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シベリウスの交響詩とその時代

神話と音楽をめぐる作曲家の冒険

著:神部 智

紙版

内容紹介

6つの交響詩――《クレルヴォ》《レンミンカイネン》《フィンランディア》《ポヒョラの娘》《ルオンノタル》《タピオラ》を軸に、シベリウスの音楽観や世界観、フィンランドの民族性を綴った渾身の書き下ろし。各章前半は、伝記的な事実を踏まえながら各創作期のシベリウスの状況を描き、後半はそれぞれの作品の魅力に迫る。シベリウスの音楽はけっしてローカルなものではなく、普遍的なものへとつながるのだという著者独自の視点が随所に見られる。シベリウスの知られざる苦悩や葛藤、交友関係も読みどころの一つ。最新の研究成果も盛り込んだ、日本初の本格的シベリウス論。シベリウスは、2015年に生誕150年、2017年には没後60年を迎える。

目次

はじめに
第1部 独自の音楽語法を求めて
第1章 悲劇的神話を音楽で表現する―《クレルヴォ》
1.フィンランド音楽文化の形成
 ウィーン留学と創作の背景/交響曲への挑戦/初演の状況と作品の受容
2.クレルヴォ神話と悲劇の音楽表現
 クレルヴォ神話について/「近親相姦」の要素をめぐって/作風と音調/「フィンランド的なもの」を求めて/ラリン・パラスケとの出会い
第2章 生と死をイメージする―《レンミンカイネン》
1.民謡へのまなざしから近代芸術のあり方を探る
 シベリウスのカレリア巡礼/生活の糧を求めて/「民俗音楽が芸術音楽に与える影響について」
2.《レンミンカイネン》をめぐる諸問題
 ワーグナー受容/オペラの挫折から交響詩へ/《レンミンカイネン》の標題/作品の成立をめぐって/表現世界の模索
第3章 有名曲の誕生を紐解く―《フィンランディア》
1.有名曲の誕生をめぐって
 《フィンランディア》誕生の社会的背景/シベリウスの創作活動への影響/舞台劇『歴史的情景』と〈フィンランドは目覚める〉/交響詩《フィンランディア》の成立に向けて/パリ万博への遠征公演
2.ナショナリズムと音楽
 ナショナリズムの動向とその超克/《フィンランディア》に対するシベリウスの複雑な思い/楽曲内部の秘密に迫る
第2部 新たな表現世界の広がり
第4章 英雄と幻想的な旅をする―《ポヒョラの娘》
1.シベリウスをめぐる環境の変化
 ますます緊迫する社会状況/シャウマンのためのレクイエム?/「アイノラ」への転居/リヒャルト・シュトラウス/グスタフ・マーラー
2.新たな作風を求めて
 題材の広がりと作風の変化/交響的幻想曲《ポヒョラの娘》の「謎」/インスピレーションの横溢と新しい作品群の構想/標題と表現形式の問題/ユニークな音調と構成
第5章 宇宙創成の響きを求める―《ルオンノタル》
1.根源的なものへのまなざし
 喉頭腫瘍の発症/生活の変化と創作活動への影響/シベリウスの「暗黒期」/創作上の岐路
2.宇宙創成の音楽
 「女性的なもの」とアイノ・アクテ/ポーの『大鴉』から『カレワラ』の世界へ/テクストから透けてみえるシベリウスの世界観/宇宙創成の響き
第6章 時代を超越する―《タピオラ》
1.創作晩年期に向かうシベリウス
 フィンランド独立に向けて/独立の余波と内戦/カンタータ《われらの国》の表現世界/シベリウスの苦悩と困難な創作状況
2.《タピオラ》とシベリウス晩年の美学
 創作晩年期の様相/《タピオラ》の成立/シベリウスの究極的な視点/シベリウス受容の新たな広がり/《タピオラ》の独創的なデザイン
あとがき
参考文献表/人名索引

著者略歴

著:神部 智
茨城大学教授。ヘルシンキ大学大学院博士課程修了。博士(音楽学)。シベリウスに関する論文やエッセイ、プログラム・ノート、ミニチュア・スコア(音楽之友社)の解説を多数執筆。宇都宮大学、国立音楽大学講師を歴任。また早稲田大学、東京藝術大学、横浜国立大学の公開講座、自治体主催の市民講座の講師をはじめ、NHK番組の出演・監修など、多方面で幅広く活躍。

ISBN:9784276130555
出版社:音楽之友社
判型:A5
ページ数:296ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2015年12月
発売日:2015年12月07日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AVM