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岩波現代文庫 社会343

大災害の時代

三大震災から考える

著:五百旗頭 真

紙版

内容紹介

我々は「震災が頻発する地震活性期にめぐりあわせている」。東日本大震災の復興構想会議の議長を務めた政治学者が、近代の三大震災(関東大震災、阪神淡路大震災、東日本大震災)における被害の実態、国と社会の対応、当時の政治判断、復興への取り組みを比較・検証し、今後起こるかもしれない震災への備えとする。

目次

 岩波現代文庫版への序文
 緒 言………(山崎正和)

はじめに
 1 「三大震災」の視座から
 2 日本人の自然観・天災観
 3 日本列島の地震活性期

第1章 関東大震災
 1 海洋プレート型と内陸直下型の連鎖
  地震発生のメカニズム
  双方の揺れを体験した震災
  地震予知と科学研究
 2 被災地の惨状
  震源に近かった横浜
  複合災害に見舞われた東京
 3 江戸時代・明暦の大火
  市街の六割が焼ける
  幕府の対処
 4 震災への行政対応
  首相の不在
  火災との闘い
 5 自警団による虐殺
  情報暗黒下の異常心理
  異常事態への警察対応
 6 政争の中の創造的復興
  後藤新平の大構想
  伊東巳代治の反対演説
  復興院と政界再編
  積極的復興の中身

第2章 阪神・淡路大震災
 1 戦後平和を引き裂く直下地震
  大地の魔神
  生死を分けた住居
  被災地体験を伝える記録
  伝統的共同体の救い
  悲惨の中、人の輝き
 2 安全のための第一線部隊
  自助・共助・公助による減災
  警察の試練
  消防力を超える火災
 3 自衛隊出動
  姫路連隊の動き
  伊丹連隊の場合
  戦略レベルの決定失敗
 4 生存救出と「震災の帯」
  ある学生寮の奇跡
  生存救出の八割を占める共助
  断層と「震災の帯」の乖離
 5 首長たちの初動
  風水害で鍛えた危機管理
  公用車を待つ首長
  兵庫県庁の初動
 6 官邸の初動
  情報、官邸に上がらず
  テレビ報道 vs 公的情報
  緊急対策本部の創設
 7 復旧・復興の諸局面
  復旧のプロセス
  基金設立と創造的復興
 8 創造的復興の行方
  地元主導の復興論
  立ちふさがる行政の壁
  減災シンクタンクの誕生

第3章 東日本大震災1――大津波の現場
 1 巨大津波を生んだ海溝型大地震
  猛り狂う海の魔神
  船乗りたちの格闘
 2 津波常襲地の三陸海岸
  明治三陸津波
  明治の高台移転
  昭和三陸津波
  田老の防潮堤
 3 消防団の苦闘
  住民と共にある消防団
  甘えすぎの社会への教訓
 4 警察の災害対応力
  地震災害と津波災害
  広域支援体制と災害用部隊
 5 自衛隊の任務
  「ことに臨んでは、わが身を顧みず」
  陸幕長の独断専行
  自衛隊の大改革
 6 現場主義の奮闘
  もう一つの第一線部隊
  DMATによる医療支援
  学校と教師たち
 7 自治体間の広域支援
  関西広域連合のカウンターパート方式
  東京都杉並区のスクラム支援
  企業による支援の新段階
  遠野市の奇跡

第4章 東日本大震災2――国と社会の対応
 1 日本政府の初動
  見違えるような初動体制
  原発事故発生
 2 フクシマの現場
  津波による電源喪失
  ベントのための決死隊
  炉心溶融(メルトダウン)
  なぜ原発は暴走したか
  現場力の高さと運命の女神
 3 トモダチ作戦
  災害支援の日米関係史
  災害平穏期から活性期へ
  軍の役割の拡大
  大震災勃発と日米の緊密な連携
  フクシマ原発事故――日本滅亡の危機
  日米間の情報共有と協力の進展
  トモダチ作戦の意義
  トモダチ作戦と安全保障
 4 復興構想会議
  首相からの電話
  五つの基本方針
  大荒れの第一回会議
  復興構想7原則
  難産の末の復興構想
  復興構想の内容
  生かすも殺すも政治次第
 5 安全なまちづくりをめざして
  復興の三類型
  想定を超える人工丘のまち
  違いの見えた復興過程

第5章 地震活性期を生きる
 1 リスボン地震との比較
  リスボン地震という歴史的モデル
  Aクラスの危機管理・応急対応
  リスボンの復旧・復興
  国家の賑わいと凋落
 2 災害対策の現在
  復旧か、復興か
  国際的支援
  天皇の役割
  安全なまちの先にあるもの
  南海トラフと首都直下への備え

 あとがき
 注
 参考文献

著者略歴

著:五百旗頭 真
五百旗頭 真(いおきべ まこと)
1943年生まれ.兵庫県出身.京都大学法学部卒業,同法学研究科修士課程修了.広島大学助教授,神戸大学教授,防衛大学校長,熊本県立大学理事長,兵庫県立大学理事長を歴任.現在,兵庫県立大学顧問,ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長.法学博士(京都大学).文化功労者.主な著書に『米国の日本占領政策』上下(中央公論社,1985年),『占領期──首相たちの新日本』(読売新聞社,1997年),『戦後日本外交史』(編著,有斐閣アルマ,1999年),『総合検証 東日本大震災からの復興』(共監修,岩波書店,2021年),『評伝 福田赳夫』(監修,岩波書店,2021年)など.

ISBN:9784006033439
出版社:岩波書店
ページ数:394ページ
定価:1430円(本体)
発行年月日:2023年08月
発売日:2023年08月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS