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電力崩壊

戦略なき国家のエネルギー敗戦

著:竹内純子

紙版

内容紹介

第44回エネルギーフォーラム賞(大賞)

停電ニッポン、なぜ、こうなった?

エネルギー逼迫を受けた緊急出版!!複雑に絡み合った原発問題はいかに解きほぐせるのか?気鋭の論客がエネルギーを切り口に、日本を前向きに軌道修正する道を探る意欲作。

原子力政策の不透明性や電力自由化、急速な脱炭素化政策など、国の根幹をなすべきエネルギー問題は「失策」の歴史にまみれている。平易な語り口で知られる著者が、電力政策の歴史、原発や再エネが抱える様々な課題をわかりやすく解説し、具体的な解決策を提示する。

目次

プロローグ 揺らぎ始めた“当たり前”

第1章 停電前夜
2022・3・22 節電要請は突然に
「予備率」とは何か、なぜ必要なのか
電気事業にかかわるプレーヤーたち
需給ひっ迫への対処方法
それでも足りない
停電を防いだ立役者
計画停電とは
停電はなぜ起きる?
3・22があぶりだしたこと
 地震と異常気象による「不幸な事象」だったのか
 安定電源の長期戦線離脱|原子力不稼働の常態化
 再エネ導入が足りなかったのか
 なぜ火力発電所の休廃止が進んだのか

第2章 第三次オイルショックの衝撃
パリ協定がもたらした熱狂から7年
石油の時代は終わったのか
石油価格がマイナスの怪
減少を続けていた化石燃料投資
欧州“エネルギー危機”の足音
ロシアが非難した欧州の“ご都合主義”
制裁は、言うは易し勇まし、行うは難し
「我々はエネルギー政策において歴史的な間違いを犯した」
制裁はロシアに痛みを与えたのか
天然ガスの備蓄を急げ――冬におびえる欧州
ドイツ凋落の足音
急いては事を仕損じる――エネルギー転換は長期戦

第3章 電力自由化は誰を幸せにしたのか
自由化の成果はあったのか
 検証1 電気料金は安くなったのか
 検証2 安定供給は確保されているのか
 検証3 需要家の選択肢や事業者の事業機会は拡大したのか
 全面自由化に進んだ「本当の理由」
日本の電力自由化でおろそかにされた議論
 独特の事情への配慮とリスク管理
 電気料金を安くするためにすべきだったこと
 耳障りな話こそ消費者に
知っておきたい自由化の基礎
 1 公益事業の自由化とは
 2 発送電分離は何のため?
 3 電気の売り切れにどう備える?
電力自由化はなぜ難しいのか
善意で設備は維持できない
電力安定供給に必要な3つの価値
 c o l u m n 1 「電力とハンバーガーを同列に語るな」
カーボン・プライスの必要性――自由化の下で脱炭素を実現することは可能か
自由化の再設計が必要だ

第4章 再生可能エネルギーは主役になれるのか
日本は再エネ後進国なのか
「おぼろげながら浮かんできた」温暖化目標
世界で進む再エネのコスト低下と行きづまる日本
 c o l u m n 2 「クリーンクッキング」を知っていますか
再エネ普及政策の“失敗”
 失敗1 既に再エネに対する国民負担が過大
 失敗2 地域との共生ができなかった
 失敗3 産業が育成できなかった
再エネ導入支援策の改革と企業による再エネ活用
導入量によって異なる太陽光発電の“価値”
再エネの電気をうまく使うために――蓄電池か、送電網か、水素か
 1 蓄電池の可能性
 2 送電網の整備
 3 水素への期待
太陽光発電を立て直すには
洋上風力は拡大するのか
日本の洋上風力産業に勝機はあるか

第5章 原子力事業のしんどさは誰がどう担うのか
日本はなぜ原子力発電の導入を決めたのか
「国策民営」の謎
原子力発電を利用してきた理由
3つの不透明性
 1 政治的不透明性
 2 規制の不透明性
 3 司法による不透明性
「世界は脱原発の潮流」は本当か
原子力政策の“転換”は進むのか
安全規制のあるべき姿とは?
 c o l u m n 3 脱原発するための道
緊急の再稼働は可能か
原子力発電所は何歳まで働けるのか
事故の責任は誰がどう取るのか
「トイレなきマンション」問題は解決できるか
民間事業者がバックエンド事業を担えるのか
原子力発電事業の立て直しを考える

第6章 起死回生――エネルギー敗戦を回避するには
強み弱みの把握を正確に
 日本が向き合うべき制約条件とは?
 強みの省エネ技術をあらゆる領域へ
エネルギー再転換に向けた官民の役割分担
 安定供給に必要な国の関与強化
 自由化の修正を急げ──新しい官民リスク分担を
 原子力の活用で国富の流出を止める
ベンチャー・スピリットをエネルギー産業に
 新しいプレーヤーを呼び込め
 c o l u m n 4 原始、電気事業はベンチャーだった
エネルギー変革ではなく社会変革を目指せ――Energy with X
 エネルギー産業がかかわる日本の社会課題
 Utility3.0の世界とは
日本の勝ち筋を見出す――生まれつつある産業群
 農業×エネルギー
 分散型資源のマネージ&コントロール
 オフグリッド・インフラの提供

エピローグ 敗戦を繰り返さないために

著者略歴

著:竹内純子
国際環境経済研究所 理事/U3イノベーションズLLC共同/東北大学特任教授(客員)
東京大学大学院工学系研究科にて博士(工学)。
慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、東京電力入社。主に環境部門を経験後、2012年より独立の研究者として地球温暖化対策とエネルギー政策の研究・提言に携わる。国連気候変動枠組み条約交渉にも長年参加し、内閣府規制改革推進会議ほか政府委員も多数務める。2018年にはU3イノベーションズLLCを創業し、新事業の創造による環境・エネルギー問題解決を目指す。著書に『誤解だらけの電力問題』(ウエッジ)、『原発は”安全”かーーたった一人の福島事故報告書』(小学館)、共著に『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0 へのゲームチェンジ』『エネルギー産業2030への戦略』(いずれも日本経済新聞出版)など多数。

ISBN:9784296115020
出版社:日経BP 日本経済新聞出版
判型:4-6
ページ数:304ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2022年12月
発売日:2022年12月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KN
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:THR