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TRONを創る

Making of TRON

著:坂村 健

紙版

内容紹介

TRON とは"The Realtime Operating System Nucleus"(実時間処理に適したオペレーティング・システムの核) の略である。しかし、TRON プロジェクトは単にOSを作るというだけのプロジェクトではなく、90年代(これから)の技術水準をにらみながら、VLSI、OS、コンピュータと人間との付き合い方のルールであるマンマシン・インタフェースまでも作り直すという壮大なプロジェクトである。
製品ができてから対応する社会デザインが行なわれるといった従来の科学技術の導入ステップではなく、TRON ではまず社会デザインを行なってからそれを製品の開発にフィードバックしようとしている。このような点や、個々の性能向上や技術進歩だけでは解決できない、従来の統一的に作られていなかったためのコンピュータの歪みに対して、コンピュータ産業全体としての調整を行なうことにより対処しようとしていること、さらに21世紀の社会を前提とし、コンピュータをコミュニケーションの道具ととらえて、多国語やマルチメディアなどの機能を持たせていること、など多くの新しい概念をTRON プロジェクトは含んでいる。
本書は主にエンジニアのためのTRON の入門書である。TRON プロジェクトがどのような技術的な問題点の把握を出発点としているのか、またコンピュータ周辺の技術をどのように見ているのか、といったことについて突っ込んだ記述をしている。

目次

第1章 TRONの誕生
ないからやろう
独自技術
使いやすさに重点
参考文献
第2章 デスクトップのデザイン
紛争
オペレーティング環境
TRONでは
素人はこわい
新しいモデル
第3章 ダイナミック・ドキュメント
はじめに仮身ありき
ペーパーレス
コンピュータは紙を目指す
紙を超えて
動的な文書
実身/仮身モデル
従来のモデルとの関係
システム・アプリケーション
データとアプリケーション
データ互換性
お回し
第4章 精神運動としてのRISC
騒動
バークレイ
ヨークタウンハイツ
スタンフォード
反対者たち
あって無いような定義
IBM RT/PC
HP Precision Architecture
MIPS社 R2000
孫悟空はお釈迦さまの手のなかに
素朴な疑問
第5章 アーキテクチャとTRONチップ
アーキテクチャのむずかしさ
64ビット
TRONはSISC
アーキテクチャと特許問題
命令フォーマット
ITRON,BTRONのサポート命令
ビットマップ命令
コンパイラ向きのアーキテクチャ
第6章 部品としてのコンピュータ
マイクロプロセッサと制御装置
リアルタイムOS
ITRON のアーキテクチャ
リアルタイムOSに対する要求
設計方針
ITRONまわりの話題
第7章 インターミッション
その1―ソフトウェアの値段
その2―UNIX に関して
その3―Macintosh について
第8章 MTRON
分類,ふたたび
コンピュータ化した社会
MTRON:Macro-TRON
コンピュータの社会
コンピュータによる社会
MTRONの実現
どのような便利なことがあるか
オープン・クエッション
第9章 TRONキーボードについて
キーボード一言居士
キーボードにこだわる
TRONにおける日本語入力方式
人間工学
TRONキーボード
TRONキーボード設計作業の実際
第10章 μBTRON
アーキテクチャ体系としての「~TRON」
コンピュータとは何か
μBTRON の必要性
専用機としてのμBTRON
三つのコミュニケーション
電子文房具としてのコンピュータ
ブングウェア
第11章 メインフレームへの挑戦
※-TRON
CTRON 誕生
CTRON の設計とITRON
なぜCTRON か
メインフレームかAI か
第12章 科学と文化をつなぐTRON
1986年を振り返って
ほめるのが先か,成果が先か
TRON赤十字論
科学か文化か
TRONのドグマ
社会とのつながり
名刺の科学面

ISBN:9784320023666
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:232ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:1987年01月
発売日:1987年01月01日