死者を巡る「想い」の歴史
著:山本 幸司
内容紹介
古代・中世を生きた人びとは、人の死をどのように受けとめ、死者をどのような想いで送ってきたのだろうか? 亡くなっても遠い彼岸に旅立たないで身近にいてほしい、夢でもいいから時には語りかけてほしい。多くの人びとは、そうした想いでいたのではないか? 死と死者を巡る日本人の「想い」を、和歌・物語などを手がかりに探る。
目次
はじめに
第一章 死者を送る、死者を悼む
一 家族・親族との死別
1 妻・夫との別れ
2 親を送る
3 子に先立たれ
4 兄弟を送る
二 家族・親族以外の別れ
1 友人・知人を送る
2 名も知らぬ人を送る
第二章 遺された側の想い
一 慰め合う人々
1 慰めの歌を贈る
2 弔問の頃合い
二 遺された身の孤独
1 連れ合いに先立たれ
2 友に後れる
3 遠方で接する死
4 重なる不幸
三 厳しい現実
1 切れる絆
2 処世の姿
3 流れへの反発
4 悲喜交々
5 供養の負担
四 死後の供養
1 服喪と喪明け
2 年忌
3 墓参り
【コラム】記紀万葉の他界観1 政治神話と天上他界
第三章 死者の世界へ
一 死に行く者の思い
1 『万葉集』の例
2 八代集以降
3 死者の詠んだ歌
二 死への諦念
1 夢と現
2 無常の世
三 死後の道程
1 死者の行く道
2 三途の川
3 死出の山
【コラム】記紀万葉の他界観2 黄泉国と山
第四章 なお残る死者への想い
一 蘇る思い出
1 幼い子
2 形見の品
3 主なき家
4 花に触れて
5 鳥の声・虫の音
二 夢に託す想い
1 夢の中での再会
2 夢の悲しさ
三 死者は身近に
1 再会を念じて
2 死者の還る日
【コラム】記紀万葉の他界観3 鳥と天翔る
第五章 死者とその霊魂
一 死者の霊魂と肉体
1 あこがれ出る魂
2 死者の霊魂
二 説話や物語に見る死者の霊魂
三 死者の霊魂に対する二つの見方
四 浄土や極楽を信じるか
五 「あの世」とは
補章 能楽――負の他界の死者
一 穏やかな死者の霊
二 死者の前生における社会的属性
三 死者の成仏を妨げる要因
1 合戦という修羅道
2 殺生の業
3 男女の妄執
4 親子の恩愛
5 晴らしがたい怨念
6 やり残したことへの執着
四 導師としてのワキ
五 救済劇としての能楽
文献一覧
あとがき
引用史料略年表