シニシズム
著:アンスガー・アレン
監:上野 正道
訳:彩本 磨生
内容紹介
人や物事,事がらを疑い,進歩を阻み,人間がもつあらゆる動機は基本的に利己的と考え,高尚なものや人間の美点を否定する「シニシズム」。そんなシニシズムには,世界を変えようとする試みは失敗する運命にあるという主義の現代のシニシズムと,人々の生活状況を変えることに献身的だった古代のシニシズムが存在します。この二つは対極にあり,古代と現代のシニシズムを比較することで,古代のシニシズムがどのように現代のシニシズムの形へと変化していったのか,「批判の哲学」といわれるシニシズムの変遷をたどっていきます。そしてそこから学ぶソーシャルメディア時代に必要な「真」の正義を明らかにしていきます。
目次
シリーズ序文
第1章 序章:逸脱に関する問題
三つの問題
第2章 あらゆる規律を拒否:古代シニシズムとFearless Speech(臆せず語る)
哲学としての立場
臆せず語る
窮乏化
肉体を重んじる教育者
第3章 貨幣の価値を貶める:常軌を逸した古代シニシズム
攻撃的な教え
貨幣の価値を変える
洗練性
排便行為による批判
恥,屈辱,笑い
手に負えない弟子たち
第4章 暴徒への懸念:古代と中世の理想化
理想化されたシニック派
エピクテトス
ルシアン
ユリアヌス
キリスト教の禁欲主義者と聖なる愚者
愚者シメオン
第5章 樽を空ける:近世の不満分子
ラブレー
近世の不満分子
第6章 太陽を解き放つ:啓発された哲学者と放蕩者
啓蒙主義のシニック派
ルソー
ディドロ
サド
第7章 終末の時代を生きる:現代シニックの多面性
シニシズムへの批判
極左勢力の不満
後期ソ連のシニシズム
スローターダイクの批判
反乱の可能性
ニーチェ,ニヒリズム,不完全なシニック派
スローターダイクと排泄行為の規範
第8章 最終章:シニシズムの必然性
用語集