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予測する心

著:ヤコブ・ホーヴィ
監:佐藤 亮司
他訳:太田 陽

紙版

内容紹介

脳は受動的なメカニズムではなく、自ら予測を行う仮説テスターだ。これまでの理解を刷新する、心のメカニズムの統合的新理論。

心は予測から生じ、予測によって形作られる。あなたの思考、知覚、感情は活発に予測を行い、仮説を検証する、たった一つの脳内メカニズムの表現に過ぎない。神経科学で存在感を増しつつあるこの新しい理論によって、心の様々な側面についての私たちの考え方が、今根底からくつがえる。

目次

日本語版への序文
序 文
イントロダクション
 議論のあらまし
 計 画
 背 景
 本書について

第1部 メカニズム

第1章 因果推論としての知覚
 知覚推論に対する制約
 知覚とベイズの規則
 知覚推論と両眼視野闘争
 脳はいかにしてベイズを知るのか?
 推論から知覚の主観的な現れへ
 因果的規則性の階層
 知覚的変化と不変
 階層レベル間のメッセージのやり取り
 階層的推論における追加の制約
 ベイズの規則について
 まとめ 階層的神経推論メカニズム

第2章 予測誤差最小化
 統計による例示
 外界との関係を考え直す
 外界という教師
 より深い視点
 認識とモデルの逆転
 まとめ 予測における知覚

第3章 予測誤差・文脈・精度
 文脈と不確実性
 ダムの水漏れをふさぐ
 予期される精度
 精度と予測誤差ゲイン
 基本メカニズムについての様々な話題
 まとめ 受動的な知覚者?

第4章 行為と予期される経験
 知覚における行為推論
 行為者をモデル化すること、そして行為すること
 驚きを制限すること
 行為推論における様々な話題
 予測誤差最小化の諸課題
 まとめ 心を理解するためのツールを準備する

第2部 外 界

第5章 結びつけは推論である
 結びつけ問題と因果推論
 ベイズ的説明への最初の立論
 共通原因から感覚の結びつけへ
 結びつけ・注意・精度
 まとめ 誤差最小化における結びつけ

第6章 見ることは予測すること?
 認知的侵入可能性――最初の一歩
 不確実性が増していく状況下での認知的侵入可能性
 認知的侵入不可能性の余地を残す
 認知的侵入可能性の候補となる事例
 まとめ バランスのとれた認知的侵入可能性の概念

第7章 不安定な予測
 知覚と誤知覚の間のトレードオフ
 正確さとノイズ
 精度・サンプリング・事前信念
 現実検討
 知覚の法廷
 精神疾患と予測誤差
 妄想と予期される精度
 自閉症と予期される精度
 受動的な推論と能動的な行為推論との間のバランスをとる
 まとめ 病と健康に関わる予測誤差の失敗

第8章 驚きと誤表象
 予測誤差最小化の失敗としての誤知覚
 誤知覚と規則遵守
 階層的な提示様式
 ベイズの部屋にて
 まとめ 表象のメカニズム

第3部 心

第9章 精度・注意・意識
 心のサーチライトから精度予期へ
 ノイズと不確実性の学習パターン
 注意における予期される精度のパターン
 行為推論としての意志的注意
 低いゲインと低い事前確率としての不注意盲
 内発的および外発的注意
 注意と意識的な知覚
 まとめ 注意と意識の統計的な側面

第10章 行為における知覚的統一
 因果推論から意識へ?
 知覚的統一
 統一、そしてグローバル神経ワークスペースの発火
 発火・行為推論・統一
 行為に基づく統一と間接性
 まとめ 統一と外界からの因果的隔離

第11章 壊れやすい自然の鏡
 真理の追跡か、誤差の最小化へのたんなる偏愛か?
 知覚は間接的なのか
 ベイズ的な身体
 壊れやすさ・内部性・状況性
 まとめ 不安と安心が入り混じる知覚関係?

第12章 予測する心の中へ
 情動と身体感覚
 内観は心的原因についての推論である
 相互作用する私秘的な心
 感覚の軌跡としての自己
 まとめ 確率論的で因果的な心

結びにかえて 予測における心

監訳者解説

参考文献
事項索引
人名索引

著者略歴

著:ヤコブ・ホーヴィ
ヤコブ・ホーヴィ(Jakob Hohwy) 
概念的研究と実験的研究の両方に携わる哲学者。研究分野は知覚、神経科学、精神疾患の心の哲学。また、哲学的なアイデアを実験的に検証するために、神経科学者や精神科医と共同研究を行っている。基礎的な哲学のトレーニングをデンマークで行い、スコットランドのセント・アンドルーズ大学で修士号、オーストラリア国立大学で博士号を取得。現在はメルボルンのモナシュ大学哲学科教授として、Philosophy and Cognition Lab を運営。
監:佐藤 亮司
佐藤 亮司(さとう りょうじ) 
1980年生まれ。モナシュ大学哲学科博士課程修了。博士(哲学・モナシュ大学)。名古屋外国語大学講師を経て、現在は東京都立大学大学教育センター准教授。おもな著書に『ワードマップ 心の哲学』(共著、新曜社、2017)、『シリーズ新・心の哲学2 意識篇』(共著、勁草書房、2014)がある。
他訳:太田 陽
太田 陽(おおた あきら) 
名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程満期退学。現在は名古屋大学大学院情報学研究科協力研究員。専門は認知科学の哲学、情動の理論。おもな論文に「基本情動説と心理構成主義」(Contemporary and Applied Philosophy 11, 23-57)がある。

ISBN:9784326154722
出版社:勁草書房
判型:4-6
ページ数:516ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年02月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MB