岩波現代文庫 学術433
文化としての科学 技術
著:村上 陽一郎
内容紹介
科学/技術は、19-20世紀に大きく変貌した。専門家集団内部での閉鎖的・自己完結的な科学から、外部社会に開かれ、軍事や企業の技術開発の目的のために利用される科学へ。さらに利便性ばかりでなく、将来の安全性も考慮した科学へ。こうした科学のあり方の変遷を論じつつ、望ましい科学研究や科学教育のあり方を提言する。
目次
まえがき
Ⅰ ノーベル賞の功罪
はじめに
1 ノーベル賞の制定
2 科学研究の制度化
3 科学研究の評価
4 ノーベル賞の変質
5 科学研究の変質
Ⅱ 科学研究の様態の変化
1 問題のありか
2 科学の先駆
3 プロトタイプの科学
4 プロトタイプ科学の特性
5 ネオタイプの科学
6 使命達成型の研究
7 プロトタイプとネオタイプ
Ⅲ 新しい科学像の一つの象徴
1 科学の原型
2 新しい事態
3 新しい科学像
Ⅳ 西欧科学/技術と東洋文化
はじめに
科学の歴史的ヨーロッパ依存性/科学の「普遍性」/新しい科学の可能性
1 近代科学の特性
科学という知的活動/科学者共同体の形成/科学の自己完結性/普遍性の意味/ベルツの批判/科学の文化非依存性/翻訳の問題/科学と言語/科学という文化
2 技術の場合
技術の文化依存性/技術の効率
3 新しい世紀への展望
近代文明を駆動させるエンジン/期待される姿
Ⅴ 科学/技術と生活空間
1 伝統技術と生活空間
文化と技術/技術の囲い込み/生活空間としての技術
2 近代技術の基礎
近代技術とは/文明のイデオロギーと技術/人間の解放/近代技術の成立/大衆の欲望/欲望の開発
3 現代技術と生活者
技術の変貌/科学との融合/国家政策としての技術
おわりに
Ⅵ 科学/技術と教育
1 西欧における科学教育の始まり
2 日本の大学と科学
3 近・現代の科学教育
4 新しい理科教育・科学教育と科学リテラシー
補論 科学/技術の専門家と政治・社会——コロナウイルス禍のなかで
岩波現代文庫版へのあとがき
初 出