近世フランスの法と身体
教区の女たちが産婆を選ぶ
著:長谷川 まゆ帆
内容紹介
18世紀フランスのアルザス南部で起きた助産婦の選任をめぐる教区の女たちの紛争事件をめぐって,この事件の歴史的な意味を考察する.この解明に向けた重層的かつ実証的な探査が,近世フランスの法と身体をミクロヒストリーから照らし出す.著者のフランス史研究の集大成.
目次
序 論 身体性の歴史学に向けて
第1章 アルザス南部の事例――紛争の経緯と謎,背景にある地域的特質
第1節 史料との出会いとその概要
第2節 事件の経緯と展開――モーシュ他三集落の文書を中心に
第3節 背景にある地域的特質
第2章 地方長官によるストラスブールの助産術講習会の開設
第1節 ストラスブールの助産術講習会
第2節 地方長官ガレジエールとロレーヌの現状
第3節 サン・ディエの助産術講習会の開設に向けて
第3章 隣接事例との比較1――ベルフォール補佐管区の場合
第1節 受講生選択の経緯
第2節 帰村した助産婦への反発/嫌悪
第3節 鎮まらぬ紛争――モーシュ他三集落の事例の特異性
第4章 隣接事例との比較2――ロレーヌ南部ドン・ジェルマンの場合
第1節 一七〇八年の判決にみる紛争のパターン
第2節 誓約した産婆の専任
第3節 未洗礼死産児の洗礼と埋葬
第5章 渓谷の変容――境界のゆらぎ
第1節 教区の内と外の境界
第2節 ジェンダー役割,労働空間,宗派の境界
第3節 中間役人のゆらぎ
第6章 助産技法の変化と助産婦の制度化――場・仕方・人間の関係の再編
第1節 アンドレ・ルヴレの著作と難産への対処法
第2節 助産婦と外科医の関係性の変化
第3節 産褥熱による死と内科医社団の認識
結 論 「選ぶ自由」の承認と慣習の形成
Parish Women and Their Right to Choose a Midwife in Early Modern France
Mayuho HASEGAWA