岩波新書 新赤版 1892
万葉集に出会う
著:大谷 雅夫
紙版
内容紹介
約一二〇〇年前に編まれ、古典として親しまれてきた万葉集。しかし実は、ひとつの解釈を拒む歌、よく分からない歌、顧みられなかった歌は数多い。のちの世の評価や解釈にとらわれず、先入観なく歌そのものと向き合えば、古代の人びとの心が見えてくる。万葉集に出会うことで、私たちはほんとうの心に出会うのかもしれない。
目次
はじめに
第一章 さわらびの歌
1 「石(いは)ばしる」と「石(いは)そそく」——漢字で記された歌集
2 賀茂真淵の「石激(いはばしる)」
3 原文の「激」をどう読むか
4 「そそく」の語感のうつりかわり
5 「さわらび」の季節
第二章 「心なきものに心あらすること」——擬人の表現
1 万葉集の文学史
2 「近江荒都歌」の長歌
3 「近江荒都歌」の短歌
4 擬人表現のその後と写生論
第三章 「家もあらなくに」——旅人の恋
1 万葉集の恋の歌
2 旅の歌の「あはれ」
3 いま、ここに我が家を
4 「駒(こま)とめて袖うちはらふかげもなし」
第四章 柿本人麻呂の狩猟の歌
1 亡き父を思う軽皇子の狩り
2 真淵の「東(ひむかし)の野にかぎろひの立つ見えて」
3 「かぎろひ」と読めるか
4 「野らにけぶりの立つ見えて」
5 馬を馳せんとする皇子
第五章 笑いの歌
1 正岡子規の発見
2 愚人の歌
第六章 万葉のこころ
1 「父母(ちちはは)も花にもがもや」
2 防人の歌
3 水に映る妻の姿
4 思われて見る夢
5 別れの鏡
6 みずからの命を祈ること
7 みずから命を絶つおとめたち
8 昔も今も、後の世も
あとがき