帯は危機に瀕している。一方で、近隣諸国との緊張悪化や排外主義運動の広がりなど、ナショナリズムの高揚も見られる。ナショナリズムとマスメディアはこれまでどのような役割を担ってきたのか、これからどのような役割を担うべきなのか。

目次

序章 「彼ら」のナショナリズムから「われわれ」のナショナリズムへ
 1 ナショナリズムと愛国主義
 2 ナショナリズム批判はいかなる立場にあるのか
 3 ナショナリズムとマスメディアという問題
 4 本書の構成
 5 「国民共同体」という概念

第1章 近代化論における「革命なきナショナリズム」の肯定──コミュニケーション発展論とその「政治的なもの」の欠落について
 1 開発途上国の近代化とナショナリズム
 2 近代化論における「政治的なもの」の放逐
 3 コミュニケーション発展論と豊かさへの期待
 4 近代化論の凋落と新たな分析の視座
 5 コミュニケーション発展論の遺産

第2章 社会的コミュニケーション論におけるナショナリズム観──相互理解の促進と排他性のジレンマ
 1 相互依存関係の拡大と国民共同体
 2 「コミュニケーション・システム」としての国民共同体
 3 「想像の共同体」としての国民共同体
 4 永遠の「未完のプロジェクト」

第3章 ナショナリズム概念の再検討──理念的/認識的ナショナリズムとマスメディア
 1 ナショナリズムはイデオロギーか
 2 認識的ナショナリズムと理念的ナショナリズム
 3 ナショナリズムとマスメディアはどのような関係にあるのか
 4 ナショナリズム研究の応用を目指して

第4章 ナショナリズムは肯定できるか──差異の(不)可視化とマスメディア
 1 「進歩派のジレンマ」とリベラル・ナショナリズム
 2 国民的連帯は肯定できるか
 3 差異は連帯を阻害するのか
 4 国民的連帯を蝕むナショナリズム

第5章 ナショナリズムは福祉を促進しうるか──政策形成過程における言説とマスメディアの役割
 1 ナショナル・アイデンティティとしての福祉
 2 政策形成における言説とナショナリズムの役割
 3 マスメディアと政策形成
 4 マスメディア、ナショナル・アイデンティティ、社会政策

第6章 同胞を疑うナショナリズム──国民共同体の物語とマスメディア
 1 シニカルなナショナリズム
 2 シニック・ナショナリズムを支える物語
 3 開かれた国民の物語は可能か
 4 国民の物語と社会・経済との好循環

第7章 マスメディアはいかに連帯を構築するのか──共感原理の可能性と危険性
 1 マスメディアによる共感の喚起と連帯
 2 共感原理への批判
 3 社会的弱者をいかに表象すべきか
 4 複合的連帯の発見

第8章 ナショナリズムの排他性はいかに緩和されるか──シティズンシップの民主主義的拡張とマスメディア
 1 高揚する反移民感情とシティズンシップ
 2 シティズンシップをめぐる政治
 3 シティズンシップとマスメディア
 4 シニカルなマスメディア観を越えて

補論 冷戦期米国のマスコミュニケーション研究における宣教師的ナショナリズム──マスメディアの影響に関する言説とその政治的文脈
 1 限定効果理論とコミュニケーション発展論の齟齬
 2 マスコミュニケーションの「効果」をめぐる言説
 3 冷戦期マスコミュニケーション研究の政治的文脈
 4 「第三者効果」としてのコミュニケーション発展論

あとがき
初出一覧
参考文献
索引

著者略歴

著:津田 正太郎
津田 正太郎(つだ しょうたろう)
1973年大阪府生まれ。慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授。1997年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、2001年サセックス大学大学院(Media Studies, MA)修了、2003年慶應義塾大学大学院法学研究科単位取得退学。財団法人国際通信経済研究所、法政大学社会学部教授を経て現職。主要著作に『ナショナリズムとマスメディア─連帯と排除の相克』(単著、勁草書房、2016年)、『メディアは社会を変えるのか─メディア社会論入門』(単著、世界思想杜、2016年)、『共生社会の再構築Ⅱ─デモクラシーと境界線の再定位』(共著、法律文化社、2019年)など。

ISBN:9784326602940
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:360ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2016年11月
発売日:2016年11月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB