日本文学からの批評理論
亡霊・想起・記憶
編:高木 信
編:木村 朗子
編:安藤 徹
内容紹介
「日本文学」というフィールドで「理論の共同体」を生成する。
理論する知的社交の〈場〉として、「日本文学」を開放、開拓し、領域横断的に思考を問い直すような発信=発進力を持った理論的言説を紡ぎ出す、野心的な試み。
エストニア・タリン大学で開催された国際会議(二〇一〇年九月)の成果をふまえ、国内外の論客が書きおろし。
――世界には多様な言語世界があって、文学がある。それらの文学を考えるのに、ヨーロッパのキリスト教文化を中心とした、特定の地域に特化して作りあげられた理論では足りないことは明らかだ。「日本文学からの批評理論」とは、理論へのオルターナティヴを開いていこうとするものである。すなわち、旧来の理論を問い、再構築しようとするものである。それは従来中心となっている言語(または地域・文化・社会・政治・宗教など)以外の、複数の場から興っていくはずの、新しい理論の地平への期待である。――「おわりに」より
目次
はじめに―"理論の共同体"への招待●安藤 徹
Ⅰ 〈亡霊〉としての文法
風景和文の意匠―『源氏物語』の橋と鳥の形象●松井健児
身体は普遍か?―『源氏物語』における衣を読む●ラジャシュリー・パンディ
懐かしさの解剖学(アナトミー)●レイン・ラウド
文法的詩学―時間、推量、形容●藤井貞和
Ⅱ 想起される〈過去〉
霊/例(れい)としての『源氏物語』―『乳母のふみ』からの"問い"●安藤 徹
説話と自己語り―『発心集』における目撃される死●アラリ・アリク
形見―中世後期の仏教文学における記憶、喪失と救済●ハンク・グラスマン
海を渉る女―描かれた神功皇后●木村朗子
Ⅲ 記憶に取り憑く〈理論〉
喪われる領土―日本アヴァンギャルド雑誌『亞』の場合●ダリン・テネフ
「鼠三部作」から『ノルウェイの森』へ―一九七〇年の死者の記憶をめぐる村上春樹テキストの変容●深津謙一郎
アンネ・フランクを救う―小川洋子とメランコリック少女●イヴ・ジマーマン
亡霊の時間(とき)/亡霊の和歌(ウタ)、あるいはインターテクスチュアリティのなかの『義経記』―未来の〈記憶〉/未来から来訪する〈亡霊〉●高木 信
おわりに●木村朗子
文献リスト/索引/執筆者紹介/英文目次