測度論からの数理統計学
著:綿森 葉子
著:田中 秀和
著:田中 潮
内容紹介
本書は,測度論,すなわち,現代の確率論の観点から,数理統計学の歴史的背景にも言及し数理統計学への入門とその基礎に対する理解を深めることをねらいとしている.本書の想定読者層は,測度論に基づく数理統計学を理解することを目的とする大学生,主に理学系大学生1, 2回生である.
本書は,2部構成:第Ⅰ部確率及び第Ⅱ部統計より成り,3 semestersの講義を想定し構成されている.第Ⅰ部では測度論に基づく確率論への入門とその基礎として,第1章では可測空間及び確率空間を,そしてこれらを基礎とし,第2章では確率変数を,第3章では確率分布を講じる.第Ⅰ部は,第Ⅱ部統計への布石でもある.第Ⅱ部では統計的推測(推測統計)への入門とその基礎として,第4章では,それへの入門として,点推定,区間推定,そして仮説検定を概説する.統計的推測(推測統計)の基礎として,第5章では点推定,特に,最尤法やFisher情報量,そして統計的推測における美しい結果のひとつとして知られているCramer-Raoによる情報不等式を講じる.第6章では区間推定,そして第7章では,正規分布及び離散型確率分布,特に,2項分布の下での仮説検定を講じる.なお,第Ⅱ部では,代表的な推定及び検定問題を焦点とし,概念や理論的背景に対する理解を重視している.第9章では,前章までの補遺として,定理等の証明において引用した集合論への入門,第3章に引き続く確率分布,そして尤度比検定を講じている.
本書をとおして,確率は,事象の長さ,面積,及び体積を抽象化した測度ゆえ,それに測度が強調されるとき,確率は確率測度として引用され,そして測度論及び数理統計学に関する概念等の解題,そしてそれらの分野において先駆けとなった,または貢献した人物の歴史的背景が言及されている.これらは本書のuniqueな点でもある.
目次
第I部確率
第1章 確率空間
1.1 事象と確率
1.2 条件付確率と事象の独立性
第2章 確率変数
2.1 確率変数
2.2 確率ベクトル
2.3 確率変数の独立性
2.4 統計量
2.5 期待値
第3章 確率分布
3.1 確率分布
3.2 積率母関数
3.3 基本的な確率分布
3.3.1 2項分布
3.3.2 ポアソン分布
3.3.3 一様分布
3.3.4 指数分布
3.3.5 正規分布
3.4 正規分布から派生する確率分布
3.4.1 カイ2乗分布
3.4.2 t分布
3.4.3 F分布
3.5 多変量確率分布
3.5.1 多項分布
3.5.2 2変量正規分布
3.6 一様分布と他の連続型確率分布との関係
3.7 漸近法則
第II部 統計
第4章 統計的推測
4.1 無作為標本と確率変数
4.2 点推定とは
4.3 区間推定とは
4.4 仮説検定とは
第5章 点推定
5.1 最尤法
5.2 モーメント法
5.3 推定量の性質
5.4 情報不等式
第6章 区間推定
6.1 正規分布の下での区間推定
6.1.1 1 標本問題
6.1.2 2 標本問題
6.2 2項分布の下での区間推定
6.2.1 1標本問題
6.2.2 2標本問題
第7章 正規分布の下での仮説検定
7.1 1標本問題
7.1.1 母平均に関する仮説検定(母分散が既知のとき)
7.1.2 母平均に関する仮説検定(母分散が未知のとき)
7.1.3 母分散に関する仮説検定
7.2 2標本問題
7.2.1 母平均の差に関する仮説検定(2つの母分散が既知のとき)
7.2.2 母平均の差に関する仮説検定(2つの母分散が未知で等しいとき)
7.2.3 母平均の差に関する仮説検定(2つの母分散が未知のとき)
7.2.4 母分散の比に関する仮説検定
7.3 2標本問題(対応があるデータのとき)
第8章 離散型確率分布の下での仮説検定
8.1 2項分布の下での仮説検定
8.1.1 1標本問題
8.1.2 2標本問題
8.2 適合度検定
8.3 独立性の検定
第9章補遺
9.1 集合
9.2 解析
9.3 その他の分布
9.3.1 幾何分布
9.3.2 負の2項分布
9.3.3 超幾何分布
9.3.4 ガンマ分布
9.3.5 ベータ分布
9.3.6 コーシー分布
9.4 尤度比検定
9.4.1 尤度比検定
9.4.2 母相関係数に関する仮説検定
9.4.3 尤度比検定統計量の漸近分布
ISBN:9784320114975
。出版社:共立出版
。判型:A5
。ページ数:240ページ
。定価:2500円(本体)
。発行年月日:2023年09月
。発売日:2023年09月28日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PBT。