古典的思考
著:前田 雅之
内容紹介
実証主義=無思想に堕した国文学は、現実を凝視できるか。
天皇論、「古典の思想と言説」にまつわる諸問題をはじめ、古典を通して時事問題を論ずる、全54編の評論集。
雑誌『発言者』『表現者』に連載し続けてきた論考に、3月11日以後に書き下ろした「破局の後で」を加えて一書にしたものである。
「近代的思考・論理の批判・相対化を通して、古典的思考・価値を復興し、歴史・伝統と結びついた日本を再発見して、近現代のアポリアをどこかで抜け出たいことに尽きる。」「国文学が近代=文明開化の論理を超えて自立するとき、初めて日本と出会え、古典の再生が成し遂げられるだろう。それが日本におけるあるべき近代の創始になることは敢えて贅言を要しない。」以上、本書より。
目次
はじめに
Ⅰ 国文学は「天皇システム」と対峙できるか
01●公と玉躰--天皇システムと日本の公共性(一)--/02●「公」・「公私」・「ひとり」--天皇システムと日本の公共性(二)--/03●反転・併存・融合の不動点--天皇システムと日本の公共性(三)--
Ⅱ 近現代を睥睨する古典の思想
04●古典と近代批判--国文学の忘れ物--/05●古典と和歌--和歌的共同体としての日本--/06●古典の条件--規範・権威・注釈 --/07●抜書と要約--論理における前近代と近代--/08●記憶の再定義--古典的知と創作の源泉--/09●記憶と連想--因果論を超えるもの --/10●記憶と「古典」--「共同の記憶」の拠り所--/11●かくも長き「戦後」/12●「戦後」の完成もしくは末路/13●記憶と美--非現存する風景--/14●古典を読むということ--異代の友との対話--/15●歴史をめぐる考察(1)--保守主義と歴史学の迫から--/16●歴史をめぐる考察(2)--表象・叙述・物語--/17●歴史をめぐる考察(3)--歴史とナショナリズム--/18●記憶・古典・言説/19●記憶の中国/20● 「問答」と「対話」
Ⅲ 古典学徒のやぶにらみ
21●日本近代・アジア主義・イスラーム/22●ポピュリズムの勝利と戦後の完成/23●「国語」の起源と復興/24●資本主義の発生と主従関係/25●新たな天皇神学は可能か/26●〈絶対〉が消滅した世界と「核」/27●「核家族」の解体と「戦後」の終焉/28●「利」をもたらす政治は超えられるか/29●可視と不可視の〈もろこし〉/30●「型」の喪失と国民教育の再建/31●ナショナリズムという物語とアイロニカルな共感--韓国のシンポジウムに参加して--/32●カオス化する世界と日本の覚悟/33●所有・自由・共同性/34●保守主義の構え--歴史・アイロニー・意志--/35●近代の地政学的枠組みとアメリカ/36●目立たず真ん中へんで踊るひとたち/37●共同の記憶なきテレビ報道/38●世界史・アジア主義・日本/39●天皇システムと革命の物語/40●「信用」を破砕する「権威」なき世界/41●敵をもたずに国民を束ねること/42●新たな農村共同体への夢想/43●はたらくとは自己を「公」に組み入れること/44●破局後に隆起してくるものは新たなおぞましさか/45●じたばたしないで古典を読め/46●ダッラの町から日本を見れば/47●そりが合わない環境と人間/48●滅ぼすに値する美をもつ天皇に戻るには/49●〈日本〉を立ち上げるために--くらしの復権 --/50●古典・国民・日本--国民たることを忘れた日本人のために--/51●ベストもワーストも少数にしかありえない/52●このまま出て行ってもらったら--沖縄・古典・日米関係--/53●北京の今昔と周作人/54●破局の後で
初出一覧
あとがき