出版社を探す

国際関係理論と日本外交史

「分断」を乗り越えられるか

編:大矢根 聡

紙版

内容紹介

理論家と歴史家の画期的なコラボレーション! 外交史研究と国際関係理論研究の対話を通じて、新たな日本外交像を切り拓く。

国際関係論は本当に進歩しているのだろうか。外交史研究では膨大な史料が公開されてきたが、それに溺れて分析の視点が不明確になりやすい。理論研究では方法論が洗練されてきたが、理論的革新が見られなくなった。そこで本書では、日本外交を舞台に歴史研究と理論研究の対話を試み、新たなフロンティアの開拓を試みる。

目次

はじめに

第Ⅰ部 序論

第1章 国際関係理論と日本外交史──「分断」を乗り越えられるか[大矢根聡]
 1. 日本外交の実像?
 2. 日本外交の「能動性」と国際秩序理論の盲点?
 3. 歴史研究と理論研究,断絶の起源
 4. 歴史・理論対話の可能性
 5. 対話の相乗効果?
 6. 歴史と理論の相違
 7. 本書の方法と構成

第2章 理論・歴史対話の諸相──日本,アメリカ,ドイツ,フランス[大矢根聡,佐々木卓也,葛谷彩,宮下雄一郎]
 はじめに
 1. 日本における理論・歴史対話
 2. アメリカにおける理論・歴史対話
 3. ドイツにおける理論・歴史対話
 4. フランスにおける理論・歴史対話
 おわりに

第Ⅱ部 理論の歴史的再検討

第3章 現状防衛の時空間──安全保障外交の歴史と理論[石田淳]
 はじめに──外交におけるシグナルの送受信
 1. 外交におけるリアリズム──現状防衛の意図のコミュニケーション
 2. 維持・回復するべき現状の領域的範囲についての認識
 3. 現状を維持・回復するための方法についての認識
 おわりに

第4章 日本のビルマ賠償をめぐる相互性──国際政治理論と戦後日本の経済協力外交の原点[福島啓之]
 はじめに
 1. 先行研究からの逸脱事例としての日本のビルマ賠償
 2. 相互性についての理論的考察
 3. 相互性の起動装置としての賠償
 4. 事例選択に関する方法論的検討
 5. 日本とビルマの賠償交渉の歴史事例分析
 6. 日本のビルマ賠償の内容
 7. 日本のビルマ賠償の実施とその意義
 8. 日本のビルマ賠償にみられる賠償の合意成立の条件
 おわりに

第5章 国連総会一般演説を通じた日本の情報発信の変遷と傾向の検討──テキスト分析によるアプローチ[多湖淳]
 はじめに
 1. コーパスデータと分析アプローチ
 2. 日本のアジェンダ・セッティング
 3. ディスカッション──ひとつの解釈
 資料

第6章 日本の対外政策決定のモデル化に向けて──「日常/非常時型モデル」の再検討[長久明日香]
 はじめに
 1. 日本独自の対外政策決定モデル形成への障害
 2. 「日常/非常時型モデル」の位置づけ
 3. 事例研究
 おわりに──「日常/非常時型モデル」の改訂

第7章 サミットにおける日本外交──異質な国の多国間協調[大矢根聡]
 はじめに
 1. 多国間協調の理論──主体の同質性と異質性
 2. 日本のサミット外交のパターン──「馴化」の3類型
 3. 政策協調への参画──第1パターン
 4. 対抗的政策協調への対応──第2パターン
 5. 政策協調における独自案──第3パターン
 おわりに

第Ⅲ部 歴史の理論的分析

第8章 ジョージ・ケナンの現実主義と日米関係論──政策と理論の交差[佐々木卓也]
 はじめに──理論と歴史の対話
 1. ケナンの対日認識の形成
 2. ケナンと対日占領政策
 3. ケナンと朝鮮戦争
 4. ケナンとシカゴ大学講義
 おわりに

第9章 日米繊維紛争における政治過程の再検討──時間とアイディアを中心に[村井良太]
 はじめに
 1. 戦争のあとで──前史
 2. 問題の発端と第1の転形──大平正芳通産大臣の堅陣
 3. 全体経済への危機感と業界の自主規制──宮澤喜一通産大臣と紛争の拡大
 4. ニクソン・ショックと政府間交渉への再帰結──田中角栄通産大臣と危機対応
 おわりに──日米繊維紛争と沖縄返還後の経済的大国日本

第10章 規範としての「一つの中国」[井上正也]
 はじめに
 1. 「二つの中国」論の起源
 2. 国際規範としての「一つの中国」
 3. 「一つの中国」原則の受容
 おわりに

第11章 国際関係論の中の「普通でない国」?──戦後日独対外政策の比較研究を比較する[葛谷彩]
 はじめに
 1. 1970年代から80年代──パックス・アメリカーナの揺らぎと日独
 2. 1990年代──ポスト冷戦世界における日独
 3. 2000年代──アメリカ・インペリウムにおける地域大国としての日独
 おわりに

第12章 「アジア太平洋」/「東アジア」と日本外交──民主党政権期を中心に[宮城大蔵]
 はじめに
 1. アジア太平洋の歴史的文脈
 2. 東アジアの歴史的文脈
 3. アジア太平洋と東アジア
 4. 鳩山由紀夫首相と「東アジア共同体」
 5. 和解と不戦共同体という発想
 6. 菅直人首相の経済重視路線
 7. 東アジア共同体からTPPへ?
 8. 「保守」を自任した野田首相
 9. 国際環境と日本の選択
 おわりに

第13章 時代区分論の再検討と戦後日本の自由貿易政策試論[保城広至]
 はじめに
 1. 時代区分論への批判
 2. 時代区分論の社会科学的検討
 3. 戦後日本の自由貿易政策と時代区分
 おわりに

事項索引
人名索引
執筆者紹介

著者略歴

編:大矢根 聡
大矢根 聡(おおやね さとし)
神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学,博士(政治学)を取得。金沢大学法学部助教授などを経て,現在同志社大学法学部教授,専門は国際関係論。主著:『国際レジームと日米の外交構想―WTO・APEC・FTA の転換局面』(有斐閣,2012年),『国際関係論と日本外交史―「分断」を乗り越えられるか』(編著,勁草書房,2020年)など。

ISBN:9784326302857
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:356ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2020年02月
発売日:2020年02月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS