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物質からの回折と結像

透過電子顕微鏡法の基礎

著:今野 豊彦

紙版

内容紹介

透過電子顕微鏡は現在の材料科学の発展に欠くことのできない一つの手段となっていますが、正しい使用法を習得するためには幾何光学や波動光学の知識が欠かせません。この本では光学の基礎を復習した後、最初に電子顕微鏡やX線回折法の光学系を説明しています。続いて電子からの散乱に始まり、単原子や分子、そしてアモルファスからの散乱現象を調べ、その延長上に結晶からの回折と結像を学ぶというアプローチをとっています。さらに動力学的効果や位相コントラスト法の基礎についても触れており、透過電子顕微鏡を自由に使いこなしたいと思っている方にとって、本書は大きな助けとなるでしょう。

目次

第0章 はじめに
0.1 波の干渉
0.2 結像
0.3 本書の概要
0.4 表記法について

第I部 光学の基礎と電子線・X線の発生
第1章 幾何光学の復習
1.1 薄レンズの公式と後焦点面
1.2 球面レンズと収差
1.3 ザイデルの5収差

第2章 電子線の幾何光学
2.1 磁界レンズ
2.2 電界レンズと補正コイル
2.3 照射系
2.4 電界放射型電子銃と照射系
2.5 波としての電子

第3章 X線の発生と集光円
3.1 X線の発生
3.2 X線の吸収
3.3 X線の検出
3.4 集光円と基本的な光学系

第4章 波動光学の基礎
4.1 フラウンホーファー回折
4.2 フレネル回折
4.3 波の干渉性
4.4 ホログラフィー

第II部 物質からの散乱と回折の基礎
第5章 原子からの散乱
5.1 散乱ベクトル
5.2 自由な電子からのX線の散乱
5.3 単原子からのX線の散乱
5.4 非干渉性散乱
5.5 原子の電子状態の変化を伴った散乱
5.6 電子線の散乱

第6章 原子の集まりからの回折
6.12 原子分子からの回折
6.23 原子分子からの回折
6.3 多原子分子からの回折:デバイの式
6.4 アモルファスからの回折

第7章 結晶の記述
7.1 結晶における原子配列
7.2 結晶構造
7.3 方向と面
7.4 ステレオ投影
7.5 逆格子

第8章 結晶からの回折
8.1 回折の幾何学
8.2 有限サイズの結晶からの散乱
8.3 複数の原子により基本構造が構成されることによる帰結
8.4 温度の効果

第III部 回折と結像の実際
第9章 X線回折法の実際
9.1 X線回折の配置と散乱ベクトル
9.2 回折線に及ぼす因子
9.3 積分強度

第10章 電子線の回折と結像の基礎
10.1 X線回折と電子線回折の類似点と相違点
10.2 電子線回折の幾何学:その1
10.3 電子顕微鏡における結像の基本
10.4 実際の観察例
10.5 電子線回折の幾何学:その2

第11章 動力学的理論入門
11.1 運動学的理論から動力学的理論へ:その現象論的構築
11.2 等厚縞とベンドコントゥアー
11.3 欠陥のある結晶からの回折と結像
11.4 ブロッホ波と分散面

第12章 位相コントラスト
12.1 位相コントラスト入門
12.2 位相コントラスト伝達関数
12.3 包絡関数
12.4 構造を持たない物体からのコントラストとその利用
12.5 結晶からの位相コントラスト

第13章 その他のトピックス
13.1 小角散乱
13.2 長範囲規則構造
13.3 準結晶
13.4 特性X線による組成分析
13.5 ウィークビーム法
13.6 HAADF-STEM法
13.7 電子線ホログラフィー
13.8 その場観察法

問題解答

付録A:ウルフネット
付録B:実習プラン
付録C:結晶構造の記述
付録D:フーリエ変換とその周辺
付録E:面間隔と面間角度
付録F:いくつかの回折パターン

参考文献
索引
ギリシャ文字の読み方

ISBN:9784320034266
出版社:共立出版
判型:B5
ページ数:336ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2003年12月
発売日:2003年12月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TJF