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人間と宗教あるいは日本人の心の基軸

著:寺島 実郎

紙版

内容紹介

極端なまでに政治権力と一体化した国家神道の時代への反動から、物質的繁栄を最優先し、「宗教なき社会」を築いた戦後日本。しかし二〇世紀型の工業生産力モデルは力を失い、コロナ禍の下、日本の埋没は顕著だ。「日本人の精神性とは何か」、イラン革命の衝撃、現代のバベルの塔たる米国、世界を歩いてきた経済人がいま問い返す。

目次

はじめに——三つのプロローグ
 1 ゴルゴダの丘への道——世界を変えた男の死について
 2 高野山・奥の院への道——そして本居宣長の鈴屋での黙考
 3 バベルの塔とニューヨーク摩天楼——そして日本近代史への想い

Ⅰ 人類史における宗教——ビッグ・ヒストリーの誘い
 ビッグ・ヒストリーにおける人類史
 グローバル・ヒストリーへの入口を探って
 アイスマンの衝撃
 人類史における宗教の淵源
 世界宗教の誕生とその同時性

Ⅱ 世界化する一神教——現代を規定する宗教
 キリスト教の世界化とローマ帝国——欧州史の深層底流
 キリスト教の東方展開の基点としてのビザンツ帝国
 中東一神教の近親憎悪イスラム教 vs.キリスト教、ユダヤ教
 イスラムの世界化とアジア、そして日本

Ⅲ 仏教の原点と日本仏教の創造性
 仏教の原点と世界化への基点
 仏教伝来の道 漢字になった経典の意味
 仏教の日本伝来とは何か
 親鸞によるパラダイム転換——その仏教史的な意味
 日蓮——日本の柱たらんとする意識の意味

Ⅳ キリスト教の伝来と日本——日本人の精神性にとっての意味
 宗教改革が突き動かしたもの——西洋史理解に不可欠の視界
 キリスト教の伝来と禁制
 織田信長時代におけるキリスト教と仏教の邂逅
 それからのキリシタン——江戸期の苦闘とその闇の中での光
 内村鑑三 キリストに生きた武士——明治期の知性
 「われ太平洋の橋とならん」——憂国の国際人、新渡戸稲造

Ⅴ 神仏習合——日本宗教史の避けがたいテーマ
 江戸期の仏教への再考察——日本人が身につけたもの
 日本と天皇の始まり——天武・持統期の革命性
 中世における神道の形成——神道の本質を考える
 天皇と仏教——泉涌寺を訪れ、理解を深める

Ⅵ 江戸から明治へ——近代化と日本人の精神性
 新井白石と荻生徂徠——時代と正対した二人の儒学者
 本居宣長とやまとごころ
 明治近代化と日本人の精神
 明治維新とは何だったのか——埋め込まれた国家神道
 国家神道による天皇親政という呪縛——埋め込まれた密教が噴出した昭和期

Ⅶ 現代日本人の心の所在地——戦後日本を問い直す
 戦後日本——希薄な宗教性がもたらすもの
 鈴木大拙が戦後日本人に語りかけたもの——禅の精神と「世界人としての日本人」
 司馬遼太郎を必要とした戦後日本
 国家神道への視界——萌芽と展開、そして残影
 戦後日本人としての宗教再考——問われる新たなレジリエンス

おわりに——一つのエピローグ 比叡山の星空を見上げて

著者略歴

著:寺島 実郎
寺島実郎(てらしま じつろう)
1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。米国三井物産ワシントン事務所所長、三井物産常務執行役員、三井物産戦略研究所会長等を経て、現在は(一財)日本総合研究所会長、多摩大学学長、(一社)寺島文庫代表理事。国土交通省・国土審議会計画部会委員、経済産業省・資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員等を務める。
著書に『脳力のレッスンI~V』『日本再生の基軸』『シルバー・デモクラシー』(岩波書店)、『中東・エネルギー・地政学』(東洋経済新報社)、『世界を知る力』(PHP新書)他。

ISBN:9784000615051
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:296ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRAX