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【シリーズ】日本文学の展望を拓く 2

絵画・イメージの回廊

監:小峯 和明
編著:出口 久徳

紙版

内容紹介

多様な研究分野が競い合うフィールドで、
各分野の解析法がどう重なり、ずれるのか、
読みと研究のあり方が問われている。

日本文学とその研究がこれまでに担ってきた領域、これから創造していく可能性をもつ領域とは何か。
人文学としての文学が人間社会に果たしうる役割に関して、
より豊かな議論を成り立たせるには、これからどうしていけばよいのか。
日本文学の窓の向こうに広がるものの総体を捉えようとするシリーズ、「日本文学の展望を拓く」第2巻。

【執筆者】鈴木 彰/出口久徳/小峯和明/キャロライン・ヒラサワ/塩川和広/吉橋さやか/西山美香/山本聡美/阿部龍一/吉原浩人/髙岸 輝/ヴェロニック・ベランジェ/山口眞琴/金 英珠/ケラー・キンブロー/伊藤信博/宇野瑞木/軍司直子/安原眞琴/琴 榮辰/グェン・ティ・ラン・アィン/楊 暁捷/川鶴進一

目次

緒言──本シリーズの趣意──(鈴木 彰)
総論──絵画・イメージの〈読み〉から拓かれる世界──(出口久徳)
1 絵画・イメージ研究の現在/2 物語をつむぎだす絵画(第1部) /3 社会をうつしだす絵画(第2部)/4 〈武〉の神話と物語(第3部)/5 絵画メディアの展開(第4部)/6 絵画・イメージ研究の今後に向けて

第1部 物語をつむぎだす絵画

1 絵巻・〈絵画物語〉論(小峯和明)
*絵巻、絵画物語、画中詞、図巻、中国絵巻
1 研究の動向と経緯/2 絵巻と図巻/3 絵をいかに読むか、イメージの翻訳へ/4 絵画と言葉/5 画中詞の世界/6 絵画を読むこと/7 東アジアへの視界・中国絵巻の世界──メトロポリタン美術館にて
2 光の救済──「光明真言功徳絵詞(絵巻)」の成立とその表現をめぐって──(キャロライン・ヒラサワ)
*光明真言、浄土思想、極楽往生、霊験譚、蘇生譚
1 はじめに/2 「光明真言絵巻」の成立と伝来/3 光明真言の文献/4 光明真言の絵画的表現/5 おわりに
3 百鬼夜行と食物への供養──「百鬼夜行絵巻」の魚介をめぐって──(塩川和広)
*百鬼夜行、魚介類、食、狂言、お伽草子
1 はじめに/2 魚介の妖怪の位置づけ/3 狂言「蚪蛤」の幽霊と食材への供養/4 怪異としての蛤のイメージ/5 おわりに
4 『福富草紙』の脱糞譚──『今昔物語集』巻二八に見るイメージの回廊──(吉橋さやか)
*福富草紙、今昔物語集、ヲコ、脱糞譚、お伽草子
1 はじめに──『福富草紙』の概要と問題の所在/2 推参し、打擲されるヲコ者の源流──『今昔物語集』の曾禰好忠/3 脱糞をめぐって/4 ヲコ者の姿/5 おわりに
【コラム】挿絵から捉える『徒然草』──第三二段、名月を「跡まで見る人」の描写を手がかりにして──(西山美香)
*徒然草、版本、挿絵、読者、徒然草絵巻

第2部 社会をうつしだす絵画

1 「病草紙」における説話の領分──男巫としての二形──(山本聡美)
*病草紙、正法念処経、男巫(おとこみこ/おかんなぎ)、二形(ふたなり)、梁塵秘抄
1 はじめに/2 「病草紙」の典拠/3 「二形」の詞と絵/4 二形をめぐる医学と経説/5 『御堂関白記』に登場する男巫/6 異化される男巫/7 おわりに
2 空海と「善女龍王」をめぐる伝承とその周辺(阿部龍一)
*善女(如)龍王、神泉苑、龍女、神泉苑、弘法大師信仰、真言
1 はじめに/2 龍王女としての善女/3 善女龍王女と空海撰「般若心経秘鍵」/4 「明」あるいは「明妃」と善女龍王女/5 結びにかえて──真言の力としての龍
3 文殊菩薩の化現──聖徳太子伝片岡山飢人譚変容の背景──(吉原浩人)
*文殊菩薩、化現、聖徳太子伝、片岡山飢人譚、達磨
1 はじめに/2 文殊菩薩の経典と『法華経』序品/3 文殊菩薩の化現としての行基/4 文殊会の創祀/5 円仁の五台山巡礼と文殊菩薩/6 大般若会に化来した文殊菩薩/7 文殊菩薩の化現としての片岡山飢人/8 なぜ飢人が文殊菩薩の化現とされたのか/9 結語
4 『看聞日記』にみる唐絵の鑑定と評価(髙岸 輝)
*看聞日記、唐絵、貞成親王、足利義教、鑑定
1 はじめに/2 玉阿と頓書記──和製の唐絵/3 永享六年の唐人入洛と唐物ブーム/4 永享九年の唐絵をめぐる騒動/5 永享十年の唐絵鑑定/6 おわりに
【コラム】フランス国立図書館写本部における日本の絵巻・絵入り写本の収集にまつわる小話(ヴェロニック・ベランジェ)
*奈良絵本、絵巻、フランス国立図書館、パリ万国博覧会、収集家
1 序/2 十九世紀の写本部のコレクション/3 収集家の時代/4 オーギュスト・ルスエフ・コレクションと一九一三年のフランス国立図書館への遺贈/5 二十世紀におけるコレクションの拡充

第3部 〈武〉の神話と物語

1 島津家「朝鮮虎狩図」屏風・絵巻の図像に関する覚書(山口眞琴)
*島津家、朝鮮虎狩図屏風、曾我物語図屏風、富士巻狩図、関ヶ原合戦図屏風
1 はじめに/2 『都城屏風』の全体的構成/3 三虎籠り説のゆくえ/4 「原作屏風」からの変容/5 『曾我物語図屏風』などとの関連/6 おわりに
【コラム】武家政権の神話『武家繁昌』(金 英珠)
*海幸山幸、武家繁昌、武家政権、神話、中世日本紀
2 根津美術館蔵「平家物語画帖」の享受者像──物語絵との〈対話〉を窺いつつ──(鈴木 彰)
*根津美術館蔵「平家物語画帖」、『平家物語』、『源平盛衰記』、享受者像、物語絵との〈対話〉
1 はじめに/2 白梅の枝と梶原景季──本文の外側への理解/3 『源平盛衰記』との交雑/4 物語絵との〈対話〉──享受者に求められたもの/5 おわりに
【コラム】猫の酒呑童子と『鼠乃大江山絵巻』(ケラー・キンブロー)
*英一蝶、パロディー、お伽草子、『酒呑童子』、『鼠の草子』
3 絵入り写本から屏風絵へ──小峯和明蔵『平家物語貼交屏風』をめぐって──(出口久徳)
*平家物語、メディア(媒体)、屛風絵、絵入り写本(奈良絵本)、絵入り版本
1 はじめに/2 本文をめぐって/3 絵をめぐって──場面の特定を中心に/4 屏風が作り出す物語世界

第4部 絵画メディアの展開

1 掲鉢図と水陸斎図について(伊藤信博)
*鬼子母神、仏陀、擬人化、宝誌、草木国土悉皆成仏
1 はじめに/2 ギメ美術館蔵「掲鉢図」に描かれる異形の者たち/3 個人蔵の「掲鉢図」と水陸斎について/4 水陸斎と水陸斎図について/5 おわりに
2 近世初期までの社寺建築空間における二十四孝図の展開──土佐神社本殿蟇股の彫刻を中心に──(宇野瑞木)
*二十四孝図、建築、五山文学、彫物(装飾彫刻)、長宗我部氏
1 社寺装飾彫刻における豊かな説話世界──文学から建築学への架橋/2 寛永年間までの社寺装飾彫刻としての二十四孝図の展開──蟇股を中心に/3 土佐神社本殿の蟇股の二十四孝図/4 最後に
3 赤間神宮の平家一門肖像について──像主・配置とその儀礼的意義──(軍司直子)
*赤間神宮、阿弥陀寺、安徳天皇、平家、肖像
1 はじめに/2 阿弥陀寺期の平家肖像/3 肖像の像主/4 肖像の配置/5 肖像の機能/6 おわりに
【コラム】詩は絵のごとく──プラハ国立美術館所蔵「扇の草子」の翻訳本刊行の意義──(安原眞琴)
*扇、奈良絵本、歌仙絵、遊び(またはなぞなぞ)、和歌
【コラム】鬼の「角」と人魚の「尾鰭」のイメージ(琴 榮辰)
*鬼、角、人魚、尾鰭、形
1 鬼の「角」/2 人魚の「尾鰭」
【コラム】肥前陶磁器に描かれた文学をモチーフとした絵柄(グェン・ティ・ラン・アィン)
*肥前磁器、陶磁器、文様、モチーフ、絵柄
1 肥前陶磁器について/2 肥前陶磁器に描かれた文学をモチーフとした文様
4 デジタル絵解きを探る──画像、音声、動画からのアプローチ──(楊暁捷)
*デジタル公開、学術利用、生活百景、朗読動画、まんが訳
1 デジタル画像公開──その出現と進化/2 「古典画像にみる生活百景」──ビジュアルを解く/3 「動画・あきみち」──目から耳へ/4 「劇画・絵師草紙」──まんが訳/5 研究者ネットワーク──制作と利用/6 研究成果の一環にするために──終わりに代えて
【コラム】『北野天神縁起』の教科書単元教材化について(川鶴進一)
*北野天神縁起、教科書、菅原道真(天神)、絵巻(絵画資料)、怨霊・御霊
1 古典教科書における『大鏡』道真関連話/2 『北野天神縁起』教科書単元教材化の先駆/3 『北野天神縁起』教科書単元教材化に求められるもの

あとがき(小峯和明)

全巻構成(付キーワード)
執筆者プロフィール
索引(人名/作品名・資料名)

著者略歴

監:小峯 和明
1947年生まれ。立教大学名誉教授、中国人民大学高端外国専家、早稲田大学客員上級研究員、放送大学客員教授。早稲田大学大学院修了。日本中世文学、東アジア比較説話専攻。物語、説話、絵巻、琉球文学、法会文学など。著作に『説話の森』(岩波現代文庫)、『説話の声』(新曜社)、『説話の言説』(森話社)、『今昔物語集の世界』(岩波ジュニア新書)、『野馬台詩の謎』(岩波書店)、『中世日本の予言書』(岩波新書)、『今昔物語集の形成と構造』『院政期文学論』『中世法会文芸論』(笠間書院)、『東洋文庫809 新羅殊異伝』(共編訳)、『東洋文庫875 海東高僧伝』(共編訳)など、編著に、『東アジアの仏伝文学』(勉誠出版)、『東アジアの女性と仏教と文学 アジア遊学207』(勉誠出版)、『日本文学史』(吉川弘文館)、『日本文学史―古代・中世編』(ミネルヴァ書房)、『東アジアの今昔物語集―翻訳・変成・予言』(勉誠出版)ほか多数。
編著:出口 久徳
立教新座中学校・高等学校教諭。日本中世文学。『図説 平家物語』(共著、河出書房新社、2004年)、『平家物語を知る事典』(共著、東京堂出版、2005年)、「寛文・延宝期、軍記物語版本の挿絵の表現をめぐって─延宝五年版『平家物語』における頼朝「対面」場面を読む─」(日下力監修・鈴木彰・三澤裕子編『いくさと物語の中世』汲古書院、2015年)。

ISBN:9784305708823
出版社:笠間書院
判型:A5
ページ数:370ページ
価格:9000円(本体)
発行年月日:2017年11月
発売日:2017年11月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ