小学館文庫
ワークソング
著:鈴木 清剛
紙版
内容紹介
零細ネジ工場を舞台にした青春ワーク小説
青春労働小説の決定版!主人公の秋邦は元バンドマン。夢破れて零細ネジ工場『銀熊工業』の4代目を継いだが、景気の悪化と共に倒産の危機に直面。シングルマザーでクラブ好きの妹はるか、極度の人間嫌いで二卵性双生児の野原兄妹、スケベだが気のいい運転手の鷲尾のおじさん、ダメだけど愛すべき従業員を守るため金策に走り回る秋邦。「今頃、当時のバンドの仲間たちはどうしているのだろう?それぞれに音楽とは別の何かに打ち込んでいるのかもしれない。俺にとってのその何かは、ボルトの検品作業だ。両親が死んで仕方なく家業を継いだ訳じゃない。あの単調な仕事が自分にふさわしそうだと思ったからだ」。--キコキコキコキコ・・・。このネジの音が工場から消えてしまう。従業員のパスポートを闇ルートで売ると金になると聞いて、気持ちは揺れる。幼なじみで実業家のポールに助けてもらおうとするが、昔から秋邦に好意を寄せていたポールは妖しい取引を持ちかけてきた。「キコキコ、ああ、まったく本当に、キコキコ、闇雲に手を動かしてもどうにもならない。キコキコ、けれど考えてばかりでもどうにもならない」。手形の期限は週明け。銀熊工業の行方は・・・。