世界遺産都市ドゥブロヴニクを読み解く
戦火と守護聖人
著:武田 尚子
内容紹介
中世に地中海交易都市として栄えたドゥブロヴニクは現代のユーゴ紛争で激戦地になった。戦火から何度も復活した都市の社会史を解読。
バルカン半島クロアチア共和国の都市ドゥブロヴニクは、歴史的な意義と風光明媚な環境が調和した美しい世界遺産都市である。交易で得た豊かな資本が蓄積され、中世から現代まで何度も敵に脅かされたが、結集の象徴である守護聖人を支えに、城壁を死守してきた。現代でもなお城壁と守護聖人を生命線とする独自の歴史を読み解く。
目次
はじめに 世界遺産都市ドゥブロヴニクと守護聖人
序章 中世都市の現在
1 中世都市の見取り図
2 ドゥブロヴニクの空間的特徴
3 「城壁」と「守護聖人」の現代性
第1章 歴史都市を読み解く
1-1 歴史都市に学ぶ
1-2 都市と「資源の集積」
1-3 都市共同体と資本主義――ウェーバーの都市概念
1-4 都市と経済圏――ブローデルの歴史観
1-5 都市と資本蓄積様式――ブローデルの資本主義分析
1-6 都市と世界システム――ウォーラーステインの資本主義分析
1-7 近代国家と紛争――ウォーラーステインの歴史観
1-8 現代都市と紛争
第2章 アドリア海ダルマチアの都市
2-1 ローマ帝国とダルマチア
2-2 ビザンツ帝国の海洋都市
2-3 ヴェネツィア支配下のドゥブロヴニク
第3章 自治都市の成立と共同防衛
3-1 都市コムーネの体制整備
3-2 都市国家への発展
3-3 共同防衛の都市空間
第4章 都市国家の秩序とリスク
4-1 都市の秩序と行政機能
4-2 天災からの復興
4-3 ナポレオンのダルマチア支配
第5章 都市共同体と守護聖人
5-1 共同祈願のシンボル
5-2 守護聖人の宗教的機能
5-3 政治的機能と正統性
5-4 守護聖人の民俗的機能
5-5 復活の同伴者
第6章 共同利益と経済活動
6-1 バルカンの鉱物資源
6-2 貨幣と通商
6-3 聖ヴラホの銀貨
6-4 バルカンの火薬庫と大砲製造
第7章 共同体と階層分化
7-1 都市コムーネの支配層
7-2 貴族層の中核集団と再生産
7-3 中世都市の生活様式
第8章 二〇世紀の戦火と弾痕
8-1 クパリの弾痕
8-2 クロアチアの独立宣言
8-3 内戦激化
8-4 戦火の家族
8-5 ドゥブロヴニク包囲
8-6 無差別攻撃
8-7 二一世紀の復活――戦火と守護聖人
終 章 歴史都市と現代社会
あとがき 現代都市と守護聖人
文 献
索 引