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ATTENTION SPAN(アテンション・スパン)

デジタル時代の「集中力」の科学

著:グロリア・マーク
訳:依田卓巳

紙版

内容紹介

池 谷 裕 二 氏(脳研究者・東京大学薬学部教授)推 薦 !
「 IT時代を迎え、集中力のツボは刷新された。
本書はデジタル技術との交流を前提に、現代版「集中力」を 科学的に検証する。
今こそ読むべき本だ。」

私たちの集中時間(アテンション・スパン)は、日ごとに短くなっている──。スマホやPCなど、デジタル機器が人間の生活に与える影響を長年考察してきた心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説をもとに解き明かす、デジタル時代の「集中力」の科学。絶え間ないチャットやメール、ウェブ会議、SNSなど、さまざまな刺激に満ちたデジタル環境下で、集中力を統制し、自分に合ったスタイルで「幸福度」も「生産性」も高める方法とは? 

デジタル機器なしに、もはや私たちの仕事や生活は考えられません。インターネットは私たちの考え方を大きく変え、Xやインスタグラム、TikTokなどのSNSは新しい交流と娯楽を生み、遠く離れた相手と瞬時に繋がれるZoomなどのウェブ会議ツールは、新しい働き方をもたらしました。

しかしその一方で、膨大なメッセージ、絶え間なく届くポップアップ通知、人間の本能に訴えかけるSNSのアルゴリズムによって、「集中力が長続きしない」「デバイスを使ったマルチタスクでミスが増えた」「不安や不眠などの症状を感じやすくなった」などの悩みを訴える人が世界的に増えています。

本書は、デジタル機器が人間の生活に与える影響を長年調査・研究してきた心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説をもとに、本来私たちの力となるはずのデジタル機器が、なぜ注意散漫やストレスの原因となってしまうのか、その理由をエビデンスとともに解き明かした、集中力の科学の決定版です。

「マルチタスクはなぜ生産性も幸福度も下げるのか?」「個人のパーソナリティは集中力にどう影響する?」「SNSやTikTok動画、ターゲティング広告はなぜ注意散漫を増幅させるのか?」などの問いに答えるほか、さまざまな刺激に満ちたデジタル環境下で集中力を維持する「主体性」の育み方、注意散漫にならないための「認知リソース」の高め方など、現代科学の最新成果をもとに、デバイスと共存しながら、自分に合ったスタイルで、「生産性」も「幸福度」も叶える方法を示します。注意散漫・集中力低下に悩む方に役立つヒントが満載の1冊です。

目次

はじめに 「集中」の神話を打ち破る
デバイスのせいで集中できない/デジタル世界のパラドックス/デジタル社会と私たちの集中/注意散漫に関する現代の神話/「生産性」から「幸福」へ

■■Ⅰ 集 中 の 構 造 ■■
第1章 限りある認知リソース
私たちの集中と行動/集中のコントロールは難しい/集中のネットワーク/認知リソースの量は限られている/持続的集中と「動的集中」

第2章 集中をめぐる争い
集中をコントロールできないとき/目標達成まで集中を持続させるには?/集中の罠/集中の対象の選び方

第3章 集中のタイプを理解する
集中をめぐる言葉/とらえにくい「フロー」/集中状態の理論的枠組み/1日の集中状態の移り変わり/集中のリズムを知る/人はなぜ注意散漫になるのか/集中度を高めるのは「フロー」より「リズム」

第4章 マルチタスクの真実
マルチタスクとは何か/マルチタスクの2つの視点/「生きた実験室」を作る/集中時間はますます短くなっている/47秒間の集中/仕事モードと休憩モード/デスクワークと集中時間の短縮

第5章 絶え間ない中断がもたらすもの
中断したタスクは記憶に残りやすい/「自己中断」と外部からの中断/中断に伴うコスト/1日77回のメールチェック/メールゾンビから逃げる/「女性のほうが集中度が高い」は本当か

■■Ⅱ 集 中 を 中 断 さ せ る さ ま ざ ま な 力■■
第6章 インターネットの普及と集中力の低下
インターネットの黎明期/楽しい連想/インターネットによる「マインドワンダリング」/プライミングだらけのインターネット/インターネットと私たちの集中

第7章 AIとアルゴリズムの影響
注意散漫に値段がつくとき/「いいね」でわかる性格特性/アルゴリズムは本能に訴える/TikTokの罠/Instagramから逃れられない/アルゴリズムの強み

第8章 デジタルな交流の世界 
集中は社会的影響を受けやすい/内集団に向けられる注意/ウェブ上の自己イメージを管理する/社会関係資本の経済/社会的な力による注意散漫/オンラインの人間関係

第9章 パーソナリティは自制にどう影響するか
パーソナリティとインターネット利用の関係/神経症傾向と衝動/誠実な人はメールに過剰反応してしまう/パーソナリティは注意散漫にどう影響するか/睡眠不足の弊害/自制とパーソナリティの関係を知る

第10章 デバイスは幸福感を下げるのか
単純な活動の心地よさ/感情と集中の意外な関係/仕事と幸福感/「努力する集中」と「努力しない集中」/Facebookとリアルの交流、幸福度が高いのは?/マルチタスクはネガティブな感情を生む

第11章 メディアによる集中の条件づけ
1日10時間のスクリーンタイム/カット割りの進化と集中力/ジャンプカットとYouTube/ノンリニア編集とカオス編集/コマーシャルも短く/デジタル世界の「スナック文化」/メディアが集中に与える効果

■■Ⅲ 集 中 、リ ズ ム 、バ ラ ン ス を 整 え る■■
第12章 自由意志、主体性、集中
意識的な行動、自動的な反応、自由意志/デジタル行動の「主体性」を育むには?/奇妙で複雑な相互関係/「主体性」の力で前進する

第13章 「主体性」の力で生活リズムを整える
「主体性」で集中力をコントロールする/デジタル行動のメタ認識/デジタルツールに触れる前に/デジタルな行動を自制する/内省と修正行動/バランスのとれた1日を計画する

第14章 デジタル時代の集中力を育む 
デジタルデトックスの先へ/AIと私たちの集中/心理的バランスを高める技術設計/現実世界に集中する/職場環境の未来と私たちの集中/自分に合ったデジタル世界を創造する

『はじめに』
 デジタル化は私たちの考え方や働き方のみならず、集中力のあり方も根本的に変えた。私たちが日常的に使うテクノロジー、文化的・社会的環境、個々人のパーソナリティなど、さまざまな要素が複雑に絡み合い、集中しにくい状況を作り出すようになったいま、幸せを保ち、生産的で、充実した生活を送るための新しい理論的な枠組みが必要だ。
これまで集中力と生産性を確実に高めると言われてきた方法は、実は間違った前提に立っていて効果がない。集中はスイッチのオンとオフのような二元論ではなく、もっと多様な形態であるととらえるべきだ。
本書では、1日を通して集中力の維持に必要な認知リソースをバランスよく維持する上で、集中のそれぞれのタイプに(「没入」や「慣れ」だけでなく、「退屈」にさえ)個別の意味と目的があることを説明する。没入だけが最適な状態ではなく、精神的なリソースを使いすぎない、ほかのタイプと組み合わせることで、最も効果が上がるのだ。

長年、私の研究には、多くの同僚や学生、研究者から賛同の声が寄せられてきた。本書を読めば、おそらくみなさんも集中力に関する自分の認識に必要な科学的根拠を得ることができるだろう。
本書は、なぜデジタル世界に生きる私たちは集中するのがこれほど難しいのか、なぜ簡単に気が散ってほかのことをしてしまうのか、そしてデバイスを使うときに、なぜすぐに集中先が移り変わるのか、といった問題を理解してもらうために書いた。
 本当の変化は意識することから始まる。集中をコントロールする「主体性」を育てるには、私たちがなぜいまのように行動するのかを理解し、軌道修正する必要がある。
健康的な精神のバランスを実現したいなら、まず、認知リソースを補充しつづけることだ。その副産物として生産性が向上する。そして私たちは、デジタル化が加速する世界でも、バランスをとることができると信じている。

著者略歴

著:グロリア・マーク
心理学者・情報科学者。カリフォルニア大学アーバイン校総長特任教授。
コロンビア大学で心理学の博士号取得後、約20年にわたりデジタルメディアが人間の生活に与える影響を研究する。主な研究テーマは、マルチタスク、集中の中断、デジタル機器の使用にともなう感情など。これまでに200以上の論文を発表し、テクノロジーに関する優れた学術研究に与えられる「グーグル・リサーチ・アワード」を2度受賞。本書が初の著書となる。
訳:依田卓巳
翻訳家。
主な訳書に『使える脳の鍛え方』(ピーター・ブラウン他著)、『チャヴ』(オーウェン・ジョーンズ著)、『AGELESS(エイジレス)』(アンドリュー・スティール著、共訳)、『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケープルズ著、共訳)など。

ISBN:9784296117338
出版社:日経BP 日本経済新聞出版
判型:4-6
ページ数:364ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP