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岩波ジュニア新書 967

核のごみをどうするか

もう一つの原発問題

著:今田 高俊
著:寿楽 浩太
著:中澤 高師

紙版

内容紹介

原子力発電によって生じる「高レベル放射性廃棄物」は国内に大量に溜まり続け、放射能の影響が弱まるまで長い年月を要するといわれている。この危険な「核のごみ」をどこにどのような方法で処分すればよいのか。私達はこの問題とどう向き合えばよいのか。専門家らによる提言を読み解きながら問題解決への道を探る。

目次

序 章 核のごみ問題とは?―高レベル放射性廃棄物の処分をめぐって(今田・寿楽)
 核のごみとは何か
 原子力発電の開始いらい30数年間も問題を放置した
 とても危険な核のごみ
 どう処分しようとしているのか
 地層処分はNUMOが担当することになっている
 科学の力で安全と言い切れるのか
 核のごみ処分についての悩ましい問題
 不公平問題をどうするかも悩みのたね
 世界でも核のごみ処分は大きな問題になっている

第1章 海外の取り組みから学ぶ―日本固有の事情を考えるために(寿楽)
 原子力発電大国アメリカでの紆余曲折
 カナダの経験と「適応性のある段階的管理」
 「可逆性」にこだわるフランス
 日本と類似するイギリスの取り組み
 ドイツでの脱原発と核のごみ処分政策の見直し
 脱・脱原発国スウェーデンの悩み
 核のごみ処分場のトップランナーとされるフィンランド

第2章 地層処分の科学技術的な根拠はあるのか(今田)
 核のごみを超長期にわたって人間界から隔離する
 地層処分、地下300mより深く埋めて封印する
 核のごみ(再処理後に残る)のガラス固化体2万6000本
 大地震・火山活動による爆発・飛散の危険性を考える
 地下水の流れによる安全評価は不十分
 地層処分の安全性を研究―瑞浪超深地層研究所と幌延深地層研究センター

第3章 国民的理解を得るにはどうすればよいか―原子力委員会からの審議依頼(今田)
 処分地候補に応募する自治体がない
 原子力委員会が日本学術会議へ審議を依頼
 高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会を設置
 国民の理解が得られないわけ
 どのような観点から議論すればよいか
 原子力委員会へどのような回答をしたのか
 さらに何をなすべきか

第4章 行き詰まりを打開する具体策はあるのか―12の政策提言(今田)
 暫定保管と中間貯蔵はどう違うのか
 政策提言の大まかな構成とは
 どうする暫定保管の方法と期間
 事業者の発生責任と地域間負担の公平性が問われている
 将来世代への責任をどう取るのか
 最終処分へ向けた立地候補地の選定とリスク評価をどうするのか
 合意形成に向けた組織体制をどう整えるのか

第5章 少人数の討論によって理解を深める―Web 上の討論実験(今田)
 討論型世論調査で良質な民意を測る
  Web 上の討論型世論調査をどのように設計したか
 地層処分についての理解は得られたか
 中間貯蔵よりは暫定保管のほうが望ましい
 総量管理による「脱核ごみ」意識は討論にかかわらず高い

第6章 受益圏と受苦圏の分離がもたらす不公正問題(中澤)
 受益圏・受苦圏とは何か
 分離する受益圏と受苦圏
 介在する社会経済的格差
 経済的補償にともなう問題
 複雑化する受苦圏と受苦圏の利害対立
 国外にまで広がる受苦圏
 将来世代にも影響がおよぶ
 解決策はどうあるべきか―分離型から重なり型へ

第7章 リスクをどう受け止めるか―不確実性のもとでの意思決定(寿楽)
 リスクの語源ともとの意味
 リスクと自己責任
 現代社会のリスクの性質
 自己責任論では解決できない
 リスクを定量化すればよい?
 破局的なリスク
 未知の度合いの高いリスク
 不確実性とどう向き合うか―核のごみに立ち戻って考える
 法制度的枠組みを再検討する
 科学者の認識共同体で開かれた検討を進める
 使用済み核燃料の存在と取り組み
 多段階の合意形成への取り組み

終 章 社会の叡智が問われている―エネルギー問題の将来を見据えて(寿楽・今田)
 答えを出さねばならない問題
 どこにも答えがない問題に答える
 取り切れない責任を取る仕組みを考える
 社会の叡智を集めて
 学術の役割、政治の役割
 市民の役割、皆さん自身の役割

 注記
 付録 委員会構成メンバー一覧
 おわりに

著者略歴

著:今田 高俊
今田高俊(イマダ タカトシ)
1972年,東京大学文学部卒業.75年、東京大学大学院社会学研究科博士課程中退.学術博士(東京工業大学).東京工業大学大学院社会理工学研究科教授を経て,東京工業大学名誉教授.専門は社会システム論,社会階層研究,リスク社会学.
著:寿楽 浩太
寿楽浩太(ジュラク コウタ)
2003年,東京大学文学部卒業.08年,東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得満期退学.博士(学際情報学).現在,東京電機大学工学部教授.専門は科学技術社会学,科学技術社会論.
著:中澤 高師
中澤高師(ナカザワ タカシ)
2005年,一橋大学社会学部卒業.17年,James Cook University, College of Business, Law and Governance, Doctor of Philosophy Course 修了.Ph.D.(James Cook University).現在,東洋大学社会学部教授.専門は環境社会学,環境政治学.

ISBN:9784005009671
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:236ページ
定価:960円(本体)
発行年月日:2023年04月
発売日:2023年04月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KN
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:THK