出版社を探す

秀吉の虚像と実像

編著:堀 新
編著:井上 泰至
他著:湯浅 佳子

紙版

内容紹介

こうすれば秀吉を、もっと面白くつかまえられる!
歴史学と文学のコラボレーションにより、実像も虚像も追究する書。
どのようにして秀吉は「虚像」として語られ、今その「実像」が問われているのか。豊臣秀吉総体を、これからどう捉えていくか。初の試みにして、指針となる書。

実像と虚像、歴史学と文学、どちらも面白く、重要であることが本書により改めて説かれる。単なる秀吉の通史ではない、多様な見方と大きな見通しの確認・発見を目指す。

▼本書で明らかに!
○北政所の名は「ねい」でなく「ねね」と再確認!
○ひょうたんの馬験に隠された秀吉の出生の秘密とは?
○高松城の水攻めは実は沼の大きさに過ぎなかった!
○明からの「日本国王」への任命を一旦は受け入れていた!
○秀吉信仰と地震や靖国との意外なつながりとは?

【本書は、豊臣秀吉を素材に、歴史学が実像編、文学が虚像編を、それぞれの学問スタイルで執筆した。実像編は、主に古文書・古記録を使用して、現在何が、どこまで明らかになっているかを述べた。そのさい、必要に応じて典拠となる古文書・古記録を示している。これに対して虚像編は、一般に流布している歴史常識が、どのような軍記物語によっていかに形成されたのか、その虚像のあり方を浮き彫りにしている。この両者があわさることによって、「実像も虚像も追究する」ことができるのである。それは、豊臣秀吉という人物はもちろん、彼の生きた社会もより深く理解することである。それだけでなく、秀吉死後の時代の姿をも、豊臣秀吉という人物とその伝説を通じて掘り下げることでもある。】…序(堀新)より

執筆は、井上泰至[防衛大学校教授]/堀 新[共立女子大学教授]/湯浅佳子[東京学芸大学教授]/北川 央[大阪城天守閣館長]/太田浩司[長浜市長浜城歴史博物館館長]/柳沢昌紀[中京大学教授]/原田真澄[演劇博物館招聘研究員]/堀 智博[共立女子大学非常勤講師]/菊池庸介[福岡教育大学教授]/谷口 央[首都大学東京教授]/網野可苗[上智大学大学院]/遠藤珠紀[東京大学史料編纂所助教]/森 暁子[お茶の水女子大学研究員]/米谷 均[早稲田大学講師]/金子 拓[東京大学史料編纂所准教授]/丸井貴史[上智大学大学院]/谷 徹也[京都大学助教]/藤沢 毅[尾道市立大学教授]。(執筆順)。

目次

本書の読み方

○序
虚像編・編者より
秀吉の「夢」、語り手の「夢」[井上泰至]
実像編・編者より
実像と虚像、歴史学と文学、どちらも面白い[堀 新]

1 秀吉の生まれと容貌
実像編[堀 新]
生まれ―秀吉の生年月日/天文五年か天文六年か/容貌―木の下の猿関白/猿か禿鼠か/外国人の見た秀吉/むすびに
虚像編[湯浅佳子]
はじめに/出生をめぐる奇瑞/異常誕生譚と特異な容貌/放逸な少年時代/まとめ

2 秀吉の青年時代
実像編[北川 央]
太閤様のご先祖/秀吉の父/秀吉の兄弟姉妹/秀吉生家の生業/家を出た秀吉/秀吉と陰陽師集団
虚像編[湯浅佳子]
はじめに/忠義と信の人、秀吉―『太閤記』巻一より―/策謀家としての秀吉―『真書太閤記』より―/おわりに

3 浅井攻め
実像編[太田浩司]
小谷落城と秀吉/堀・樋口氏の誘降/姉川合戦と秀吉/志賀の陣と秀吉/横山城主として/野一色家の秀吉仕官/箕浦合戦と湖北一向一揆/元亀二年から三年の戦い/虎御前山城の城番へ
虚像編[柳沢昌紀]
理想の信長・秀吉・家康を造形―甫庵『信長記』/竹中重門の『豊鑑』と林家の『将軍家譜』/浅井氏三代の事蹟を記す軍書―『浅井三代記』/智将秀吉の誕生―『絵本太閤記』/万能なる智将へ―『真書太閤記』/『日本戦史・姉川役』と山路愛山の『豊太閤』

4 秀吉の出世
実像編[太田浩司]
秀吉の改姓と名乗りの変化/「木下」から「羽柴」への改姓/「筑前守」の官途を名乗る/播磨侵攻と黒田孝高の幽閉/「筑前守」から「藤吉郎」への後退/秀吉の城下町政策/再び「筑前守」へ/於次秀勝の独立と名乗り/その後の秀吉の叙位任官
虚像編[原田真澄]
秀吉と信長の出会い/墨俣一夜城/願望の鏡としての虚像

5 高松城水攻めと中国大返し
実像編[堀 智博]
はじめに/『高松城水攻め』に至るまでの過程―織田・毛利間戦争/『高松城水攻め』の実態/毛利勢との講和/『中国大返し』の実像/おわりに
虚像編[菊池庸介]
はじめに/『太閤真顕記』における高松城水攻め・中国大返しの構成/高松城水攻め/本能寺の変の発端としての秀吉の応援要請/毛利方との和睦/中国大返し

6 清須会議と天下簒奪
実像編[谷口 央]
清須会議と織田家家督/織田家を支える人々・その立場と運営方法/勝家と秀吉の対立/「織田体制」の改編―秀吉のクーデター―/織田家家督織田信雄と秀吉/秀吉・家康と関東諸氏/小牧長久手の戦い/北国攻めと信雄・家康/家康の臣従と全国統一
虚像編[菊池庸介]
はじめに/山崎の戦/清須会議/大徳寺焼香場―秀吉の天下簒奪

7 秀吉と女性
実像編[堀 智博]
はじめに/ねねの実像/『淀』の実像/秀吉死後のねねと淀/おわりに
虚像編[網野可苗]
悲劇のヒロインにはなれなかった女性/徳川史観の被害者/事件の黒幕には淀/豊臣贔屓≠淀擁護/実録の力/近代文学の中の淀/淀の悪女像を押し出したもの/選ばれた悪女

8 秀吉と天皇
実像編[遠藤珠紀]
聚楽第行幸/『聚楽行幸記』の作成/近世に語られた聚楽第行幸/行幸の行列/公家の家業の興隆/何故「聚楽第行幸」か?
虚像編[森 暁子]
乱世の忠臣/主君利用パターンの類似/つれないそぶり/古代の天皇権威の利用/世論操作のための「忠臣」アイコン

9 秀吉はなぜ関白になったのか
実像編[堀 新]
秀吉の関白任官/このエピソードの問題点/家康の源氏改姓・将軍任官は特殊例/秀吉の関白任官と徳川史観
虚像編[森 暁子]
関白任官の打算/ 「下剋上」の回避/「朝敵」排除の思惑 /「朝敵」の烙印への恨み①―島津氏/「朝敵」の烙印への恨み②―後北条氏/ 枷からの脱却/政敵の排除

10 文禄・慶長の役/壬辰戦争の原因
実像編[米谷 均]
豊臣秀吉の本心を読み解くこと/朝鮮出兵の原因・目的をめぐる諸学説/朝鮮出兵の動機と目的/秀吉が成りたかったもの
虚像編[井上泰至]
「徳川史観」「皇国史観」「帝国史観」/林家とその後―徳川史観の形成/絵入歴史読み物と国学・後期水戸学―皇国史観/帝国史観―幕末の危機意識の中で/ナショナリズムか愛すべき英雄か

11 秀次事件の真相
実像編[金子 拓]
はじめに/秀次事件解釈の新説/秀次事件の発端/秀次の高野山出奔/「公式見解」の形成と秀次切腹/「秀次事件」の成立/秀次の個性
虚像編[丸井貴史]
秀次事件を描いた作品/物語としての秀次事件/殺生関白秀次/秀次の妻妾たち/仏法僧―戦う秀次

12 豊臣政権の政務体制
実像編[谷 徹也]
「五大老」「五奉行」に関する通説/小瀬甫庵『太閤記』の記述/秀吉生前における奉行の役割/秀吉生前における大老の役割/政権内のその他の政務/秀次事件による政務体制の改変/「五大老」「五奉行」制の実態/乖離する名分と実態/そして関ヶ原の戦いへ
虚像編[藤沢 毅]
五大老・五奉行/太閤検地、刀狩りは描かれない/富裕の町人への処罰/武断派と文治派の対立

13 関ヶ原の戦いから大坂の陣へ
実像編[谷 徹也]
大坂の陣への道程/関ヶ原戦後の上方情勢/秀頼の立場/公儀のゆくえ/大坂の陣の始まり/豊臣方の民衆/関ヶ原の戦いからの道程
虚像編[井上泰至]
徳川寄りの軍書/関ヶ原モノの集大成―『関ヶ原軍記大成』/徳川贔屓の構図を引き継ぎ文芸化―『難波戦記』/大坂贔屓への転換―『厭蝕太平楽記』/徳川コードの消失とともに―『名将言行録』と『日本戦史関ヶ原役』/民間史学から歴史小説・近代歌舞伎へ―山路愛山・徳富蘇峰・高安月郊・司馬遼太郎

14 秀吉の神格化
実像編[北川 央]
神になった秀吉/秀吉の神格化と御霊信仰/織田信長の神格化をめぐって/秀吉神格化のモデル/豊国大明神の性格/新八幡と豊国大明神/豊国大明神の多様な信仰/大坂城への勧請/江戸から明治の豊国社
虚像編[井上泰至]
神社の荒廃とにわか震災神/対外的武威の神として―宣長の古道論の内面化と和歌/征韓論の神話的先例―幕末から明治

○コラム
北政所の実名[堀 新]
刀狩令[堀 新]
太閤検地[谷口 央]
「惣無事」と「惣無事令」[谷口 央]
破り捨てられた? 冊封文書[米谷 均]
二つの「キリシタン禁令」[堀 新]

○付録
秀吉関連作品目録
(軍記・軍書・実録・近代史論・歴史小説)[井上泰至編]

主要秀吉関連演劇作品一覧[原田真澄編]

あとがき[堀 新×井上泰至]
執筆者プロフィール

著者略歴

編著:堀 新
1961年生まれ。共立女子大学教授。著書に『信長公記を読む』(吉川弘文館、2009年)、『天下統一から鎖国へ 日本中世の歴史7』(吉川弘文館、2010年)、『織豊期王権論』(校倉書房、2011年)、共編著に『消された秀吉の真実 徳川史観を越えて』(共編、柏書房、2011年)、『偽りの秀吉像を打ち壊す』(共編、柏書房、2013年)、『岩波講座 日本歴史 第10巻 近世1』(共著、岩波書店、2014年)、『豊臣政権の正体』(共編、柏書房、2014年)などがある。
編著:井上 泰至
1961年生まれ。防衛大学校教授。著書に、『サムライの書斎 江戸武家文人列伝』(ぺりかん社、2007年)、『雨月物語の世界 上田秋成の怪異の正体』(角川選書、2009年)、『江戸の発禁本』(角川選書、2013年)、『近世刊行軍書論 教訓・娯楽・考証』(笠間書院、2014年)、共編著に、『江戸文学41 軍記・軍書』(責任編集、ぺりかん社、2009年)、『秀吉の対外戦争 変容する語りとイメージ 前近代日朝の言説空間』(共著、笠間書院、2011年)、『江戸の文学史と思想史』(共編、ぺりかん社、2011年)、『近世日本の歴史叙述と対外意識』(編著、勉誠出版、2016年)などがある。
他著:湯浅 佳子
東京学芸大学教授。著書に『天空の文学史 太陽・月・星』(共著、三弥井書店)、論文に「『鎌倉北条九代記」の歴史叙述の方法」(『文学』11巻3号)、「『鎌倉管領九代記』の歴史叙述の方法」(『近世文藝』98号)などがある。

ISBN:9784305708144
出版社:笠間書院
判型:A5
ページ数:408ページ
価格:2800円(本体)
発行年月日:2016年06月
発売日:2016年06月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNB