出版社を探す

河鍋暁斎の挑戦

狂画で拓いた新時代

著:定村 来人

紙版

内容紹介

徳川の世から明治へと大きく変貌する時代を生きた、画鬼・暁斎。その卓越した画業を生み出したものは何だったのか。本書は、「狂画」という視点から暁斎の作品を綿密に分析、新しい技法や表現に挑み続けた絵師の全貌に迫る。従来の研究を問い直す、暁斎研究の最先端。

目次

序 章 河鍋暁斎と狂画
 一 狂画軽視の傾向とその問題点
 二 本書の目的と先行研究
 三 本書の構成
 四 狂斎の「狂」
 五 狂画とは

第I部 狂斎としての形成期――本画と狂画

第一章 「狂斎」 以前――《竹生島詣》 と 《月下唐美人図》 を中心に
 一 ギメ東洋美術館蔵《竹生島詣》
 二 《竹生島詣》の造形的特徴と画題
 三 イスラエル・ゴールドマン・コレクション蔵《月下唐美人図》
 四 《月下唐美人図》の画題
 五 その他の初期作品との比較
 六 狩野派の本画から離れて――大津絵画題の重要性

第二章 能狂言画が橋渡しをした版画の世界――『絵本大和錦』 と関連作品
 一 『絵本大和錦』と関連作品――『絵本大和錦 絵本大全』、『東都花競』他
 二 『絵本大和錦』の落款と制作時期の検討
 三 図に見られる変化
 四 狂言画における滑稽の要素

第三章 幕末の狂画――時事的風刺浮世絵の時代
 一 新たな考察および解釈を加えることのできる作品
 二 暁斎作として新たに検討に加えるべき作品
 三 暁斎による幕末風刺浮世絵の特徴

第四章 狂画としての春画
 一 暁斎の春画制作
 二 筆禍事件と春画
 三 揶揄する笑い
 四 逆転による笑い

第II部 狂斎から暁斎へ――狂画が広げた表現の可能性

第五章 新しさへの関心――イソップ物語と西洋
 一 西洋木版の挿絵の学習と応用――『通俗伊蘇普物語』におけるイソップ物語との出会い
 二 『通俗伊蘇普物語』の狂画化――錦絵「伊蘇普物語之内」および「暁斎楽画」シリーズ
 三 教科書の挿絵――『修身説約』と『小学修身書』
 四 再びジェームズ本に立ち返って――肉筆《イソップ物語》諸作品

第六章 現実世界と絵空事の交差点――田鶴追善作品群
 一 イスラエル・ゴールドマン・コレクション蔵「幾世かがみ」
 二 河鍋暁斎記念美術館蔵《見立七福神之内 花見弁天図》
 三 『くまなき影』――「幾世かがみ」と《地獄極楽めぐり図》(静嘉堂文庫美術館蔵)との関連
 四 富裕層の子ども供養と出版事業
 五 《地獄極楽めぐり図》に見られる狂画的笑いと現実の要素

第七章 蛙、鬼、鴉の表象に見られる自己投影
 一 狂画の伝統と今を生きる蛙たち
 二 「蛙の面に水」――弱くて強い存在
 三 「酒仲画鬼」――落款と鬼の像
 四 「画鬼」――暁斎が寄り添った鬼たち
 五 「[鴉]思」と「万国飛」――日々の習練と名声の象徴としての鴉
 六 イソップ物語と鴉

第III部 晩年の暁斎――『暁斎画談』 のメッセージ

第八章 『暁斎画談』 の成立――近世絵本文化からの連続
 一 底本イスラエル・ゴールドマン・コレクション本の書誌
 二 暁斎の画業における『画談』の位置づけとその成立
 三 異本の存在
 四 『画談』に影響を与えた近世絵本
 五 「古今」の世界観

第九章 流派を超えて――新時代の画譜
 一 開かれた絵手本
 二 内容的広がり
 三 外篇の半生記と自画伝――「画狂」と「酒狂」の絵師として
 四 『画談』の中の狂画

第十章 筆意と写生の合致――今日的問題に対する関心
 一 『画談』内篇における「筆意」
 二 対立概念としての「筆意」と「写真」および「写生」
 三 『画談』外篇における「写生」
 四 真図と画図
 五 様々な「写生」――その多義性
 六 筆意の学習と写生の訓練の統合

終 章 「本」 と 「狂」 の融合――新しい時代の絵を模索して
 一 各部の要約とまとめ
 二 新しい時代の絵のかたち
 三 狂画が引き寄せた近代
 四 今後の課題

あとがき

河鍋暁斎略年譜

著者略歴

著:定村 来人
イスラエル・ゴールドマン・コレクション・キュレーター、大英博物館アジア部客員研究員

ISBN:9784130860666
出版社:東京大学出版会
判型:A5
ページ数:464ページ
定価:9200円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年09月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AFC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ