高橋新太郎セレクション 1
近代日本文学の周圏
著:高橋 新太郎
解説:高橋 博史
内容紹介
没後10年。
変遷する時代の研究動向とは距離をとりながら、独自の存在感を持った方法論を打ち立てた、独創的な国文学者、高橋新太郎の仕事を、今、振り返る。全3冊のシリーズ。
第1冊目『近代日本文学の周圏』は、生前の著者の構想をもとにした論攷を収めた。
文学者たちは、戦中・戦後の困難のなかを、いかに生きたのか。近代日本文学の時代精神を、資料自身に語らせるように、鮮やかに炙り出していく様は、圧巻である。「氏は〈「戦争責任」についての問題〉は、自身の〈年来の課題〉であるといい、また〈表現者としての多くの文学者が、〈己の戦争〉を原点とせずに戦後を出発させた〉ことを難ずる。―高橋博史氏」。解説・高橋博史[白百合女子大学教授]。【推薦】紅野謙介・安藤宏・十重田裕一。
【高橋新太郎氏は、近代文学研究の表通りを闊歩するというタイプの研究者ではなかった。変遷する時代の研究動向とは距離をとりながら、独自の、存在感をもった研究を進めてこられた。それを支えていたのは氏自身の方法であった。いうまでもなく文学研究においてどのような方法に拠るかは、避けて通ることのできない問であり、変遷する時代の研究動向とは、様々な方法の交代劇に他ならない。そうした中で高橋氏は、氏自らの方法を―氏が好んだ言い方を借りればおのがじしの方法を探り、作り出していった。】......本書「解説」(高橋博史)より
目次
凡例
鴎外と「乃木神話」の周辺
五条秀麿--「かのやうに」(森鴎外)管見
「末期の眼」から「落花流水」まで
川端康成の〈方法〉断章
チャタレイ裁判の抵抗
「蒼き狼」論争の意味するもの--史の制約と詩的真実
学習院・『文藝文化』--三島由紀夫・啐啄の機縁
「金閣寺」(三島由紀夫)1
「金閣寺」2
文学者の戦争責任論ノート
転向の軌跡--三好十郎ノート
時代の煩悶--藤村操「巖頭之感」の周辺
不断着の抵抗・生方敏郎『古人今人』
『文学報国』の時代--しのぎと抗い
『近代への架橋』--長谷川泉とその時代
*
総力戦体制下の文学者--社団法人「日本文学報国会」の位相
馴化と統制--装置としての「文芸懇話会」
解説・高橋博史
著者の覚え書き
編集部より