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講談社選書メチエ 567

ベルクソン=時間と空間の哲学

著:中村 昇

紙版

内容紹介

ものごとは、けっして絵のように止まっているのではない。常に流動している。〈わたし〉の体だって変化し続けている。したがって、ものごとは、本当は流れたり、変わりゆくものとしてとらえないと、本質はわからないのではないか。ベルクソン哲学のポイントはここにある。時間の流れを「持続」という独自の概念でとらえ、記憶の蓄積こそが存在の鍵を握ると考えた、ユニークで重要なベルクソンの哲学を現代的な視点で読み直す快著。


ベルクソンといえば、かつては有名だったけれども、いまやあまり見向きもされなくなった哲学者、というようなイメージを持つ人も、あるいはいらっしゃるかもしれません。しかしながら、ひとつには、現代哲学の巨人といわれるドゥルーズとの影響関係があらためて注目されるという状況もあり、現代哲学に欠かせないキーパーソンとして、昨今、急激に再評価されつつあります。
本書は、それでは今こそ読み返すべきベルクソンの哲学とは、いったい何なのか、その本質について、ベルクソンのテキストに寄り添いながら、あらためて深く考える一冊です。
ベルクソンの思考の大きな特徴として、人間を含めたこの世界を、固定されたひとつの時点でとらえるのではなく、流れ、いわば連続としてとらえる、ということがあります。当然、人間という存在もある時点に静止したものではなく、持続するものです。この「持続(=duree)」こそが、ベルクソン哲学の根幹をなすのです。
ここから、「持続」とは時間だといってもいいでしょうし、人間とは存在の流れゆく記憶の集積だと言ってみても、違和感はないでしょう。では、その「持続」は、「いま・ここ」に存在する〈わたし〉と何の関係があるのか。何の役にたつのか。きづいてみれば、この問いこそ、あらゆる哲学の出発点でしょう。
著者は〈わたし〉とはなにか、なぜ生きているのか、という根源的な問いを手放さず、ベルクソンの思索に寄り添いながら、哲学を深めていきます。哲学的に考えることの魅力にあふれた、第一級のベルクソン論です。

目次

第一章 ベルクソンの哲学
  1.補助点としての〈わたし〉 2.きこえてくるせかい  3. ことば 4.直観 5.空間化 6.記憶
第二章 「持続」とはなにか
  7.時間は、持続である 8.持続という空間 9.数を数える 10.理念的  空間 11.聴覚的空間 12.多様体 13.〈わたし〉=場 14.質と量の不可分性
第三章 純粋持続批判
  15.直観と記憶 16.質ということ 17.意識の二層  18.印象、感覚、感情の変化 19.純粋持続
第四章 持続は記憶である
  20.『持続と同時性』について 21.持続ふたたび  22.記憶ふたたび   23.流れの同時性 24.〈いま・ここ・わたし〉

著者略歴

著:中村 昇
1958年、長崎県生まれ。中央大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、中央大学教授。専攻は、哲学。主な著書に、『いかにしてわたしは哲学にのめりこんだのか』(春秋社)、『小林秀雄とウィトゲンシュタイン』(春風社)、『ホワイトヘッドの哲学』(講談社選書メチエ)などがある。

ISBN:9784062585705
出版社:講談社
判型:4-6
ページ数:231ページ
定価:1700円(本体)
発行年月日:2014年01月
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDH
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:QDX
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:1DDF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 4:1DDN