出版社を探す

超音波工学

著:荻 博次

紙版

内容紹介

 本書は固体内を伝播する超音波についての専門書である。工学系・理学系大学の学部・大学院生,および,企業技術者を対象とする超音波に関する入門書である。
 基礎編と応用編により構成しており,基礎編においては,弾性論の基礎から解説し,弾性論を習得していなくても,異方性固体内の超音波伝播挙動を理解することができるように工夫した。応力もひずみも二階のテンソル量であるが,結局は,6つの成分を扱えばよいことから,それらを抽出したマトリクス表記による議論を行っている。そして,テンソル表記は使用せずとも固体の異方性に対する正確な記述を省略することなく,弾性論の本質を理解することができるようにした。平面波の透過・反射・屈折挙動やガイド波についての解説においても,丁寧に支配方程式の導出を誘導しており,大学1年生の基礎的な数学をもって理解できるようにした。圧電現象にともなう超音波の挙動においては,基礎的な電磁気学の解説も加えており,本書のみで圧電現象の本質を理解できるように工夫している。
 応用編においては,他の専門書では見られない最近の計測法について紹介している。特に,国際的に重要な弾性定数計測法として定着している共鳴超音波スペクトロスコピー法(RUS法)や非接触超音波法の代表的手法である電磁超音波法(EMAT),水晶振動子センサー(QCM)について,その原理から応用に至るまで詳しく解説している専門書は稀有であり,本書の重要な特徴である。

目次

基礎編

1 弾性論の基礎
1.1 応力
1.2 ひずみテンソルと工学ひずみ
1.3 フックの法則と弾性定数
1.4 固体の弾性対称性

2 固体内の超音波の基礎
2.1 波動方程式と音速・位相
2.2 平面波の一般解と波数ベクトル
2.3 等方体内を伝播する超音波
2.4 異方性物質を伝播する超音波とクリストッフェル方程式
2.5 反射・屈折と音響インピーダンス
 2.5.1 SH波の反射・屈折
 2.5.2 縦波・SV波の反射・屈折
2.6 レーリー波
2.7 ガイド波
 2.7.1 位相速度と群速度
 2.7.2 SH板波
 2.7.3 ラム波
 2.7.4 棒縦波
 2.7.5 ねじり波

3 圧電型超音波センサー
3.1 はじめに
3.2 誘電体と電気力学の基礎
3.3 圧電現象の基礎式と圧電定数
3.4 圧電体内を伝播する超音波
 3.4.1 水晶のx3軸方向に伝播する平面波縦波
 3.4.2 水晶のx1軸方向に伝播する平面波縦波
 3.4.3 水晶のx1軸方向に伝播し,x2軸方向に振動する平面波横波

4 電磁超音波センサー
4.1 はじめに
4.2 導体内に生じる電磁場
4.3 ローレンツ力
4.4 磁化力
4.5 磁歪力
 4.5.1 x3軸方向に均一なバイアス磁場を加える場合
 4.5.2 x2軸方向に均一なバイアス磁場を加える場合
4.6 EMATの受信原理
4.7 EMATの具体例
 4.7.1 横波垂直入射用EMAT
 4.7.2 縦波・横波垂直入射用EMAT
 4.7.3 レーリー波・ラム波・斜角EMAT
 4.7.4 ワイヤー縦波用磁歪型EMAT
 4.7.5 表面SH波用EMAT
 4.7.6 軸対称SH波EMAT
 4.7.7 ねじり波用EMAT
 4.7.8 焦点型EMAT

5 レーザー超音波法
5.1 はじめに
5.2 超音波発生原理
5.3 光照射による超音波受信原理

6 超音波減衰
6.1 はじめに
6.2 回折減衰
6.3 散乱減衰
6.4 吸収減衰(内部摩擦)
 6.4.1 質点の減衰振動モデル
 6.4.2 内部摩擦
 6.4.3 結晶転位による吸収減衰
 6.4.4 熱活性因子による吸収減衰

 
応用編

7 共鳴超音波スペクトロスコピー(RUS)法と弾性定数測定
7.1 はじめに
7.2 共鳴周波数の測定
7.3 共鳴周波数の計算と弾性定数の逆計算
 7.3.1 リッツ法による固有値問題への帰着
 7.3.2 基底関数と振動対称性
 7.3.3 逆計算による弾性定数の決定
7.4 測定例
7.5 圧電体に対する適用

8 電磁超音波センサーによる非破壊材料評価
8.1 はじめに
8.2 電磁超音波共鳴法
 8.2.1 音弾性応力測定
 8.2.2 EMAR法とRUS法の融合
 8.2.3 転位と点欠陥の相互作用評価
 8.2.4 金属の疲労寿命評価
8.3 ガイド波による配管の非破壊検査
8.4 焦点型EMATによる非破壊検査

9 ピコ秒レーザー超音波法
9.1 はじめに
9.2 光学系と計測システム
 9.2.1 ポンプ・プローブ光学系
 9.2.2 非同期サンプリング光学系
9.3 パルスエコー法
9.4 共鳴法
9.5 ブリルアン振動法

10 水晶振動子センサー
10.1 はじめに
10.2 ATカット水晶と板厚せん断共鳴モード
10.3 水晶振動子バイオセンサー
 10.3.1 QCMバイオセンサーの原理
 10.3.2 Sauerbrey方程式
 10.3.3 反応速度論と周波数変化
 10.3.4 生体分子膜の粘弾性挙動と周波数応答
 10.3.5 QCMの無線化
 10.3.6 MEMS QCMセンサー
 10.3.7 センサー表面の修飾と増感法
10.4 水素ガスセンサー

参考文献
索  引

ISBN:9784320036147
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:208ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2021年06月
発売日:2021年06月07日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TBC