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上田秋成研究事典

編:秋成研究会
他著:飯倉 洋一
他著:糸川 武志

紙版

内容紹介

秋成がわかる。文学研究の方法がわかる。かつてない事典の登場!

泉鏡花、芥川龍之介、谷崎潤一郎、三島由紀夫、村上春樹―。名だたる作家たちが傑作だと評価した『雨月物語』の秘密を知るにはどうしたらいいのか。

本書は、文人秋成の業績を総体として捉え、あらゆる角度から分析するために編まれた事典であり、また同時に、文学作品を読んで「なんとなく面白かった」という地点から、その作品の魅力や豊かさを自分のことばで最大限引き出していく、「研究」に向かうための入門書です。

『雨月物語』『春雨物語』の両代表作は、重要な論点とそれを示した論文を整理・紹介しました。そこでは、ふつうの読み方を超える、新しい「読み」の可能性に挑戦した論文をたくさん取り上げています。それらの要点をわかりやすく紹介しつつ、『雨月物語』の各作品が、どのように読まれてきたかがわかるようにしました。また『雨月物語』については、作品分析のためのマニュアルと、分析の実例を挙げ、作品を読んだ後、それを参照しつつ自分なりの分析に取りかかれるよう配慮しています。

また秋成の浮世草子・和歌・俳諧・随筆・和文・学問的著作、そして秋成自身の生涯についても、今日明らかになっている情報のレベルを呈示し、「研究」のための一助としました。その他、『雨月物語』の典拠である中国の小説の原文・書き下し文・語釈・日本語訳を掲載するほか、上田秋成を研究していくうえで知っておきたい主要文献のガイドも収録しています。

上田秋成を知るための手引であると同時に、文学「研究の手引」でもある、かつてない、文学を今まで以上に楽しむヒントに満ちた事典です。

●本書の特色

1.作品分析のためのマニュアルと、分析の実例を掲載。
2.『雨月物語』の典拠である中国の小説を原文・訳で紹介。
3.知っておきたい主要文献のガイドを収録。
4.略年譜と、「学び」のための充実のコラムを掲載。
5.第一線の研究者による渾身の書き下ろし。現在明らかになっている情報を公開。

【…この事典は、その悲しくて美しい世界を、あらゆる角度から考えるナビゲーターとなっている。『雨月物語』『春雨物語』の両代表作については、重要な論点とそれを示した論文を整理・紹介している。特に『雨月物語』については、その冷静・周到な作品作りに迫るマニュアルと、分析の実例を挙げているから、作品を読んだ後すぐにこれを参照しつつ自分なりの分析に取り掛かれるよう配慮してある。
 秋成の文業はそれに留まらない。本書では、浮世草子・和歌・俳諧・随筆・和文・学問的著作、そして秋成自身の生涯についても、今日明らかになっている情報のレベルが呈示されている。これらの文人秋成の業績を総体として捉え、時代の流れと当時の課題を念頭に入れて考えるとき、なぜ江戸のこの時期に秋成が…

目次

『雨月物語』とその作者を知るために

序 古典を愛する若者にむけて―『雨月物語』のすすめ

1『雨月物語』
 『雨月物語』作品別研究史について
 作品分析のためのマニュアル
 研究史概説
白峯/菊花の約/浅茅が宿/夢応の鯉魚/仏法僧/吉備津の釜/蛇性の婬/青頭巾/貧福論
2『春雨物語』
 研究史概説
血かたびら/天津処女/海賊/二世の縁/目ひとつの神/死首の咲顔/捨石丸/宮木が塚/歌のほまれ/樊噲/その他の作品(「妖尼公」「月の前」「剣の舞」「楠公雨夜かたり」「背振翁伝」(「茶神の物語」))

コラム 卒業論文を書くまえに

3 浮世草子作品
4 『書初機嫌海』(かきぞめきげんかい)
5 『癇癖談』(くせものがたり)
6 和歌・俳諧・狂歌
7 『胆大小心録』(たんだいしょうしんろく)

コラム 社会人のための「学問のすすめ」
―あるいは、「趣味・学問」と書けるようになるためのマニュアル

8 秋成の和文
9 秋成の伝記
10 秋成の学問
11 秋成と近代作家

コラム 現代語訳と研究―上田秋成から考える

12 典拠作品の世界―原文・書き下し文・語釈・日本語訳
 1 愛卿伝(あいけいでん)『剪燈新話句解』【「浅茅が宿」の典拠】
 2 牡丹燈記(ぼたんとうき)『剪燈新話句解』【「吉備津の釜」の典拠】
 3 魚服記(ぎょふくき) 付 薛録事魚服証仙(せつろくじぎょふくしてせんをしょうす)(抄)【「夢応の鯉魚」の典拠】
 4 范巨卿鶏黍死生交(はんきょけいけいしょしせいのまじわり)【「菊花の約」の典拠】
 5 白娘子永鎮雷峰塔(はくじょうしながくらいほうとうにしずめらる)【「蛇性の婬」の典拠】

付録 文献ガイド
 1 単行研究書
 2 関連単行書
 3 科学研究費による報告書
 4 雑誌特集号
 5 参考文献目録・索引・研究書復刻
 6 本文・注釈・影印など
 7 外国語に翻訳された秋成

付録 上田秋成略年譜

著者略歴

編:秋成研究会
秋成研究会は、2010年10月から活動を開始しました。首都圏在住の上田秋成研究者による研究会です。原則として、毎月第二火曜日(最近は水曜日)の夕方6時より8時過ぎまで。場所は、当初は上智大学で、現在は駒澤大学で開催しています(2015年12月現在)。参加者に関しては、本書の執筆者・編集協力者を参照してください。会の当初から現在に至るまで、一貫して『春雨物語』を読んでいます。諸稿本をつきあわせながら関係資料を参看しつつ読んでいくということを原則としていますので、ときには数行の記述について議論しただけで終わることがあります。初期の活動記録は、
http://kigoshi.sophia.labos.ac/ja/page/p2.html
で見ることができます。現在は「目ひとつの神」を読んでおり、夏休み・春休み期間には、首都圏以外の研究者も参加できるよう、日時・時間をかえて開催しております。
秋成研究会の活動に関心のある方は、下記までご連絡ください。
akinarikenkyuukai@gmail.com
他著:飯倉 洋一
大阪大学教授。著書に『上田秋成―絆としての文芸』(大阪大学出版会)、『秋成考』(翰林書房)、共編著に『秋成文学の生成』(森話社)など。
他著:糸川 武志
英明高等学校教諭。論文に「「宮木が塚」の和歌と伝承」(『都大論究』第38号)、「「我いつはり」と「まさし事」のあいだ ― 「死首の咲顔」と「ますらを物語」」(『秋成文学の生成』森話社)、「『椿説弓張月』の鶴」(『鳥獣虫魚の文学史 2 鳥の巻』三弥井書店)など。

ISBN:9784305707901
出版社:笠間書院
判型:菊判
ページ数:430ページ
価格:2800円(本体)
発行年月日:2016年01月
発売日:2016年01月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ