出版社を探す

創造する破壊者 ファイトプラズマ

著:難波 成任

紙版

目次

はじめに
1章 謎の病気
 1.1 謎の病気
 1.2 基幹産業の衰退
 1.3 戦後の食糧難
 1.4 ウイルス病原説
 1.5 他にもある萎黄叢生病
2章 MLO(ファイトプラズマ)の発見
 2.1 ウイルス病と考えられていた
 2.2 マイコプラズマ様微生物(MLO)の発見
 2.3 病原であることの証明
 2.4 学問のパラダイムシフト
 2.5 その後の研究
3章 挑戦の系譜
 3.1 一番良い場所
 3.2 裸一貫からのスタート
 3.3 軸足の大切さ
 3.4 金と地位と名誉は追いかけるのでなく付いてくるもの
 3.5 組織マネジメントと異分野から学ぶことの大切さ
 3.6 外部ストレージによる創造力強化
 3.7 元々携わっていた牙城「植物ウイルス研究」
4章 MLOからファイトプラズマへ
 4.1 混沌とした世界
 4.2 2つのブレークスルー
 4.3 分類体系
 4.4 RFLPによる分類
 4.5 リボソームRNAオペロン
 4.6 ハウスキーピング遺伝子
5章 不可能と思われたゲノム解読
 5.1 コドン暗号は変則的か?
 5.2 世界で唯一のファイトプラズマ・ミュータント
 5.3 解き明かされた全ゲノム
 5.4 巨大植物産業が微小細菌ファイトプラズマに翻弄される!
 5.5 ゲノムサイズの謎
 5.5 染色体外DNAの進化
6章 植物と昆虫に感染するしくみ
 6.1 ファイトプラズマの動き
 6.2 分泌タンパク質は直接宿主にはたらきかける
 6.3 少ない遺伝子を植物と昆虫で使い分ける
 6.4 膜タンパク質が媒介昆虫を決める
7章 病原性因子の発見――重鎮の言葉を跳ね返すまで
 7.1 ユニークな病徴
 7.2 ファイトプラズマで初めての病原性遺伝子
 7.3 タンパク質分泌装置
 7.4 天狗巣病の病原性因子「TENGU」
 7.5 TENGUは植物を不捻にする
 7.6 葉化病とABCEモデル
 7.7 「かたち」を決める遺伝子
 7.8 葉化病の病原性因子「ファイロジェン」
 7.9 病原性因子はなぜ生まれたか?
8章 ファイトプラズマ病をどのように根絶するか?
 8.1 診断技術が確立されるまで
 8.2 世界初の遺伝子診断キット
 8.3 診断キットが果たす国際的使命
 8.4 治療技術の開発
おわりに ファイトプラズマ研究の新たなパラダイムに向けて
 9.1 ライフワークの発見
 9.2 終わりの見えないもう1つの仕事
 9.3 実在する青い鳥を追い求めて
 9.4 ファイトプラズマ研究の新たなパラダイムに向けて

【コラム】
自然哲学者科学者研究屋/日本初のファイトプラズマ病報告/研究の先見性/横に這わないヨコバイ?/ファイトプラズマ発見伝/日本語雑誌はネタの宝庫/ゆっくりと流れていた昔の時間/MLO培養の試みと記録消失/ファイトプラズマ研究に交錯した人々/研究と雑用の両立は可能か?/人文社会系の解は1つではない/サイロ・エフェクト/課題設定の難しさ/ファイトプラズマ研究と研究費/研究室マネジメントのコツ/要素還元/ライフワークはどのようにして生まれるのか/国際学会/RFLPによる分類のリスク/複数あるリボソーム遺伝子の意味/デジタル知とアナログ知/タイミングとスタンダード/三財を散財する日本/材料がすべて/ブレークスルーはどうしたらできるか/ブレークスルーに必要な戦略/名付け親は共同通信/壮大なる復讐戦略/ファイトプラズマはどのように昆虫・植物に適応してきたか/粒子と波の二面性を持つ微生物/篩部の居心地/ファイトプラズマの起源は植物か昆虫か?/表と裏/菌と金/ポインセチアは天狗巣病?/生命と非生命のあいだ(前):農業・食料の保守性/生命と非生命のあいだ(後):科学・技術の進歩は直線的ではない/何かことを極めるにはマクロよりもミクロから入れ/ネーミングがすべて/アジサイ葉化病は品種か?/論文の掲載雑誌の選択の難しさ/病徴に見え隠れするファイトプラズマのしたたかな生存戦略/生命の軸/共生と寄生のあいだ/視点を変えるだけで景色は一変/無理な注文/なぜ途上国では植物病の根絶が難しいのか/ゴッドハンド/テトラサイクリン治療とナツメの味/優性抵抗性と劣性抵抗性/AI農業の先に見えるもの/文理両道官と胆力理事

Phytoplasmology
Shigetou NAMBA

著者略歴

著:難波 成任
東京大学大学院名誉教授.東京大学農学部卒業,同大学院農学系研究科博士課程修了.米コーネル大学客員研究員,東京大学新領域創成科学研究科教授,同農学生命科学研究科教授を経て2017年より同特任教授.専門は「植物病理学」で,植物病原微生物の宿主決定・病原性決定の分子機構,植物の病気の診断と治療・予防の科学をテーマとして研究活動に取り組み,ファイトプラズマ(昆虫が媒介する微生物)の研究では世界のトップリーダーである.また,世界で最初に開設され,2006年に開設100年を迎えた「植物病理学研究室」の主任教授を務めた.同時に,植物の医師認定と東大植物病院を設立し,「植物医科学研究室」を開設し担当している.日本植物病理学会賞(2002),マイコプラズマ学会北本賞受賞(2004),国際マイコプラズマ学会エミー・クラインバーガー・ノーベル国際賞(2010),紫綬褒章(2013),日本農学賞(2014),読売農学賞(2014),日本学士院賞(2017)受章・受賞.

ISBN:9784130661393
出版社:東京大学出版会
判型:A5
ページ数:400ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2017年08月
発売日:2017年08月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TVK