岩波新書 新赤版 1760
子育ての知恵
幼児のための心理学
著:高橋 惠子
内容紹介
「育児は母の手で」「三つ子の魂百まで」「「ママがいい」に決まってる」……。根強くまかり通る育児神話や「通説」。それに翻弄される多くの保護者たち、とりわけ母親たち。実際のところ、子どもは何を訴えているのか、様々な仕草はどのような発達の表れなのか? 発達心理学の長年の研究成果をもとに、確かな育児の知識を平易に伝える一冊。
目次
はじめに
「子育ての知恵」を持つことの大切さ
子育ての悩み・質問
しつけとは何か
本書の構成
第1章 心の発達――三つ子の魂百までか
1 生涯発達の中の幼児期
生涯発達
人生百年時代
2 「三つ子の魂百まで」の誤り
幼児期決定説
縦断研究の証拠
発達のしなやかさ
3 発達を決める要因 その1 遺伝子と環境
遺伝も環境も
エピジェネティクス
4 発達を決める要因 その2 当事者としての子どもの意思
子どもという要因
発達の生態学的モデル
発達する子ども
第2章 母親の神話――「愛着」の心理学
1 愛着理論の登場
「愛着」の提案者ボウルビィ
愛着とは
進化の産物としての愛着
2 愛着の質
遺伝と環境の科学
愛着の質の測定
愛着の質――安定型と不安定型
愛着の質――無秩序型
愛着障害との区別
3 母親の神話の真実
母親だけが愛着の対象か
愛着の質には連続性があるか
安定した愛着には「母の手」が一番か
母性愛の実態
4 安定した愛着を育てる
安定した愛着のイメージ
安定した愛着のために
特別にがんばらずに育てる
第3章 幼児の人間関係――子どもからの報告
1 人間関係とは
親しい人間関係を測る――三重の円の図版
複数の「重要な他者」
さまざまな種類の「重要な他者」
「心理的機能」の割り振り
2 人間関係の仕組み
愛情のネットワーク
3 幼児の「愛情のネットワーク」――子どもからの報告
子どもの声を聴く
幼児の人間関係の測定
重要だと挙げられた人々
ベストパートナー
愛情のネットワークの個人差
愛情のネットワークの類型
4 人間関係の個性
個体としての類型
「一匹狼型」の子ども
「ママハキライ」という子ども
母親型と友だち型
第4章 わたしが主人公――自己主張と自制心
1 自己とは
自己――私についての知識
自己のアイデンティティ――「私は私のもの」という意識
自己の働き――自己主張と自己制御
2 幼児期の自己の発達
自分の身体の発見
自尊心の兆し
記憶力と自己
言葉の役割
自己概念
3 自己の主張――反抗期
なぜ,反抗するのか
イヤイヤへの対応
親子の自己の衝突と調整
反抗しない子ども
4 自己の制御――自制心
マシュマロ・テスト
誘惑に負けない
自制心の発達
第5章 子どもと社会――「あなたの子どもは,あなたの子どもではありません」
1 日本の子育ての現状
肩の力を抜く
働く母親の葛藤
母親と父親の育児不安
2 子どもを養育する環境
養育環境の質への関心
家庭環境の質
保育施設の質
長時間保育の問題
3 子どもの人権
虐待される子ども
高い体罰の肯定率
体罰は人権の侵害
言葉による人権の軽視
4 市民としての子どもと親
日本の子どもの貧困
相対的剝奪についての合意
社会の子ども
「あなたの子どもは,あなたの子どもではありません」
おわりに
主要引用・参考文献