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近世初期政治史研究

著:藤井 讓治

紙版

内容紹介

中世から近世への移行・転換をどのように描くか――本書は、この課題を政治史研究として引き受け、論じるものである。個別・多様な歴史事象の実証を通して、近年の趨勢である中世と近世の連続性を強調する議論に反証し、近世初期の特質や画期性を抽出する。近世史研究の第一人者の近年の成果を一冊にまとめる論文集。

目次

 はじめに

第一部|織田政権期

 第一章  信長の参内と政権構想
  はじめに
  一 天下人の参内
   1 義昭の参内
   2 秀吉・家康の参内
   3 信長と参内
  二 信長と天皇
  おわりに

 第二章  織田信長の撰銭令とその歴史的位置
  はじめに
  一 史料と研究史
   1 「撰銭条々」「精選条々」「精撰追加条々」
   2 研究史上の「撰銭条々」「精選条々」「精撰追加条々」
  二 信長撰銭令の解釈
   1「撰銭条々」と「精選条々」の解釈
   2 「撰銭条々」への市場の対応
   3 「精撰追加条々」の解釈
  三 信長の撰銭令発令公布の背景
  おわりに

 第三章  織豊期の近衛家をめぐって──前久・信尹の武家的性格
  はじめに
  一 前久・信尹の略歴
  二 前久の下国・在国
   1 越後・関東への下国
   2 永禄の出奔
   3 薩摩下向
   4 大坂下
   5 嵯峨・浜松への出奔
   6 奈良逼塞と越前・加賀行
  三 信尹の在国
   1 奈良への逼塞
   2 二度の肥前名護屋下向
   3 薩摩への配流
   4 江戸行き等
  おわりに

第二部|豊臣政権期

 第四章  「惣無事」はあれど「惣無事令」はなし
  はじめに
  一 藤木氏の「惣無事令」論の形成過程
  二 藤木氏の「惣無事令」その後
  三 一二月三日付秀吉直書の性格
  四 「惣無事」の個別性・時事性
   1 天正一一年の「惣無事」
   2 伊達・芦名間の「無事」と佐竹義重の「馳走」
   3 家康の上洛と「関東之儀」委任
   4 伊達・最上等の「惣無事」と家康の「噯」
   小括
  五 藤木氏の「惣無事令」に跛行・逸脱する政策
   1 天正一四年の真田処分
   2 新発田問題
   小括
  おわりに

 第五章  身分としての奉公人──その創出と消滅
  はじめに
  一 身分としての「奉公人」
  二 秀吉文書にみえる奉公人
  三 秀吉文書からみた各時期の「奉公人」
   1 第一期、本能寺の変以前
   2 第二期、本能寺の変から関白任官以前
   3 第三期、秀吉関白期
   4 第四期、秀次関白期
   5 第五期、秀次事件後
  四 豊臣期「奉公人」の歴史的位置
   1 奉公人理解の混乱
   2 奉公人と武士・兵
   3 無断の主人替え禁止
   4 奉公人の武器所持
   5 奉公人の居住地(村と町)と家
   6 奉公人需要と欠落
  五 「奉公人」身分の消滅

 第六章  秀次切腹をめぐって
  はじめに
  一 秀次切腹の情報伝達をめぐって
   1 『お湯殿の上の日記』文禄四年七月一六日条
   2 秀次切腹の報
   3 情報伝達の径路と所要時間
   4 伝達スピード
  二 秀次が元結を切り、高野山へ
   1 八日の秀次伏見行きまで
   2 八日の高野行き
  三 政権の意思判断の確定過程
   1 七月八日から一〇日まで
   2 矢部氏のいう「秀次高野住山」令
   3 使者福島らの派遣の日時とその役割
   4 禁裏への秀次銀子の進上
   5 「秀次切腹」後の上洛命令
  おわりに

 第七章  文禄四年の霊社上巻起請文をめぐって──秀吉死後の政権構想
  はじめに
  一 文禄四年の霊社上巻起請文
   1 起請文の形式・用紙・作成過程
   2 前書について
   3 神文について
   4 日付・署判者・宛名について
  二 文禄四年八月六日宗義智等連署起請文
  三 秀吉の煩い
  おわりに

 第八章  文禄四年「御掟」「御掟追加」
  はじめに
  一 「御掟」「御掟追加」のテキスト・クリティク
   1 三鬼氏の分類
   2 丙型御掟
   3 丙型御掟追加
   4 乙型御掟
   5 乙型御掟追加
   6 甲型御掟
  二 甲・乙・丙型「御掟」「御掟追加」の成立順
  三 「十人」「十人衆」の比定
  四 御掟・御掟追加の性格
  おわりに

第三部|徳川政権初期 

 第九章  徳川家康の叙位任官
  はじめに
  一 家康の叙位任官文書
  二 従五位下・三河守と左京大夫
  三 中納言任官以前の官位
  四 中納言任官
  五 従二位大納言
  六 左近衛大将・左馬寮御監
  七 正二位内大臣と従一位
  おわりに

 第一〇章  慶長五年の「小山評定」をめぐって
  はじめに
  一 本多隆成・白峰旬論争
  二 七月二九日付大関資増宛浅野幸長書状の読み
  三 第一・第二の決定の日時はいつか
  四 第一・第二の決定はどこでなされたのか
   1 白峰氏の家康宇都宮在陣説の検討
   2 七月二一日から八月五日までの家康の居所
  五 三成・大谷「楯鉾」、大坂三奉行「逆心」の報が届いた日時
  六 七月二九日大関資増宛浅野幸長書状の解釈
  七 浅野幸長書状の「各」は誰か
  おわりに

 第一一章  前久が手にした関ケ原情報
  はじめに
  一 前久書状の読み
  二 前久書状の内容と検討
  三 「青野カ原ニテノ合戦」をめぐって
  おわりに

 第一二章  近世貨幣論
  はじめに
  一 織田信長の撰銭令
  二 ビタ銭の成立と金銀
  三 関東銭通用圏の上方銭通用圏への統合
  四 江戸幕府初期の撰銭令
  五 寛永通宝の鋳造
  六 江戸前期の金銀銭
  七 元禄の金銀改鋳
  おわりに──元禄改鋳後の金銀貨

 あとがき
 索引

著者略歴

著:藤井 讓治
藤井讓治(フジイ ジョウジ)
1947年福井県生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学.博士(文学).京都大学文学部助手,神戸大学文学部助教授,京都大学人文科学研究所助教授,同大学文学部助教授,同教授,同大学院文学研究科教授を経て,現在京都大学名誉教授.
著書に『江戸幕府老中制形成過程の研究』(校倉書房),『江戸開幕』(集英社),『徳川家光(人物叢書)』(吉川弘文館),『江戸時代の官僚制』(青木書店),『幕藩領主の権力構造』(岩波書店),『徳川将軍家領知宛行制の研究』(思文閣出版),『天皇の歴史5 天皇と天下人』(講談社),『日本近世の歴史1 天下人の時代』(吉川弘文館),『近世史小論集古文書と共に』(思文閣出版),『シリーズ日本近世史1 戦国乱世から太平の世へ』(岩波新書),『徳川家康(人物叢書)』(吉川弘文館),『天下人秀吉の時代』(敬文舎),など,編著に『織豊期主要人物居所集成』(思文閣出版),『岩波講座日本歴史(全22 巻)』(岩波書店),など.

ISBN:9784000615686
出版社:岩波書店
判型:A5
ページ数:422ページ
定価:8900円(本体)
発行年月日:2022年11月
発売日:2022年11月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ