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シリーズ・現象を解明する数学

だまし絵と線形代数

他編:三村 昌泰
著:杉原 厚吉

紙版

内容紹介

本シリーズは,具体的な現象から数理モデルを構築する過程や,そのモデルを通して現象を数学的に研究する方法をわかりやすく基礎から学ぶ場を提供することを目的としている。この本で扱う「だまし絵」とは,それを見た人が立体感をもつと同時にそんな立体はありえないと感じる絵のことである。「不可能立体の絵」とか「不可能図形」とかよばれることもある。本書は,このだまし絵を見たときに起こる錯覚という現象を,数理の力で探っていく。錯覚というと,人間の認識行動の中で生じる不思議な現象で,複雑でかつドロドロしたものという印象をもつのが普通ではないであろうか。この常識に反して,この本では,だまし絵に関する錯覚を,線形代数という数学の中でも最も基本的な道具を使って解き明かそうとする。線形変換と連立一次方程式で,錯覚という一見複雑な認識現象がどのように定式化でき,探究できるのかを味わっていただきたい。

目次

第1章 だまし絵立体―認識の危うさ
1.1 不可能図形錯視
1.2 頂点辞書による立体候補の列挙

第2章 立体復元方程式
2.1 ベクトルと行列
2.2 垂直投影図としての立体解釈
2.3 線形空間
2.4 線形写像
2.5 立体復元の自由度
2.6 三角錐台の線画
2.7 立体復元方程式の平面解

第3章 遠近不等式
3.1 ラベルが表す遠近関係
3.2 不等式制約の等号許容化
3.3 線形計画問題への帰着

第4章 視点不変性
4.1 中心投影と平行投影
4.2 同次座標
4.3 射影空間と射影変換
4.4 射影変換の自由度
4.5 立体復元可能性の視点不変性
4.6 中心投影に対する立体復元方程式

第5章 立体復元の脆弱性の克服
5.1 立体復元方程式の過剰な厳密さ
5.2 誤差に敏感な線画と鈍感な線画
5.3 性質5.1,5.2の証明のスケッチ
5.4 誤差に敏感な線画からの立体復元

第6章 錯視デザイン1―不可能立体
6.1 自由度の大きいだまし絵の描き方:遠近逆転の技
6.2 だまし絵の立体化
6.3 なぜだまされるのか
6.4 「無限階段」の立体化
6.5 面接触立体の自由度

第7章 錯視デザイン2―反重力すべり台
7.1 斜面をもった立体の復元
7.2 見えない部分での制約の緩和
7.3 反重力すべり台の例
7.4 柱に支えられない反重力すべり台

第8章 線画理解の数理モデル
8.1 線画から立体へ
8.2 直角を好む脳
8.3 さらに勉強したい人のために

関連図書
演習問題略解

ISBN:9784320110014
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:152ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2012年09月
発売日:2012年09月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PBF