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不安の力

不確かさに立ち向かうこころ

著:坂野 登

紙版

内容紹介

不安は、ネガティブで否定すべきだけのものだろうか。誰しもが抱く普通の感情の働きを知ることで、生き抜いていくための力となす。

不安の時代を生きる私たちは、不安とどのように向きあえばいいのだろうか。本書は不安を身体的なものと認知的なものに分類し、進化論、精神分析、心理学、脳科学といった視点から、不安がどのようにあらわれるかを読み解く。そして、不安が目の前の不確かさに対処し、積極的に問題解決に向かう心の機能であることを明らかにする。

目次

序章 不安ですべてが始まる

第一章 不安とはどのような感情なのだろうか
 1 身体的不安と認知的不安
 2 心理学の歴史で感情を振り返る

第二章 フロイトによる不安の精神分析的理解
 1 『精神分析入門』――不安とはなにか
 2 『自我とエス』――不安は経済の原理で動く
 3 『制止、症状、不安』――不安は自我が生産する

第三章 グレイによる不安の神経心理学的理解
 1 恐れと不安のあらわれ方は異なっている
 2 不安はコンフリクトによって生じる
 3 コンフリクトを検知し、解決を図る脳の仕組み

第四章 フロイトとグレイの不安論の特徴
 1 フロイト――自我は不安の本来の場所である
 2 グレイ――不安の研究から意識の問題の解明へ
 3 進化論者としてのフロイトとグレイ

第五章 感情を進化の適応的過程として理解する
 1 プルチックによる感情の進化的なとらえ方
 2 感情を接近行動と離脱行動に分ける
 3 感情と認知を統合させる新たなモデル

第六章 質問紙は不安を本当に測っているのだろうか
 1 よく使われる不安検査は二つの不安を分けていない
 2 グレイの理論を質問紙で測る

第七章 不安を脳波で測る
 1 感情を左右の大脳半球のはたらきと関連づける
 2 不安を作り、そして変える
 3 不安状態を変える

第八章 不安はパーソナリティでありこころの変化の中継路である
 1 グレイは不安をパーソナリティとしてもとらえていた
 2 反転説――反転によって不安になり、また安静になる
 3 坂野による二つの不安のあいだの反転論

第九章 不安の力とは何だろうか
 1 社交不安は共感力やこころを読む力と関係する
 2 不安は自分を振り返る力である
 3 適度の不安は認知能力を改善する
 4 不安は反転して変化する

終章 不安を生き、生かす

あとがき
文献
索引

著者略歴

著:坂野 登
坂野 登(さかの のぼる)

1962年, 京都大学大学院文学研究科博士課程単位修了. 翌年, 文学博士. ライプチッヒ大学医学部臨床神経生理学部門研究助手(1964-1966), 京都大学教育学部助教授・教授(1970-1997), ライプチッヒ大学心理学研究所ブント記念講座客員教授(1980-1981), 神戸親和女子大学教授, 名古屋女子大学教授などを歴任. 現在, 京都大学名誉教授. 専門は教育神経心理学. 主な著書に, “Latent left-handedness: Its relation to hemispheric and psychological functions.”(VEB Gustav Fisher Verlag Jena), 『不安の力』(勁草書房), 『脳と教育』(編著、朝倉書店), 『二つのこころと一つの世界』(新曜社)がある.

ISBN:9784326299072
出版社:勁草書房
判型:4-6
ページ数:272ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2015年05月
発売日:2015年05月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JMA