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アパレルに未来はある

著:川島蓉子

紙版

内容紹介

変革者たちは「アパレル愛」をいかにビジネスに変えたのか

 コロナ禍で苦境に立たされているアパレル業界の課題を明らかにしつつ、常識にとらわれないアプローチで活路を見いだしている「変革者」たちの熱量の原点を探り、未来へのヒントを見いだそうとしているのが、本書『アパレルに未来はある』だ。
 前編ではアパレルの未来を左右する"6つの壁"として「サイクル」「セール」「ブランド」「店」「情報」「デザイン」を挙げ、その壁を乗り越えるためのヒントを提示する。「長きにわたって定番商品を展開したり、1カ月ごとに数点の新商品を投下したりする」「適正量を正価で売り切るために知恵を絞る」「ブランドが持っている志を伝える」「リアル店舗をブランドコミュニティーの場と考える」といった具合だ。
 しかし、こういった変革を、生産から販売までのプロセスに多くの企業が関わっているアパレル業界で行うのは容易ではない。そこで、未来へのヒントを得るべく、後編では業界の変革者たちを徹底取材し、その軌跡を詳細に紹介している。
 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をコンセプトとする「マザーハウス」代表兼チーフデザイナーの山口絵理子氏、ファッション業界紙「WWDJAPAN」編集長の村上要氏、東京五輪開会式で「君が代」を歌ったMISIAの衣装を作った「トモ コイズミ」デザイナーの小泉智貴氏、「ジェラート ピケ」「スナイデル」など人気ブランドを展開するマッシュホールディングス社長の近藤広幸氏、「ルイ・ヴィトン」「ロエベ」といった世界のトップブランドもオーダーするテキスタイルデザイナーの梶原加奈子氏、ユニークなZINE(個人が自主製作する冊子)を作り続けるビームスのサーフ&スケートブランド「SSZ」ディレクターの加藤忠幸氏、産地とのコラボレーションを仕掛ける「ビームス ジャパン」ディレクターの鈴木修司氏、大丸松坂屋百貨店のファッションサブスクリプション(定額課金)サービス「アナザーアドレス」事業責任者の田端竜也氏という8人だ。
 各人のエピソードが非常に個性的で興味深いのだが、共通しているのは「アパレル愛」にあふれていること。その熱量をもって、さまざまな障壁がある中で、いかに自分のやりたいことを実現するかを必死に考え、愚直に実践してきたのだ。

目次

<前編 アパレル業界の未来を左右する「6つの壁」>

【「サイクル」の壁】
季節に合わせた年2回のコレクション発表
業界全体として回してきた半年サイクル
推し進められてきたサイクルの短縮化
業界一律のサイクルが見直しを迫られている
ファッションにサイクルはいらないのか
サイクルは多様化する方向へ

【「セール」の壁】
アパレル業界特有のセールの仕組み
前倒しになっていったセール
セール専用の商品作りをやめる
消費者は安ければうれしいわけではない
セールありきのビジネスを見直す

【「ブランド」の壁】
由緒正しく高級であることを保証するマーク
年代に飛躍的に広がったファッションブランド
日本のアパレルはなぜラグジュアリーブランドをつくれなかったか
独自性のある世界観を築けているか
ブランドが持っている志を伝える
コミュニティーをつくって共感を得る

【 「店」の壁】
出遅れてしまったEC強化策
かつて百貨店には定休日があった
ライフスタイルを店で提案する
ファッションをチェーン展開で全国に行き渡らせる
多店舗化の波の中での同質化
リアルの接客の持つ意味は

【「情報」の壁】
トレンドは情報会社がつくる
限られた人だけが見られるコレクションの存在
クローズドな情報が価値を持たなくなった理由
デジタルによって情報がオープンでフラットに
円のようなコミュニティーが共存する時代へ

【「デザイン」の壁】
「人並み」を手に入れるためのファッション
デザインの多様化が始まる
「差異化消費」から「編集型消費」へ
消費者は多様化を求め、送り手の企業は同質化へ

<後編 アパレルに未来はある! ファッション業界の変革者たち>

【前へならえができなかった  「マザーハウス」ものづくりの原点】
山口絵理子  「マザーハウス」代表兼チーフデザイナー 

途上国から世界に通用するブランドをつくる
幼少期に感じた「人と違ってはいけないの?」
不良グループから柔道一直線、そして教育へ
バングラデシュで教育からものづくりへ
誇りを持って作ったものには命がある
「マザーハウス」流SPAは"喜びの循環"をつくること
「かわいいから買う」を大切に
なぜやりたいことをやりきらないのか

【異色のファッション紙編集長は元事件記者 奇抜な格好で周囲あ然】
村上要  「WWDJAPAN」編集長

「言っているアナタが『気持ちいい』はダメ」
職場はファッションショーじゃない
ニューヨークでファッションジャーナリズムを学ぶ
門外漢だからこそやれることがある
なぜ服が売れなくなったのか
ヒエラルキーで欲望をかき立てていた時代の終わり
"1%から見るファッション"を認め合うことが大事
記者のパーソナルな視点でエモーションが匂い立つ
創造性は評価と拮抗しながら成長していくもの
ファッションが拡張していく

【五輪開会式のMISIAの衣装を作った 「トモ コイズミ」の独自性】
小泉智貴  「トモ コイズミ」デザイナー

強烈な「個」が見えるファッション
新しいことをやろうとすると孤独になると自覚していた
ニューヨークコレクションにデビュー
"ふわふわドレス"は問屋街で見つけた「ハギレ」から
クリエイティビティーのある衣装デザインを
"他にないもの"を究極まで突き詰めるのがファッション
自分の持つ力を社会に還元していきたい

【コロナ禍でコスメブランドを立ち上げた「覚悟」】
近藤広幸 マッシュホールディングス社長

抜本的なBXを敢行する
BXの構成要素は「ヒト、モノ、カネ、DX」
"挑戦=攻め"なくして"止血=守り"はない
変化しなければ生き残れない時代が強制的に訪れた
「ものを作って人に届けたい」がファッション業界に向かわせた
最初は鳴かず飛ばずだった「スナイデル」
ルームウエアの価値を上げた「ジェラート ピケ」
ファッションは「世の中が良い方向に転換するトップバッター」

【「ルイ・ヴィトン」「ロエベ」もオーダーする ニッポンの布デザイナー】
梶原加奈子 テキスタイルデザイナー

作り手と使い手の懸け橋になる
フェリーの住み込みアルバイトでお金をため、美大に
日本の職人の生命線を広げていく役割
今の暮らしの中で使われていくように技を生かす
変化することに向き合う姿勢を持ってもらう
オンワードと組んで立ち上げた新プロジェクト
"布のある暮らしを体験してもらう場"をつくる

【"100人いれば100のビームス" 自分の「好き」を追求していく】
加藤忠幸 ビームス バイヤー/「SSZ」ディレクター
鈴木修司  「ビームス ジャパン」ディレクター

届けたい人に伝わる力を持っているZINE
服を作った背景を語り尽くしたい
社長に直談判の壁
大量でないものの意味を問うてみたい
ビームス「産地コラボ」の仕掛け人
使い手の視点で作り手とものづくりをする
「褒めること」の大切さ
何度も通って実現した「ファミリア」とのコラボ
手応えが自信につながり、それがエネルギーに

【大丸松坂屋百貨店が「高級ファッションサブスク」を始めた理由】
田端竜也 大丸松坂屋百貨店 アナザーアドレス事業責任者

「ハマったら突き詰める」性格がファッションに向かう
新規事業開発プロジェクトからシリコンバレーへ
最初は通らなかったサブスクビジネスの提案
百貨店ビジネスとサブスクビジネスは高め合える存在に
ブランドとの交渉で効いた百貨店という信用
着ていきたい場が想定されている
ファッションの楽しさをもっと多くの人に

【特別対談】
設楽洋社長に聞くビームスの原点とこれから

米国のライフスタイルへの憧れがきっかけ
「紺ブレ」ブームで大失敗
自分は動物園の園長だと思っている
「オペレーション機能を持った企画集団」へ

著者略歴

著:川島蓉子
ジャーナリスト 1961年、新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステムに入社し、ファッションという視点から、企業や商品のブランドづくりに携わる。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年に退社。コミュニティー「偏愛百貨店」を立ち上げた。『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞出版)、『虎屋ブランド物語』(東洋経済新報社)、『TSUTAYAの謎』『すいません、ほぼ日の経営。』(以上、日経BP)など、著書は30冊を超える。毎朝3時に起きて原稿をつづる生活を30年にわたって続けている。

ISBN:9784296111404
出版社:日経BP
判型:4-6
ページ数:240ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月11日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TDP