日本の経済外交
新たな対外関係構築の軌跡
編:大矢根 聡
内容紹介
日本外交の「成功物語」だったのか? 冷戦期から現在までの成果と挫折、可能性と限界、そして今に至る問題の起源にも光を当てる。
戦後、日本は独自の経済外交を追求し、それは一種の「成功物語」と見られてきた。しかしその影では見過ごされてきた問題があったのではないか? 本書では冷戦期、経済大国期、超克期、再構築期の4つの時期に区分し、安全保障とは距離を置く経済外交という「実験」の実像を、新たな史料や理論的展開によって照らし出す。
目次
はじめに
序章 日本の経済外交の構図――吉田路線のジレンマと再編[大矢根聡]
はじめに
1 経済外交の原点としての吉田路線――その潜在的ジレンマ
2 冷戦期における経済外交の推進――自制と補完の対外関係(戦後~1960年代)
3 経済的危機の時代の経済大国化――自制から国際的馴化へ(1970年代~1980年代)
4 経済大国としての国際的承認の摸索――国際制度・規範の回路(1990年代~2000年代)
5 衰退する日本の位置確保の試み――国際・地域制度の転用(2010年~)
おわりに
第1章 賠償と経済協力の起点――なぜ一体のものとして語られるようになったのか[宮城大蔵]
はじめに――「反省と償い」から経済協力へ
1 賠償問題の展開と認識の変化
2 「二本立て」の構想とその展開
3 「東南アジア開発」という文脈
4 交渉の妥結と賠償の変質
おわりに――賠償と経済協力をめぐる歴史認識
第2章 日中民間貿易における決済問題[井上正也]
はじめに
1 1950年代の日中民間貿易協定と決済問題
2 LT貿易の成立と「民間」関与の制度化
3 国際通貨体制の動揺と日中決済交渉
4 国交正常化と決済問題
おわりに
第3章 日米知財制度摩擦とその帰結――コンピュータ・プログラムの法的保護をめぐって[西村もも子]
はじめに
1 日本における情報産業の発展
2 アメリカにおける知的財産権の通商問題化
3 コンピュータ・プログラムの法的保護をめぐる日米摩擦
4 技術の標準化の動きとその帰結
おわりに
第4章 経済摩擦の歴史性――日本異質論の系譜[塚田鉄也]
はじめに
1 日本異質論
2 黄禍論
3 類似ケース――ドイツ問題,アメリカ問題
おわりに
第5章 国際協力構想と竹下外交[若月秀和]
はじめに
1 「世界に貢献する日本」というスローガン
2 「国際協力構想」――異例な事務次官のイニシアティブ
3 構想の3つの柱
4 重要なパートナーとしての西ヨーロッパ
5 「人的貢献」の第一歩
6 アメリカからの「バードン・シェアリング」要求
7 国際協力構想の文脈での竹下訪中
8 高く評価された文化協力と曲がり角の対中ODA
おわりに――「短命」だった構想
第6章 環境と資源問題をめぐる国際政治と日本外交[太田宏]
はじめに
1 環境と資源問題の国際政治課題化
2 化石燃料資源をめぐる国際政治と日本の対応
3 日本の気候外交とエネルギー戦略
おわりに――福島後のエネルギー政策と気候外交
第7章 日本のFTA政策積極化――経済外交再構築と交渉戦術[鈴木一敏]
はじめに――日本の通商政策転換
1 FTA政策の変化の背景要因と農工バーター
2 日本のFTA交渉における農工のデリンク
おわりに――デリンク戦術確立による経済外交の推進
第8章 外国人労働者の受け入れと経済外交――「移民政策」の継続性と変化[赤星聖]
はじめに
1 日本の外国人労働者受け入れ政策の継続性と変化
2 分析枠組み――経済外交が引き起こす制度変化
3 「1990年体制」の成立と展開――日本の「移民政策」の起源
4 経済外交を通した外国人労働者受け入れ
おわりに
第9章 東アジア地域主義における日中協力――AMROとRCEPを参考に[和田洋典]
はじめに
1 日中を覆う構造
2 協力阻害要因
3 事例分析
おわりに――日中協調をめぐる教訓
第10章 対韓経済制裁をめぐる対立の連鎖――相互依存の「武器化」とその錯誤[金ゼンマ・大矢根聡]
はじめに
1 分析枠組み
2 分 析
おわりに
事項索引
人名索引
執筆者紹介
ISBN:9784326303212
。出版社:勁草書房
。判型:A5
。ページ数:336ページ
。定価:4800円(本体)
。発行年月日:2023年01月
。発売日:2023年01月30日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCZ。