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岩波ジュニア新書 927

地域学をはじめよう

著:山下 祐介

紙版

内容紹介

「自分の育った地域なんてたいしたことないですよ」と言い捨ててしまう若者は多い.本当にそうなのだろうか? どの地域にも固有の歴史や文化があり,人々の営みがある.それらを知っていくことで,自分や社会,そして未来が見えてくると著者は説く.調査実習の手法や体験をふまえ,時間と空間を往来しながら,地域学の魅力を伝える.

目次

1 地域を見出そう——国とのつながり

◆1 大都市郊外に息づく地域
 大都市郊外ニュータウンに地域はある?/もはや今時、地域なんていらない?/団地の裏側にある村々/五〇年前に起きた地域をめぐる大きな変化
◆2 地域はあまねく存在する
 たとえ見えなくても、みな地域に関わって生きている/地方自治体という地域/参加が地域をつくっている
◆3 地域とは何だろうか——①分割して統治する
 国と地域の深い関係/廃藩置県と都道府県/具体的な暮らしに関わる市区町村/地域の最小単位としての自然村/由木村の地域編成/なぜ分割する必要があるのだろうか?
◆4 地域とは何だろうか——②自治の単位、生命の単位
 地域は自治の単位である/生き物としての地域/生きているものを取り扱う/社会有機体としての国家と地域
◆5 都市について
 都市の生態学的定義/都市の結節機関説/つながりの中で営まれる国家/地域はなぜ見えなくなったのか?


2 水を見よう、道をたどろう——空間のつながり

◆1 弥生水田から田舎館城、そして田んぼアートまで——田舎館村の地域学
 古代米で描く田んぼアート/北の弥生水田跡・垂柳遺跡/水路の水はどこから来るのか?/田舎館城と津軽統一/津軽平野の稲作集落
◆2 水の流れに沿って——岩木川がつなぐ山村と都市
 水と水田開発、都市の暮らし/岩木川の歴史と地域/ダムに消えた白神山村/ある商店の事例/地域のつながりを探ろう
◆3 道がつなぐ村、町、都市、国
 川原平から弘前までの道と村々/道からたどる村と町/甲州街道と宿場町/八王子の宿と町を歩く/桑都・八王子と絹の道/道の移り変わりと地域/交通の高速化が地域のかたちを変える
◆4 生きている地域とその変化
 水系もまた見えなくなった/地域の持続可能性とは?


3 家、村、町、都市——時間のつながり

◆1 限界集落が生き残っているわけ
 消えゆく集落のイメージ/村はしぶとい/限界集落が生き続ける理由/高齢者と家族をつなぐ絆
◆2 地域の構成単位は家である
 村は家でできている/川原平村の家々/地域を構成する最小単位は家
◆3 都市も家でできている
 一代で巨大地主となった布嘉家はその富を何に使ったか?/大地主から自動車ディーラーへ/家としての会社/家が地域をつくり、地域が家をつくる
◆4 家・村・町・都市の脈動とそのゆくえ
 地域の変化と仕事の変化/津軽の農山漁村、町場の調査から/地域に固有の仕事が失われていく/弘前市の調査から/都市の拡大と生業の変容/実は郊外にも﹁家﹂が/生きている地域、生き続ける地域
◆5 地域に探る歴史の年輪
 列島の歴史を現在の地域に見出す/縄文遺跡から中世城館へ/青森湊の近世から近代/青森市街地の拡大発展過程/現代の地域と未来への時間
◆6 近代化の中の地域学
 近代化がもたらす新たな時空/この五〇年間に起きたこと/グローバル化を生きぬく作法としての地域学


4 地域学をはじめよう

◆1 地域学をはじめる前に
 対象とする地域をしぼり、テーマを決めよう/日本の地域の複雑な重層性/都道府県の選択から
◆2 対象とする地域を見出す——①地図を使って地域空間を理解する
 地図を集め、広げる/市町村の配置/人口の分布/地形(河川など)/交通施設
◆3 対象とする地域を見出す——②機関・施設・歴史情報を把握する
 公共機関・施設の配置/神社と寺/文化財等の歴史情報/江戸時代の城と城下町
◆4 対象とする地域を見出す——③市町村を取り上げてさらに調べる
 明治期の市町村にさかのぼる/地域住民組織を確認する/地図や空中写真で集落を確認する/町丁名と大字・小字/神社と寺、歴史情報、人口と世帯数/地形と交通の中に位置づける
◆5 資料にあたり、テーマを探る
 図書館で文献を探す/資料の中からテーマを見つける/地域学に役立つ本、および地方紙について/行政資料センターを利用する/博物館(郷土館・資料館)を活用する/次につなげる、記録をつける、観察する
◆6 年表をつくり、時間を把握する
 文献を調べ、年表を作成しよう/弘前・津軽調査での年表分析の例/地域にあふれる豊富な情報をきちんとつかもう
◆7 歩く、見る、聞く、そしてまとめる
 歩いてみる、見てみる/聞いてみる/現地調査と資料調べ、分析、考察の循環をつくる/そして、まとめていく

著者略歴

著:山下 祐介
山下祐介(やました ゆうすけ)
1969年、富山市生まれ。東京都立大学人文科学研究科教授。熊本市、富士見市、西宮市、鹿児島市、世田谷区、神戸市を経て九州大学文学部入学。同大大学院から同大助手、弘前大学人文学部准教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は、都市社会学、地域社会学、農村社会学、環境社会学で環境問題や過疎・過密問題などを研究している。単著に『限界集落の真実』『東北発の震災論』『地方消滅の罠』『「復興」が奪う地域の未来』『「布嘉」佐々木家を紡いだ人たち』『「都市の正義」が地方を壊す』。共編著に『津軽、近代化のダイナミズム』『グローバル化時代の日本都市理論』など多数。津軽学・白神学の運動にも参加。

ISBN:9784005009275
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:990円(本体)
発行年月日:2020年12月
発売日:2020年12月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB