講談社学術文庫
ジャーナリストの生理学
著:バルザック
訳:鹿島 茂
内容紹介
19世紀のパリで新聞などを舞台に活躍していたジャーナリストと批評家を取り上げ、作家一流の「生理学」の手法で徹底的に批判する。「もしジャーナリズムが存在していないなら、まちがってもこれを発明してはならない」と一刀両断にする結論を見れば、今も昔も新聞は何も変わっていないことは疑いない。新聞の存在意義が問われる今日こそ、ジャーナリストはもちろん、すべての人が手にするべき一冊。
19世紀のパリで新聞などを舞台に活躍していたジャーナリストと批評家を取り上げ、徹底的に批判する。
昨今、新聞ジャーナリズムの腐敗や堕落が取り沙汰されているが、本書を読めば、新聞というものが今も昔も何も変わっていないことに驚かされる。バルザックは『役人の生理学』(講談社学術文庫)と同様の手法を用いて、風刺に満ちた分類を施す。ここで対象にされたのは「政治ジャーナリスト属」と「批評家属」である。本書は「ジャーナリズムの生理学」にほかならない。
「政治ジャーナリスト属」のうち「信念を持つ著述家」には「セイド(狂信者)」というやつらがいる。「ひたすら信じ、常に熱狂している」セイドたちを「人類のためとあらばいつでも身を犠牲にする覚悟でいるのである」と揶揄する言葉は、今も完全に有効である。
このように、微に入り細を穿つ文章の数々は、豊富に収録された当時の図版と相俟って、さながら「19世紀ジャーナリスト群像」を織りなしていると言ってよい。達意の訳文で楽しみながら読める本書は、今こそジャーナリストが読むべきものだろう。
本書の「結論」には、次のような「公理」が掲げられている。「もしジャーナリズムが存在していないなら、まちがってもこれを発明してはならない」。では、すでに発明されてしまっていたとしたら? その問いに対する回答は、冒頭の「緒言」に記されている。「ジャーナリズムの息の根を止めるのは不可能ではない。一民族を亡ぼす時と同様、自由を与えさえすればよい」。
目次
著作権侵害者への警告
緒言
一般的特徴
第一の属 政治ジャーナリスト
A 新聞記者
B 政治家兼新聞記者
C 風刺攻撃文作者
D 空疎論者(時に通俗解説者とも呼ばれる)
E 大臣亡者の政治評論家
F 一作托生の作家
G 翻訳家
H 信念を持つ著述家
第二の属 批評家
A 由緒正しい批評家
B ブロンドの若手批評家
C 大批評家
D 学芸欄担当者
E 小新聞記者
結論
解説
あとがき
学術文庫版あとがき
ISBN:9784062922739
。出版社:講談社
。判型:文庫
。ページ数:320ページ
。定価:1050円(本体)
。発行年月日:2014年12月
。発売日:2014年12月11日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNTP2。