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基本法則から読み解く物理学最前線 4

大規模構造の宇宙論

宇宙に生まれた絶妙な多様性

監:須藤 彰三
監:岡 真
著:松原 隆彦

紙版

内容紹介

 なぜ宇宙は人々を惹きつけてやまないのか?
 宇宙とは何かという,この世の中でももっとも根源的な部類に属する問題に取り組む宇宙論の研究は,現在,目覚ましい発展を遂げているさなかにある。その原動力となっているのは,宇宙観測の飛躍的な拡大である。これにより,宇宙論は単なる思索の対象から定量的な実証科学へと変貌を遂げた。
 宇宙の大規模構造は,宇宙空間に広がる数億光年?数十億光年にもおよぶ大きな構造である。ビッグバンから始まる宇宙の歴史の中で,大規模構造がどのように形成されてきたかを探ることは,この宇宙そのものの起源を探ることに直結している。宇宙の大規模構造を用いた宇宙論の研究は,将来的にも最も期待される手法のひとつとされ,大規模な観測計画が世界中で立案されている。
 本書の目的は,宇宙の大規模構造を用いた宇宙論の研究を解説することにある。最初に,現代宇宙論の現状や,いま研究されている未解決問題を概観し,同時に宇宙論の研究に用いられる基礎的な物理の原理を解説する。そして,宇宙の大規模構造の進化を記述するための理論的基礎を解説する。さらに,大規模構造形成における理論的な最前線の紹介として,摂動論的手法に基づいた最近の理論的進展を解説する。
 前半の章では基礎的なレベルから始めて,後半の章では多少高度な話題についても触れている。宇宙論の現状や研究の雰囲気をある程度詳しく概観するのにも適している。

目次

第1章 はじめに
1.1 宇宙論の疑問
1.2 宇宙観の広がりと現代宇宙論
1.3 宇宙のダークな側面
1.4 単純性と真実性のはざま
1.5 精密宇宙論
1.6 宇宙の大規模構造
1.7 大規模構造と宇宙論

第2章 一様等方宇宙
2.1 宇宙原理とロバートソン・ウォーカー計量
2.2 赤方偏移と共動距離
2.3 一様等方宇宙のアインシュタイン方程式
2.4 宇宙論パラメータとフリードマン方程式
2.5 光度距離と角径距離
2.6 ダークエネルギー

第3章 密度ゆらぎの進化
3.1 宇宙の構造形成
3.2 流体方程式と密度ゆらぎ
3.3 線形近似とジーンズ不安定性
3.4 バリオン音響振動
3.5 密度ゆらぎの線形成長
3.6 非線形摂動論
3.7 球対称密度ゆらぎ

第4章 密度ゆらぎの統計と観測量
4.1 宇宙論における統計量の重要性
4.2 キュムラント展開定理
4.3 モーメントとキュムラントの母関数
4.4 多変数ガウス分布
4.5 密度ゆらぎのパワースペクトル
4.6 線形パワースペクトル
4.7 初期非ガウス性
4.8 天体のバイアス
4.9 赤方偏移空間変形
4.10 大規模構造とバリオン音響振動
4.11 ハローの形成と質量関数

第5章 大規模構造と非線形摂動論
5.1 構造形成における非線形性
5.2 標準摂動論による非線形パワースペクトル
5.3 摂動展開の図形的表現
5.4 摂動論におけるバイアス効果
5.5 摂動論における赤方偏移空間変形効果
5.6 ラグランジュ的摂動論

第6章 統合摂動論の基礎
6.1 ラグランジュ的摂動論と観測量
6.2 ラグランジュ描像バイアスと摂動論
6.3 ラグランジュ的摂動論における赤方偏移空間変形
6.4 多点伝播関数
6.5 変位ベクトルの頂点部分和
6.6 バイアスの頂点部分和とくり込まれたバイアス関数
6.7 統合摂動論における図形対応規則のまとめ

第7章 統合摂動論の応用
7.1 ハローに対するくり込まれたバイアス関数のモデル
7.2 1 ループ近似の準非線形パワースペクトル
7.3 質量のパワースペクトルと相関関数
7.4 ハローのパワースペクトルと相関関数
7.5 初期非ガウス性によるスケール依存バイアス

第8章 おわりに
8.1 宇宙の構造を観察する
8.2 次世代の大規模構造観測
8.3 未知の領域を探る
8.4 宇宙全体の理解を目指して

ISBN:9784320035249
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:194ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2014年12月
発売日:2014年12月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PG
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:TTD