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共立講座 数学の輝き 7

確率微分方程式

他編:新井 仁之
他編:小林 俊行
著:谷口 説男

紙版

内容紹介

 確率微分方程式は,1942年に伊藤清により創始され,拡散過程の構成,偏微分方程式理論への応用,微分幾何学への応用,数理物理学への応用など様々な分野で広く利用されている。
さらに,20世紀終盤には数理ファイナンス理論の発展の基礎として用いられた。また,1970年代半ばに始まったマリアバン解析と融合し,確率解析と呼ばれる研究分野の中核となっている。

 本書は,強い解と呼ばれるマリアバン解析との融合に不可欠な確率微分方程式の解に焦点を当て,その常微分方程式的なダイナミクスとしての性質を中心に解説を行う。
さらにそれらの応用として,最後の2章で,経路空間での無限次元解析への展開,数理ファイナンスへの応用について言及している。

 また本書は,測度論・確率論および他の解析学分野の諸結果に関して,少ない準備で確率微分方程式を学ぶことができるよう,なるべく他の文献を紐解くことなく読了できるように配慮した。
たとえば,確率微分方程式の解析において不可欠な条件付き期待値の存在について,L2空間論を利用した証明を与えた。また,ブラウン運動によって駆動される確率微分方程式だけを取り扱うことで,
確率積分の導入を容易にしている。初等確率論の知識があれば本書の内容がより深く理解できるが,大数の法則や中心極限定理を知らなくても本書を読み切ることは可能である。

目次

第1章 確率論の基本概念
1.1 確率空間
1.2 一様可積分
1.3 様々な収束
1.4 条件つき期待値

第2章 マルチンゲール
2.1 確率過程
2.2 マルチンゲール
2.3 停止時刻
2.4 2次変動過程

第3章 ブラウン運動
3.1 ガウス型確率変数
3.2 ブラウン運動
3.3 ブラウン運動の性質
3.4 マルコフ性

第4章 確率積分
4.1 確率積分
4.2 伊藤の公式
4.3 ブラウン運動への応用
4.4 表現定理
4.5 モーメント不等式

第5章 確率微分方程式(I)
5.1 確率微分方程式の解
5.2 指数写像による近似
5.3 微分同相写像
5.4 微分同相写像の応用

第6章 確率微分方程式(II)
6.1 弱い解 ―マルチンゲール問題
6.2 ギルサノフの定理
6.3 熱方程式
6.4 ディリクレ問題

第7章 経路空間での微積分学
7.1 変数変換の公式
7.2 部分積分の公式
 
第8章 ブラック-ショールズ・モデル
8.1 ブラック-ショールズ・モデル
8.2 裁定機会と同値局所マルチンゲール測度
8.3 価格付け

付録 
A.1 急減少関数
A.2 ディンキン族定理
A.3 離散時間マルチンゲール
A.4 グロンウォールの不等式
A.5 補題5.14の証明
A.6 コルモゴロフの連続性定理

参考文献/索引

ISBN:9784320112018
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:240ページ
定価:4000円(本体)
発行年月日:2016年09月
発売日:2016年09月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PB