出版社を探す

バークリの『原理』を読む

「物質否定論」の論理と批判

著:冨田 恭彦

紙版

内容紹介

バークリの観念論とはどのようなものだったのか?『原理』(『人知原理論』)のテキストを丁寧に読み解き、わかりやすく解説する。

バークリは自らの立場を「物質否定論」と呼んで論陣を張り、それによって懐疑論と無神論の蔓延に対抗した。本書では『原理』のテキストを読みやすく独自に訳して丁寧に引用しながらその基本論理を明らかにし、先行するデカルトやロックの議論との関わりなど、歴史的な背景とともに詳細に解説。その思想の光と影を鮮明に描き出す。

目次

まえがき

第1章 「序論」を読む──『原理』の目的と、「抽象観念」説批判
 はじめに
 1 『原理』の目的
 2 副題と序文から
 3 「抽象観念」説批判
 4 主たるターゲットはロック
 5 バークリの理解
 6 抽象観念説批判
 7 バークリ自身の一般観念説
 8 ロックの「三角形の抽象観念」説批判
 9 さらなる説明
 10 抽象観念説の起源について
 11 観念を伴わない言語使用
 12 抽象観念説批判の総括

第2章 誤読を解く──「エッセ・イズ・ペルキピー」は物質否定論の核心部分ではない
 はじめに
 1 人間の知識の対象(Ⅰ)──感覚
 2 人間の知識の対象(Ⅱ)──感情や心の働き
 3 人間の知識の対象(Ⅲ)──広義における「心像」
 4 「思念」の問題
 5 観念を知覚する心の存在(第二節)
 6 「エッセ・イズ・ペルキピー」(第三節)
 7 家や山や川は、知覚されずには存在しえない(第四節)
 8 「抽象観念」否定論を用いて(第五節)
 9 世界は心の中に存在するのでなければ存在しえない(第六節)
 10 心以外に実体はない(第七節)
 11 知覚される世界はすべて心の中

第3章 物質否定論の核心部分──「似たもの原理」と「マスター・アーギュメント」
 はじめに
 1 物質否定へ──「似たもの原理」(第八節)
 2 デカルト的基盤
 3 一次性質と二次性質(第九節)
 4 ロックとバークリの語法の違い
 5 色が心の中にしかありえないのなら、形もまたそうである(第一○節)
 6 延長・運動・固性(第一一節)
 7 数(第一二節~第一三節)
 8 「相対性からの議論」の全面的適用とその限界(第一四節~第一五節)
 9 「物質的実体」の矛盾(第一六節~第一七節)
 10 「物質的実体」は知られず、また仮説的に想定する必要もない(第一八節~第二一節)
 11 「マスター・アーギュメント」(第二二節~第二四節)

第4章 神と自然法則──物質のない世界
 はじめに
 1 観念の受動性と不活性(第二五節)
 2 「心」が「原因」(第二六節)
 3 「心」とは?(第二七節~第二八節)
 4 神へ(第二九節)
 5 自然法則と神(第三○節)
 6 自然法則の効用(第三一節)
 7 なぜ私たちは「第二原因」を求めるのか(第三二節)
 8 「実在する物」と、「物の似像」としての狭義の「観念」(第三三節)

第5章 反論と答弁──一四の反論に答えて
 はじめに
 1 反論一(第三四節~第四○節)
 2 反論二(第四一節)
 3 反論三(第四二節~第四四節)
 4 反論四(第四五節~第四八節)
 5 反論五(第四九節)
 6 反論六(第五○節)
 7 反論七(第五一節~第五三節)
 8 反論八(第五四節~第五五節)
 9 反論九(第五六節~第五七節)
 10 反論一○(第五八節~第五九節)
 11 反論一一(第六○節~第六六節)
 12 反論一二(第六七節~第八一節)
 13 反論一三と反論一四──キリスト教からの反論(第八二節~第八四節)

第6章 物質否定論のメリット──懐疑論と無神論を退ける
 はじめに
 1 懐疑論の排除
 2 別の心の存在
 3 無神論を覆す
 4 抽象観念について
 5 自然科学における懐疑論の除去
 6 自然科学についての他のいくつかの考察
 7 数論について
 8 幾何学について
 9 「観念」についての一連の議論の総括
 10 精神について
 11 魂の不死性について
 12 心に関する更なる確認と指摘
 13 自分以外の心はどのようにして知られるか
 14 神について
 15 結び(第一五六節)

第7章 バークリの抽象観念説批判・再考──心像論的「観念」理解が無視したもの
 はじめに
 1 デカルトの「観念」の用法
 2 ロックvsバークリ──人間の一般抽象観念をめぐって
 3 概念としての抽象観念──一般名と一般観念
 4 三角形の抽象観念
 5 単純観念
 6 バークリの一般観念説の欠陥

第8章 物質否定論の歪みの構造──バークリ思想の影
 はじめに
 1 「似たもの原理」と粒子仮説
 2 観念は活動性を持たない
 3 推理による議論の廃棄
 4 『三つの対話』における外的なもの

終章 新たな創造的提案としての物質否定論──バークリ思想の光
 はじめに
 1 作用因的因果関係のない世界
 2 反普遍主義的実践の思想


あとがき
事項索引
人名索引

著者略歴

著:冨田 恭彦
冨田 恭彦(とみだ やすひこ) 
1952年香川県に生まれる。1981年京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)。ハーバード大学客員研究員、京都大学大学院人間・環境学研究科教授、同研究科長などを経て、現在:京都大学名誉教授、同志社大学嘱託講師。著書:『ロック哲学の隠された論理』(勁草書房)、『クワインと現代アメリカ哲学』(世界思想杜)、Locke, Berkeley, Kant (Olms)、『観念論の教室』(ちくま新書)、『カント批判』(勁草書房)、『デカルト入門講義』(ちくま学芸文庫)ほか。訳書:『ローティ論集』(勁草書房)ほか。

ISBN:9784326154609
出版社:勁草書房
判型:4-6
ページ数:320ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2019年06月
発売日:2019年06月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDHR