認知科学の探究
子どもの概念発達と変化
素朴生物学をめぐって
著:稲垣 佳世子
著:波多野 誼余夫
内容紹介
就学前の幼児が、心理学や物理学の素朴理論と区別される生物学の素朴理論をもっており、それは擬人的で生気論的な特徴をもっているという主張が、著者らの豊富な研究の提示とともに展開されている。と同時に、生物学的現象の理解を題材として用いながら、概念発達の過程、条件、メカニズムといった理論的問題が吟味され、概念発達のモデルが提案されている。時宜を得た概念発達の書といえる。
目次
第1章 思考の中核領域としての素朴生物学
1.1 なぜ子どもの生物学的思考を研究する必要があるのか
1.2 素朴生物学の研究における理論的および実証的問題
1.3 素朴生物学の研究で検討し得る発達的問題
第2章 生物と無生物の区別
2.1 生物/無生物の区別
2.2 動物と植物の共通性の認識
2.3 自力で動くもの/自力で動かないものの区別
2.4 存在論的カテゴリについての幼児の理解
第3章 生物学的理解における類推としての擬人化
3.1 幼児における制約された擬人化
3.2 制約された擬人化の実験的証拠
3.3 人間との類推を媒介にした生物概念の獲得
3.4 類推としての擬人化による生物学的知識の拡張
3.5 生物学的理解における擬人化の肯定的側面
第4章 生物学的過程/属性と心理学的過程/属性の区別
4.1 幼児の身体現象の理解
4.2 幼児の「遺伝」の理解
4.3 幼児の病気と健康についての理解
4.4 要約
第5章 生気論的因果
5.1 非機械的,非意図的な因果
5.2 生物現象についての幼児の説明
5.3 幼児は生気論的説明を最も頻繁に選択する
5.4 生気論的因果は生物現象に対してのみ適用される
5.5 生気論の概念を洗練する
5.6 生気論と関連する諸概念
第6章 認知的制約と社会文化的制約のもとでの素朴生物学の構成
6.1 子どもはどのようにして素朴生物学を獲得するのか
6.2 どのような生得的制約が関与し,どのように働くのか
6.3 素朴生物学における認知的基盤と普遍性
6.4 社会文化的制約はどのように働くのか
6.5 素朴生物学における文化的多様性
6.6 素朴生物学出現のシナリオ
第7章 素朴生物学における概念変化
7.1 根本的な再構造化としての概念変化
7.2 素朴生物学の領域における概念変化
7.3 概念変化はどのように起こるのか
第8章 概念発達のよりよい理解をめざして
8.1 幼児が生物現象について知っていることは何か
8.2 素朴生物学論争のターゲットである四つの問題ついての結論
8.3 教育と保健への示唆
8.4 領域という概念と素朴理論という概念について
8.5 制約という概念について
8.6 残された問題