シリーズ・バイオサイエンスの新世紀 1
遺伝子の構造と機能
編:山本 雅之
内容紹介
近年のゲノムプロジェクトやDNAチップ法の発展により、特異的な制御のもとに発現してくる遺伝子群の特定が容易となっている。一方、遺伝子機能の研究の進展は非常に早く、発現制御機構の問題を中心に、多くの新知見が蓄積されはじめている。とりわけ、酵母を用いたタンパク質間相互作用検出系の標準化などの分子生物学的な解析法の発展と合わせて、遺伝子改変動物を用いた転写制御領域や転写因子機能の個体レベルでの解析が進んでいることが特筆される。遺伝子発現制御の研究はますます多くの研究者の関心を引きつける重要な領域となることは間違いない。このような時に、本分野において第一線で活躍している研究者に、それぞれの分野で到達点をまとめていただくのは、意義深いことと思われる。本書では、遺伝子発現の制御機構の研究を中心にして、ポストシークエンス時代の「機能ゲノム科学」(Functional Genomics)につながる研究を取り扱う。
目次
第1章 ゲノムの高次構造と転写制御
? 核高次構造
? 遺伝子制御とゲノム構造
第2章 ポストシークエンス時代の遺伝子研究
? ゲノム型プロジェクト研究時代の幕開け
? ゲノム型プロジェクト研究の性格
? ポストシークエンス時代のゲノム型プロジェクト
? ゲノム型プロジェクトの利用
? 遺伝子研究の将来
第3章 テロメアとゲノム維持機構
? テロメアとは
? 末端複製問題と細胞老化
? 細胞老化とテロメラーゼ
? 協調的結合,染色体安定性の慣性装置
第4章 転写仲介因子とヒストン修飾・クロマチン構造変化
? コアクティベーターCBPとHAT活性
? CBP以外のコアクティベーター
? CBPと形態形成
? コリプレッサー複合体
? コリプレッサーSki/Sno
? クロマチンリモデリング因子
? 核内構造および染色体構造を介した遺伝子発現制御
? エピジェネティックな遺伝子発現制御
第5章 転写開始・伸長反応の制御機構
? プロモーターの構造と基本転写因子
? RNAポリメラーゼと転写サイクル
? RNAポリメラーゼの構造変化
? 転写伸長因子のはたらき
? 基本転写因子のはたらきとその制御
? 再転写開始のためのスカフォールド形成
? CTDのリン酸化と開始・伸長反応の制御
第6章 減数分裂と遺伝子組換え
? 大腸菌recA遺伝子によるSOSシステムと接合
? 下等真核生物,酵母における組換え変異株と組換えモデル
? 哺乳動物における組換え修復と減数分裂
? 遺伝子相同組換えの応用
第7章 核内レセプターによる転写制御の分子メカニズム
? 核内レセプタースーパーファミリー
? 核内レセプターの機能
? 転写制御因子としての核内レセプター
? リガンド結合によるレセプターの構造変化と転写共役因子群との相互作用
? 核内レセプター転写共役因子複合体の機能
第8章 膜結合型転写因子のプロセシングと遺伝子発現調節機構
? フィードバック調節機構とホメオスタシス
? SREBPの構造
? 膜結合型転写因子SREBPの構造と転写活性化のメカニズム
? Site-1プロテアーゼ(S1P)
? SCAP(SREBP cleavage activating protein)
? Site-2プロテアーゼ(S2P)
? S1Pがステロール依存性にSREBPを切断する機構とは?
? regulated intramembrane proteolysis (Rip)と膜結合型転写因子
第9章 mRNAファクトリー
? mRNA ファクトリーの場所と数
? 1つのmRNA ファクトリーあたりのmRNA生産ユニット数
? mRNAファクトリーの可動性
? mRNAファクトリーにおけるRNAの加工-RNAプロセシング
? CTDはmRNAファクトリーの中枢としてはたらく
? mRNAファクトリー内の連携について
? 核外へのmRNA輸送および翻訳とmRNAファクトリー
? mRNAファクトリーの協調と制御
? mRNAファクトリーの生産高とQC
Yu博士による第10章へのイントロダクション
第10章 Transcriptional Control of Morphogenesis by Orphan Nuclear Receptors
第11章 幹細胞システムを支える遺伝子発現制御機構
? 幹細胞システム
? 胚性幹細胞の未分化性維持機構
? 造血幹細胞システムの維持機構
第12章 性の分化と遺伝子発現制御
? 生殖腺の性分化
? 生殖腺の分化を支える転写因子
? 生殖腺の分化を支える細胞増殖因子
? 生殖腺の分化を考えるうえでの今後の視点
第13章 熱ショックと遺伝子発現制御
? 熱ショック応答の基本的役割
? 熱ショック応答の分子機構
? 温熱耐性
? 個体発生
? 精子形成
? ウイルス感染
? がん関連遺伝子の機能発現
? 遺伝子変異と表現型
第14章 転写因子機能の個体レベルでの検証
? なぜ「検証」なのか?
? 生体内での転写因子作用の「多様性」と「精密さ」について
? 個体レベルでの転写因子機能の解析方法
ISBN:9784320055520
。出版社:共立出版
。判型:菊判
。ページ数:192ページ
。定価:3700円(本体)
。発行年月日:2001年12月
。発売日:2001年12月11日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSAK。