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岩波新書 新赤版1557

在宅介護

「自分で選ぶ」視点から

著:結城 康博

紙版

目次

序 章
 1.姑の介護のために離職した嫁
 長い介護生活/認知症と診断/鏡に映る他人/介護離職となる
 2.在宅介護は拡がるのか?
 在宅介護サービス/家族構成の変容
 3.目まぐるしく変わる制度
 複雑化する制度/根強い施設志向/介護士不足の深刻化
 4.本書の構成とねらい
 介護というリスク/在宅と施設は車の両輪/本書の構成/現場からの政策提言

第1章 在宅介護の実態
 1.在宅介護の困難さ
 独居の要介護高齢者/介護と夜間帯の仕事/老夫婦が看る/施設入所が担保
 2.二四時間型ヘルパーサービスの再構築
 定期巡回・随時対応サービスとは/ヘルパーは来るが?/厳しい経営状況/成功している事例
 3.サービス付高齢者住宅
 施設から住宅へ/施設との違い/入居費用/いつまで生活できるか?/選ぶ能力が問われる
 4.複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
 小規模多機能型居宅介護/馴染みの関係がメリット/看護サービスをプラス/伸びない事業数
 5.厚生労働省の政策ミス
 会計検査院の指摘/普遍的な仕組みに

第2章 家族介護の限界
 1.介護離職者一〇万人
 五〇代女性が辞めていく!/介護休暇は三か月/予期せぬ介護生活/九三日では足りない/介護休暇の延長を
 2.パラサイトシングル介護者
 家族介護と親の年金/面倒な息子や娘/高齢者虐待の危険
 3.施設は利用しづらい
 待機者問題/地域間格差
 4.グレーゾーンの介護サービス
 お泊り付デイサービスとは/劣悪なサービス/政府の対応/寝たきり専門の住宅型有料老人ホーム
 5.グレービジネスの惨劇
 在宅介護の限界/高齢者の地方移住/静養ホームたまゆらの悲劇/当事者に聞く/難しいケースばかり

第3章 認知症高齢者の急増
 1.認知症高齢者の徘徊
 徘徊が社会問題に/数年ぶりの再会/認知症の鉄道死裁判/戸惑う家族と現場
 2.急増する認知症高齢者
 認知症高齢者四六二万人以上/金銭管理が難しい/認知症高齢者が加害者に/受診を嫌がる/早期発見と早期治療
 3.家族形態と地域組織の変容
 独居高齢者と老夫婦世帯/消費者被害の視点から/成年後見制度/市民後見人
 4.オレンジプランとは
 認知症施策/地域で見守る期待と限界

第4章 在宅介護サービスの使い方
 1.介護保険における負担
 上昇する介護保険料/介護にいくらかかる?/ 「加算」という仕組み/介護報酬マイナス改定/障害者福祉との関係/障害者福祉制度とは
 2.在宅介護サービスを受けるには
 要介護認定の仕組み/調査の内容/妥当性・客観性を欠く認定結果/要介護認定制度の簡素化
 3.ケアマネジャーを決める
 ケアマネジャー次第!/退院するにあたって/書類整理に追われる/男性の介護
 4.在宅サービスのあれこれ
 在宅介護ヘルパーに聞く/生活援助サービスの短縮化/デイサービスとデイケア/ショートステイとは/地域住民しか使えないサービス/地域包括支援センターの役割
 5.利用しにくい介護保険サービス
 制約されるサービス/買い物難民/自費によるサービスの活用/ボランティアなどの活用
 6.質の悪いサービス対策
 悪い介護従事者/苦情相談窓口の活用

第5章 施設と在宅介護
 1.地域包括ケアシステムとは
 五つの要素/自助と互助/ 「互助」は減退
 2.施設あっての在宅介護
 施設と在宅の対立軸は危険/ショートステイの問題/施設と在宅の往復を/一体的経営をめざす/話題となった杉並区の選択
 3.他の施設系サービス
 埋没する施設/有料老人ホーム/施設選びのポイント
 4.東日本大震災からの教訓
 忘れられない東日本大震災/施設が福祉避難所へ/三年半後の被災地の介護現場/被災地以外の在宅介護/ガソリン不足が直撃/電力は要介護者の命綱

第6章 医療と介護は表裏一体
 1.在宅医療の現状
 介護は突然訪れる/在宅療養支援診療所/ 「地域包括ケア病棟」の誕生/救急搬送されても/療養病床のゆくえ
 2.看護と介護
 深刻な看護師不足/介護士による医療行為/薬剤の飲み忘れ/口腔ケアの意義
 3.老人保健施設とリハビリテーション
 老人保健施設は在宅までの中間施設?/在宅生活への復帰は厳しい/リハビリテーションの意義/住宅改修と福祉用具/介護用レンタルベッド/介護報酬のジレンマ/介護予防の促進/健康寿命と平均寿命
 4.在宅介護と看取り
 人はどこで最期を迎えたいか/看取りと介護の連続性/医療と介護の連携/供給不足は否めない/患者や家族の意識/理想と現実を考える/身寄りがいない人の支援
 5.医療と介護の考え方

第7章 介護士不足の問題
 1.介護士不足は深刻
 施設は完成しても/介護は雇用の調整弁か?/潜在介護士の存在
 2.介護士という資格
 介護職員初任者研修から介護福祉士まで/無資格でも施設では働ける
 3.介護士養成の難しさ
 魅力のある福祉系学部卒業生/将来を見据えて/失業した求職者の活用
 4.外国人介護士は切り札か
 EPA介護士の養成に携わって/ベトナムの労働市場を垣間見て/在日フィリピン人介護士
 5.介護人材不足に秘策はあるのか?
 六〇歳過ぎてヘルパー資格を取得/若いヘルパーには負けない技術/経営者のマネジメント/男性の高齢者介護士/離職率が低い事業所の共通項/賃金格差

第8章 介護保険制度が大きく改正された
 1.二度目の大改正
 法改正による影響/マイナス改定の余波/事業継続の難しさ/利用者を拒む
 2.要支援1・2の人はサービス利用が大きく変わる
  「総合事業」の誕生/ 「給付」と「事業」の違い/基準が緩和されたサービス/無駄なサービス利用
 3.「地域で支える」がキーワード
 孤独死の問題/見守り活動/サロン活動
 4.はじめての自己負担二割導入
 高齢者の約二割が該当/高額介護サービス費
 5.保険料の仕組み変更
 所得の再分配/後期高齢者医療制度との関連
 6.特別養護老人ホームの申込みは要介護度3から
 入所申込要件の変更/要介護度1・2で入所できる条件/助成制度(補足給付)の見直し
 7.介護予防が変わる
 一次予防と二次予防/統合された介護予防

最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか
 1.介護における格差
 多重介護/高齢者間の経済格差/介護保険が使えない/年金支給開始年齢
 2.産業としての介護
 混合介護とは/家政婦サービス/法の隙間を狙う/営利企業について/社会福祉法人の役割/コンサルタント業
 3.これからの政策と財源論の方向性
 社会保険と福祉制度/増え続ける保険料/公費負担の割合を五〇%以上に/資産を把握しての負担増/財政赤字と言いながら/ 「充実」を前提に
 4.あるべき日本の介護システム
 単純な仕組みに変革すべき/医療と介護の概念の違い/平成の大合併を軽視しない/介護福祉士と准看護師の資格統合
 5.介護は社会投資である
 福祉と公共事業の乗数効果/介護士による内需の牽引/ 「負担」でなく「社会投資」

主な参考文献
あとがき

ISBN:9784004315575
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:820円(本体)
発行年月日:2015年08月
発売日:2015年08月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS