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西鶴と浮世草子研究 第四号

特集[性愛]

編:諏訪 春雄
編:広嶋 進
編:染谷 智幸

紙版

内容紹介

西鶴と浮世草子の〈性愛〉を、東アジアの多様な世界のなかで追究する書。
引きこもってしまった現代の「性」を直視するために、江戸時代の多様な性愛の姿を炙り出す。

付録として、溝口健二監督「西鶴一代女」を全編収録〈データ収録=パソコンで御覧下さい〉。
初公開資料として、編者の染谷智幸氏が発見した朝鮮の淫談稗説(好色説話)『紀伊齋常談』影印と日本語訳を収録。

目次

■付録

DVD収録■付録1
溝口健二◎監督「西鶴一代女」を全編収録
(MPEG4ビデオファイルで収録。パソコンでご覧頂けます)

DVD収録■付録2
朝鮮の淫談稗説(好色説話)『紀伊齋常談』影印と日本語訳

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■[座談会]
東アジアの遊女・遊廓から西鶴の性愛を考え直す
—日本の遊女[ゆうじょ]・中国の妓女[ぎじょ]・朝鮮の妓生[キーセン]

○出席者(主要テーマ発言順)
大木 康(東京大学教授)
鄭 炳説(韓国ソウル大学教授)
田中優子(法政大学教授)
諏訪春雄(学習院大学名誉教授)
染谷智幸(茨城キリスト教大学教授)
韓国語通訳 山田恭子(近畿大学法学部専任講師)

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[内容細目]

1…中国から考える
中国の妓女、明末清初の世界
大木康
妓女の歴史/中国に「廓」は存在したか/明と清の断絶/妓女の移動と家族的経営

2…朝鮮から考える
朝鮮の妓生、官妓の世界
鄭炳説

朝鮮の妓生(翻訳・山田恭子)
私は妓生だ/妓生の身分と社会的位相/薬房妓生とは何か/「羅閤」と呼ばれた妓生/「詩妓」としての妓生
妓生の矛盾/朝鮮と中国の教坊/ソウルにおける妓生の集住/

3…東アジアから考える
東アジアの遊廓学は可能か
田中優子
吉原、創造された異空間/遊女はどうして芸能者なのか/遊女物語の増殖と東アジア/東アジアにおける廓言葉と養生/朝鮮の廓言葉、ピョンアンホ/洒落本・細見の特殊性/芸能の範囲をめぐって/遊廓への郷愁とその系譜

4…日本から考える
遊女とセイクレッド、胎内くぐり、
歌舞伎小屋、片閇…
諏訪春雄
セイクレッドな遊女/供犠、教示、生殖/芝居小屋と遊廓/遊廓と胎内くぐり/太夫道中と片閇/遊廓の宗教性、神話性/妓生とムーダン/

5…西鶴から考える
東アジアの遊女・遊廓論から、
さらに多様な問題へ
染谷智幸
妓生でない妓生という理想/遊女の「本意」をめぐって/「浮世の事を外にな」す世之介/中国の妓女・遊廓と『金瓶梅』

■コラム
同時通訳者から
山田恭子(近畿大学法学部専任講師)

■中国・朝鮮・日本における遊女・遊廓関連年表 作成●染谷智幸
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■論文
好色男同士の絆—ジェンダーから照射する世之介像●大石あずさ
境界上の独身者—『西鶴諸国ばなし』巻四の七「鯉のちらし紋」考—●空井伸一
我らは男色の道を分て—〈演出〉で読む『男色大鑑』—●畑中千晶
『西鶴置土産』—「色道のうはもり」の行く末—●早川由美
団水の好色物—『色道大皷』巻三の一・五の一を例に—●水谷隆之

■エッセイ
セクシイ古文! 番外編
女と男、どっちがイイ?●田中貴子

■エッセイ
「床入り雑記」 江戸時代前期を中心に●渡辺憲司

■エッセイ
西鶴と「好色本」のビビンチョ●中嶋隆

■付録2解説
朝鮮の淫談稗説(好色説話)『紀伊齋常談』
○解説
○『紀伊齋常談』現代日本語訳(抄)
1.水綿が良いか、陽物が良いか
2.陰毛も髭も凍りつく世界
3.夫婦、寝室で相まみえず
4.食欲旺盛な父、娘の嫁ぎ先で赤っ恥をかく
5.蟹、陰門と唇を挟む
6.娘の父、革職人の妻を犯して復讐す
7.李退渓と南溟■の性愛意識
8.小心なソンビ、後ろの孔と小科にとどまる
9.女陰が抜け落ちると、どうなるか
10.ソンビの男色流荒療治

■付録1解説
西鶴と溝口健二 ふたつの『一代女』をめぐって●南陽子

■論文
「八百屋お七」は実在したのか●矢野公和
八文字屋本から京伝合巻へ●矢田真依子

■ 研究史を知る
『好色一代女』●鈴木千恵子
『懐硯』●有働裕
『西鶴置土産』●森耕一
『新可笑記』●平林香織
『浮世栄花一代男』●濱口順一
錦文流●杉本和寛
多田南嶺●神谷勝広

■ブックレビュー
長谷あゆす『西鶴名残の友』研究 西鶴の構想力●竹下義人 
早川由美『西鶴考究』●加藤裕一

■文献目録
西鶴と浮世草子 最新文献ガイド[平成15〜19年版]補遺●佐伯孝弘・菊池庸介・
水谷隆之編
西鶴・浮世草子研究文献目録(稿)[平成元〜平成7年]●篠原進編

■新刊紹介
江戸吉原叢刊全七巻[八木書店]刊行中
〈再録〉『西鶴置土産』の山本の小主水について—『江戸吉原叢刊』刊行にあ
たって—●水谷隆之

次号予告
執筆者一覧
編集後記

著者略歴

編:諏訪 春雄
1934年生。学習院大学名誉教授。東京大学大学院国文科博士課程単位取得退学。博士(文学)。
民族文化の会代表、前国際浮世絵学会理事長。著書に『霊魂の文化誌 神・妖怪・幽霊・鬼の日中比較研究』(勉誠出版)、『曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島』(角川ソフィア文庫)、『鶴屋南北』(ミネルヴァ書房)、『歌舞伎の源流』(吉川弘文館)、『大地女性太陽 三語で解く日本人論』(勉誠出版)などがある。
編:広嶋 進
1952年生。神奈川大学教授。早稲田大学大学院単位取得満期退学。博士(文学)。
著書に『西鶴新解—色恋と武道の世界』(ぺりかん社)、『西鶴探究—町人物の世界』(ぺりかん社)、『大晦日を笑う『世間胸算用』—西鶴を楽しむ〈4〉』(清文堂出版)、編著に『井原西鶴集〈4〉(新編日本古典文学全集)』(小学館)などがある。
編:染谷 智幸
1957年生。茨城キリスト教大学教授。上智大学大学院博士後期課程中退。著書に『西鶴小説論—対照的構造と「東アジア」への視界』(翰林書房)、編著・共著に『韓国の古典小説』(ぺりかん社)、『江戸文学の冒険』(翰林書房)、『文化交流学を拓く』(世界思想社)などがある。

ISBN:9784305602046
出版社:笠間書院
判型:A5
ページ数:336ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2010年11月
発売日:2010年12月03日